深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.434

週末だけ風俗で働く彼女が手に入れたものは何? 震災風俗嬢の日常『彼女の人生は間違いじゃない』

週末だけ風俗で働く彼女が手に入れたものは何? 震災風俗嬢の日常『彼女の人生は間違いじゃない』の画像1被災地の景観を撮り続けるカメラマン役の蓮佛美沙子。サバイバーズギルトを題材にした『RIVER』(12)に続いての廣木隆一作品となる。

 福島の仮設住宅で暮らしているみゆきには、本名とは別にもうひとつの名前がある。普段のみゆきは地元の市役所に勤めているが、週末は深夜バスに乗って上京し、YUKIという名のデリヘル嬢として働いている。震災以降、仮設住宅に父親と2人で暮らしているみゆきにとって、YUKIとして東京で過ごす時間はかけがえのないものとなっていた。今週末もまた、みゆきは高速バスに揺られて東京へ向かい、見知らぬ男たちを相手に性サービスに従事する。『ヴァイブレータ』(03)、『さよなら歌舞伎町』(15)など官能映画の名手として知られる廣木隆一監督のオリジナル作『彼女の人生は間違いじゃない』は、廣木監督の故郷・福島を舞台にした社会派官能ドラマとなっている。

 近年は有村架純主演『ストロボ・エッジ』(15)や二階堂ふみ主演『おおかみ少女と黒王子』(16)など少女コミック原作の、いわゆるキラキラ映画のオファーが続いていた廣木監督だが、本作の主人公であるみゆき(瀧内公美)はキラキラと輝くことができない女性だ。そんな彼女の日常生活を、廣木監督はカメラで丹念に追っていく。みゆきは震災で母親を失い、当時交際していた恋人の山本(篠原篤)との関係もぎくしゃくして別れてしまった。農業を再開するめどが立たず、父親の修(光石研)はパチンコに通う日々が続いている。みゆきは市役所に勤め、補償金も振り込まれるため、生活費には困っていない。でも、みゆきは今の生活が息苦しくて堪らない。じゃあ、震災前の生活は満たされたものだったのか? 震災後いろいろありすぎて、もはやそれもわからない。高速バスを降りたみゆきは駅のトイレでメイクを整え、YUKIへとスイッチを切り替える。そしてホテルで待つ男性客の求めに応じて、女子高生風の制服やセクシーな下着に着替え、男たちの欲望の海へと身を投げ出す。

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