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きっかけは親権を争う元妻の「ウソ通報」!

スウェーデン「非実在青少年」裁判の当事者を直撃 過剰な表現規制が生み出す冤罪の構図とは

swd_kisei.jpg『非実在青少年〈規制反対〉読本』
(サイゾー)

 漫画は児童ポルノに該当するのか――。スウェーデンの最高裁判所で、日本のエロ漫画を所持し逮捕された男性の裁判が5月16日から始まった。この事件、問題は単に漫画が児童ポルノに該当するのかどうかということだけではない。日本でも導入を求める声がある「児童ポルノ」所持の禁止がもたらす冤罪の可能性が現実になったものといえる。現在、裁判を争う当事者の男性を取材した。

 この男性は日本漫画の翻訳者で、スウェーデンでも指折りの漫画専門家として知られるシーモン・ルンドストローム氏だ。事の発端は2009年の10月12日。その日、帰宅したルンドストローム氏は、自宅の前に2台のパトカーが停まっているのを見て驚いた。慌てて家に入ってみると、自宅は家宅捜索の真っ最中。彼の自宅に警察が踏み込んだ原因は、元妻からの通報だった。当時、彼は離婚した元妻と親権をめぐって争っていたのだが、元妻は裁判を有利に運ぶために「彼はペドフィリア(小児性愛者)である」と警察に通報したのだ。

 そのまま彼は「児童ポルノ」を所持していた容疑者として逮捕されてしまったのだが、直接の逮捕容疑となったのは、彼がパソコンに保存していた300枚あまりのエロ漫画のダウンロード画像だった。警察は、保存されていた画像に描かれた女性キャラクターの胸の大きさに着目。胸の小さな女性キャラクターを「児童」であると判断し、51枚を「児童ポルノ」としたのである。

 間もなく始まった裁判でも、裁判所は警察の判断を支持。「(問題とされた絵には)被写体が存在した可能性がある」とも指摘し、2010年6月に罰金2万5,000クローナ(約28万円)の有罪判決を下した。

 同国では、日本の漫画市場は極めて小さい。そんな国でもっとも驚かれたのは「イラストが法規制の対象とされたこと」だ。スウェーデンの公共テレビ局「スウェーデンテレビ」では特集が組まれ、法学者を巻き込んでの議論が盛り上がった。

 判決を不服として控訴したルンドストローム氏だが、二審では「児童ポルノ」に該当するとされた画像の数は減ったものの判決は覆らず、2011年11月に5,600クローナ(約6万3,000円)の罰金を科す判決が下された。

 罰金の額が減った理由は、スウェーデンの法律によるものだ。同国では、罰金が年収に応じて変化するシステムで、<年収の1,000分の1×裁判所が命じる数値=罰金額>というもの。つまり、年収が激減したので罰金の額も減ったのだという。

 そもそも、スウェーデンではスキャンレーションの蔓延もあり、商業ベースでの日本の漫画翻訳の需要が激減していたのが、ルンドストローム氏の年収が減った理由だった。ところが、二審判決の後には、有罪を理由に仕事がなくなってしまったという。

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