日刊サイゾー トップ > 連載・コラム > パンドラ映画館  > 現代社会の縮図が走るゾンビ特急
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.441

自分ファースト、利益至上主義、弱者切り捨て! 現代社会の縮図が走るゾンビ超特急『新感染』

自分ファースト、利益至上主義、弱者切り捨て! 現代社会の縮図が走るゾンビ超特急『新感染』の画像1興奮と感動がパンデミックする『新感染 ファイナル・エクスプレス』。ゾンビの群れから愛する人を守り抜けるか?

 映画には深読みする楽しみがある。観客は自分が観た映画を好きなように解釈する自由が認められている。時には監督が意図した以上の“神解釈”が発見されることもある。今年7月16日に亡くなったジョージ・A・ロメロ監督のブレイク作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(68)は、その代表例だろう。墓場から甦ったゾンビが増殖しながら人間を襲うこの低予算ホラー映画を、観客たちは泥沼化していくベトナム戦争、核兵器への恐怖、激化する公民権運動といった1960年代の米国の世相と重ね合わせて楽しんだ。そのことに気づいたロメロ監督は、さらに社会批評性を高めた『ゾンビ』(78)を大ヒットさせる。いろんな深読みができるゾンビ映画というジャンルをロメロ監督が開発したお陰で、ゾンビたちはその時代、その国によって異なる様々なメタファーとして広まっていった。そして、その最新モデルとなるのが韓国で1,100万人以上を動員したメガヒット作『新感染 ファイナル・エクスプレス』(英題『Train to Busan』)である。

『新感染』の舞台となるのは、韓国の首都ソウルから湾岸都市プサンまでを2時間40分で繋ぐ高速鉄道KTX(Korea Train eXpress)。時速300kmの猛スピードで走るKTXの車両の中に1人のゾンビウィルス感染者が紛れ込んだことから、列車内はノンストップで阿鼻叫喚地獄へと化していく。怖いのはゾンビウィルスだけではない。自分さえ生き残れればいいという利己主義が列車内にはびこり、ゾンビ以上に人間が恐ろしいことを生存者たちは思い知る。

自分ファースト、利益至上主義、弱者切り捨て! 現代社会の縮図が走るゾンビ超特急『新感染』の画像2列車内の第一感染者を演じたのは『サニー 永遠の仲間たち』『怪しい彼女』の主演女優シム・ウンギョン。ゾンビなりきり演技がすごい!

 本作の主人公を演じたコン・ユは、障害児への性的虐待事件を題材にした実録サスペンス『トガニ 幼き瞳の告発』(11)の善良な美術教師役で人気を博した二枚目男優。本作では常に自社の収益だけを考えているファンドマネージャーのソグという役どころ。高級スーツを着て、颯爽としているソグだが、仕事人間のソグを嫌う妻とは離婚調停中だった。そんなソグにとって、ひとり娘のスアン(キム・スアン)だけが大事な存在。父親らしいことができずにいる罪ほろぼしとして、プサンで離れて暮らす妻のもとにスアンを連れていくことに。朝一番のKTXに乗るソグとスアン親子。列車内でスアンがお年寄りに座る場所を譲ろうとすると、「そんなことしなくていい。自分のことだけ考えろ」と説教するほどソグは度量が狭い。そんな親子が遭遇することになるのが、列車内で起きたゾンビパニック。後方車両から津波のように押し寄せてくるゾンビの大群から、ソグは愛娘スアンを、ヤクザ風の中年男サンファ(マ・ドンソク)は妊娠中の妻ソンギョン(チョン・ユミ)を、身を呈して守ることになる。

 本作を撮ったヨン・サンホ監督はアニメーション監督としてこれまでキャリアを積み、今回が実写映画デビュー作となる。もともとは長編アニメ『ソウル・ステーション/パンデミック』(日本では9月30日公開)のスピンオフ企画として本作を撮ったわけだが、初めての実写映画ながら生身の俳優たちからエモーショナルな演技を巧みに引き出し、列車内&駅構内限定のゾンビパニックものにすることでサスペンス要素を盛り上げつつ、予算が膨れ上がることを防いでいる。相当にクレバーな監督だ。

 ゾンビ映画はもうパターンが出尽くしたでしょという人でも、最高にアドレナリンがたぎる超破天荒シーンが中盤で待っている。テジョン駅で一度下車して、韓国軍の救援を待っていたソグやサンファたちだったが、すでにテジョン駅はゾンビだらけ。屋根からもゾンビが降ってくる。命からがら運行を再開したKTXに飛び乗ったソグたちだが、その途中で娘や嫁とはぐれてしまった。別車両のトイレの中に逃げ込んだ娘と嫁を救出するために、犬猿の仲だったソグとサンファは協力して、ゾンビぎっしり状態のゾンビ車両を突っ切ることに。一度でもゾンビに噛まれれば、ウィルスに即感染してしまう。それまで損得勘定でしか動かなかったソグだが、先頭で体を張るサンファを懸命にアシストするしかない。娘や妻への絶対愛が、男たちをこの絶対不可能なミッションへと向かわせる。血湧き肉躍る大バトル&ロマンスシーンの誕生だ。


12
こんな記事も読まれています

自分ファースト、利益至上主義、弱者切り捨て! 現代社会の縮図が走るゾンビ超特急『新感染』のページです。日刊サイゾー芸能最新情報のほか、ジャニーズ/AKB48/アイドル/タレント/お笑い芸人のゴシップや芸能界の裏話・噂をお届けします。その他スポーツニュース、サブカルチャーネタ、連載コラムドラマレビューインタビュー中韓など社会系の話題も充実。芸能人のニュースまとめなら日刊サイゾーへ!

ページ上部へ戻る

絶対的満足度の至宝店

すべて見る

人気連載すべて見る

元木昌彦の『週刊誌スクープ大賞』

「週刊現代」「FRIDAY」の編集長を歴任した"伝説の編集者"元木昌彦による週刊誌レビュー

“元アウトローのカリスマ”瓜田純士、かく語りき

“元アウトローのカリスマ”瓜田純士の最新情報をお届け! 嫁・麗子も時々登場。

トンデモ海外ニュース

世界中のびっくり珍事件をお届け。世界はやっぱり広かった!

深読みCINEMAコラム『パンドラ映画館』

最新作・話題作から珠玉の掘り出しモノまで、毎週1本必観の映画作品を徹底レビュー

じゃまおくんのWEB漫クエスト

マンガレビューブログ管理人じゃまおくんが、インターネットに埋もれる一押しマンガを発掘!

イチオシ企画

【日刊サイゾー/月刊サイゾー】編集・ライター募集のお知らせ

現在「日刊サイゾー/月刊サイゾー」 編集部のスタッフを募集しております。
写真
特集

沢尻エリカ、薬物逮捕の余波

大河ドラマ、CM降板で損害賠償は芸能界史上最大に!?
写真
人気連載

前澤氏は脅迫トラブルを説明すべき

今週の注目記事・第1位「剛力彩芽破局の裏で前澤...…
写真
インタビュー

25歳素人童貞の果てなき風俗愛

映画には深読みする楽しみがある。観客は自分が観た映画を好きなように解釈する自由が認められ...
写真