新作『女装千年王国』も大好評! 西田一が語る、ただひとつの“愛の物語”
#アダルト #ゲーム

同世代の中では、尖った音楽の趣味を語り合っていた男女。それが「中二病特有のシンパシー」だったのだと、西田が思ったのは大学に入学してからだった。その青春の失敗の原因はなんだったのか。こうした時に、たいていの人は、こんな答えを導き出すはずだ。自分の恋愛スキルが低かったのだ、と。
そして、次へ次へと、新たな女性との出会いを求めていく。でも、西田はそうではなかったのだ。その苦い経験の先に「なぜ、自分は女性を愛そうとしたのか」を考え続けた。中学生の頃に、当時はまだ「ショタ」でひとくくりにされていた、男の娘趣味に目覚めた。それなのに、なぜ当たり前のように女性との恋愛や、その先のセックスを求めようとしてしまったのか。
「……そういう経験が、一緒になって、作品の世界観が構築されていると思っているんです」
そういって、西田は眼鏡を外して、煙草に火をつけた。塗り直したばかりのブルーの壁に、波打つ白い煙。その煙を眺めながら、改めて『女装山脈』に始まる、西田の作品のことを思い出した。『女装山脈』が発売されたのは2011年。
すでにジャンルとしては、そこそこメジャーになったとはいえ、まだニッチな雰囲気は拭えなかった。マンガの単行本やアンソロジーは増えていた。けれども、アダルトゲームで男の娘ジャンルの作品を購入して、プレイすることには、まだ多くの人が「俺は、変態になってしまうのではないか」という抵抗を持っているように思えた。
それが、今はどうだろう。男の娘との恋愛を描くことは当たり前になり、妊娠すらするようになった。そうなのだ。もはや、西田の作品において、ヒロインが男の娘であるとか、妊娠するとかは、きっかけに過ぎない。いうなれば、幼なじみとか妹とかと同じ。誰もが当たり前に持っている属性の好みにまでハードルを下げてきた。どうしても、男の娘ではないと興奮できない。男の娘が妊娠する作品でないと射精もできない。そんな人は少数派だろう。
多くは「男の娘なのだから、おちんちんから射精するのは当然のことだ」と考え、愛の結果としての妊娠を自然に受け入れている。西田の志向に基づいて描かれるのは男の娘ということにはなっている。
けれども、実際に描かれているヒロインは、性別を超越した存在。それも、単なるキャラクターでもない、西田の考える理想の愛を、絵を用いて人間のような形に具現化したものではないのか。
「まだ、理想の相手を求めているのですか? 自分が人生を懸けて愛したい人を?」
「……」
西田は、何も答えなかった。
午前2時を回った頃、ホテルに戻るという西田を見送って、私も家路に就いた。夕方から降り始めた雨は、ますます強くなっていた。「ルポライターは傘など欲しがらないものだ」と心に決めている私も、信念を曲げたくなるような、どしゃぶりだった。
帽子から垂れる水滴を拭いながら、路地を抜けて通りへと急いだ。客待ちをしていたタクシーに飛び乗って、自宅近くのいつも目印にしている交差点の名前を告げた。週末の深夜。どしゃぶりの雨。通りは混んでいて。タクシーも思うように進まなかった。
「早く、早く、家に帰ろう」
私は心の中で、何度も呟いた。早く帰って、濡れた服をハンガーにかけてから、ノートパソコンのスイッチを入れよう。そこにはもう『女装千年王国』が、入国を今か今かと待っている。
早く、一刻も早く入国しよう。きっと今なら、作品の中に見えるはずだ。西田が求める、理想的な愛とは何かという答えが。だから、一刻も早く帰らなくてはいけない……。
タクシーは遅々として進まなかった。
(文=昼間たかし)
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