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男の娘の妊娠は、始まりにすぎなかったのか……?

新作『女装千年王国』も大好評! 西田一が語る、ただひとつの“愛の物語”

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 当初の予定より、1カ月遅れた発売日。私もすぐにダウンロード版を購入し、インストールを終わらせた。けれども、さまざまな原稿と、それに付随した読書に忙殺されて、なかなか「入国」することはできなかった。

 Twitterをみると、次々と「入国」を果たし、愛を育んだ人々が幸せそうなツイートを紡いでいた。

 どのヒロインと愛を育めばいいのだろう。メインヒロインである姫騎士か。それとも、翻弄してくれそうなサキュバスか。いやいや、アダルトにおいては定番ながら、禁忌を犯す感じが一段と強い聖女なのか……。そんなことを考えながら、入国を前に足踏みしていたら、西田から連絡が来たのである。

 別件の用をどうにか切り上げた私は、どしゃぶりの雨の中を、待ち合わせ場所のバーへと急いだ。狭い路地、傘を差した酔客の間をすり抜けた先に、目当ての店はあった。扉を開けて、狭い階段を昇る。壁がブルー一色に塗られた薄暗いカウンターだけの店内。その一番奥で、すでに少し酔っているのか、西田は壁にもたれかかるように座っていた。

 再会の挨拶の後、ザ・フーが流れる中で、あれこれと言葉を交わした。酒の上でのことである。たいした話ではない。作品の売れ行き。最近の注目している男の娘作品。TSFには、何か感じるものはあるか……。

 この夜は、そんな他愛もない会話で終わるのかと思っていた。

 だが、しばらくしてから、ふと、西田がつぶやくような声でいった。

「ボクの理想とする男の娘は、理想の中にしかいないんです」

「理想の中に?」

 私が問いかけると、西田は少し考えてから、言葉を続けた。

「いや、現実にも一人だけ……。大島薫さんが出てきた時だけは違いました……」

 そして、西田はグラスの三分の一ほどになった酒を飲み干した。しばらく沈黙が続いた。次にどんな問いかけをすればいいのだろう。少し迷って、私が言葉を口にしようとした。それよりも一瞬早く、近くに座ってた女性がカルーアミルクを注文する声がした。

「ボクもカルーアミルクをください」

 私が次に紡ぐ言葉に迷っているのを察したのだろうか。西田は、またつぶやくような声でいった。

「ボクも大島薫さんみたいな女の子になって犯されたい。それが、原点にはあるんです」

 それから、また他愛もない話が続いた。けれども、その合間に私は自分の興味の赴くままに質問を投げかけた。こうしたテーマを取材する時に、必ず聞かなくてはいけないこと。その人が情熱を傾けるジャンルに、どのようにして出会い、夢を育んでいったかということである。

 * * *

 ブランド・脳内彼女で『女装山脈』から始まる3つの作品を世に問うた後、西田は独立し、自らのブランド「の~すとらいく」の看板を掲げた。現在の「の~すとらいく」は商業流通で作品をリリースさせている同人サークル。いわば、個人事業主として、男の娘というジャンルに絞って作品を作り続けている。

 普段は神戸の湾岸にある自宅で、一人シナリオを書き、ディレクションを行っている西田。たとえ、男の娘が支持を集めるジャンルとはいえ、そこに人生を捧げるには、どれだけの覚悟がいるのだろうか。昨年取材をしてからも、興味は尽きることがなかった。

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