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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 『アシガール』黒島結菜の存在感
ドラマ評論家・成馬零一の「女優の花道」

良質なNHKジュブナイル『アシガール』を輝かせる女優・黒島結菜の存在感

NHKドラマ『アシガール』番組公式サイトより

 若者向けに作られたジュブナイルドラマが好きだ。

 若手俳優を中心としたジュブナイルドラマには、コメディタッチのラブコメや、SFやファンタジーのような荒唐無稽なシチュエーションの作品が多い。大人の視聴者からはチープな作品だと低く見られがちだが、だからこそ描ける初々しい物語がそこにはあり、初恋の思い出のような甘酸っぱい気持ちを思い出させてくれる。

 近年はテレビの視聴者自体が高齢化していることもあってか、10代向け作品はなかなか作られなくなっているが、現在、NHK総合で土曜日の夜6時5分から放送されている『アシガール』は、久々にジュブナイル感のある甘酸っぱいドラマである。脚本は2000年に傑作ジュブナイルドラマ『六番目の小夜子』(NHK総合)を執筆した宮村優子。

『ごくせん』(集英社)などで知られる森本梢子の少女漫画を原作とする本作は、戦国時代にタイムスリップした女子高生・速川唯(黒島結菜)がイケメンの若君・羽木九八郎忠清(健太郎)に一目惚れして、若君のために孤軍奮闘するというという物語。

 引きこもりの弟が作ったタイムマシーンで戦国時代に向かうというシチュエーションこそコミカルで、一見すると若者向けのチープなラブコメに見えるものの、戦国時代の合戦の描写やタイムトラベルを用いたSF的な設定の見せ方などは、実に丁寧に作り込まれている。

 特に戦国時代の美術背景はしっかりしていて、そこは流石、NHKである。

 何より、戦国時代を舞台である以上、戦で人が死ぬという残酷な現実から目をそらしていないのが素晴らしい。

 第6話では、唯が大ケガをした若君を現代にタイムスリップさせることで治療をして、弟と若君が現代の生活を満喫して親睦を深めるという、ほっこりする場面も描かれた。

 コミカルなところはコミカルだが、シリアスなところはしっかり押さえてある。こういうドラマこそ10代の若い視聴者に見て欲しいと思える作品だ。

 何より、本作の魅力を何倍にも輝かせているのが、主演の黒島結菜の圧倒的な存在感だろう。

 本作で黒島が演じる唯は、陸上部に所属する体育会系の女子高生で、日焼けしていて、前髪を下ろしていることもあってか、見た目は少年のようだ。

 タイムスリップしてからも、女子と気づかれずに足軽たちの中に紛れ込み、劇中では唯之助という男性に扮して、若君に近づき健気に支えようとする。

 戦国時代の荒野を歩く場面から始まるので、顔は泥だらけなのだが、こういう汚い格好が黒島にはよく似合う。

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