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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.455

エクソシストと現代人のメンヘルとの関係性は? ドキュメンタリー映画『悪魔祓い、聖なる儀式』

 厳粛な儀式中に一部の参列者がトランス状態に陥ったようにも映るし、動物のように唸りながら床を転がる姿は本当に何かが取り憑いているようにも思える。フェデリカ監督はこういった衝撃映像にナレーションやテロップで説明を加えることなく、ただカメラの前で起きている現象をそのまま観客に伝えるようとする。どう受け取るかは我々の判断に委ねられる。

 カタルド神父は忙しい。集団での悪魔祓いでは足りない人には個別での悪魔祓いを行ない、悪魔憑きと思われる人に手をかざし、聖水を振りまく。教会を訪ねることができない人のために携帯電話での悪魔祓いにも応じている。「彼女から出ていけ、サタン!」と携帯電話に向かって叫び、アーメンと祈りの言葉を捧げる神父。ヴァチカンでは集団での儀式や電話での悪魔祓いは認めていないが、ヴァチカンの偉い人からの回答をのんびり待っていては、教会に救いを求める人たちの切羽詰まった悩みに到底応えることができない。

 悪魔祓いを求める参列者たちの動向もカメラは追っていく。集団儀式の際に床を這っていたパンクファッションの若者は自宅マンションに戻るが、過去にもいろんなトラブルがあったらしく、母親は息子が自宅マンションに入ることを許さない。この若者は居場所がなく、夜の街をさまよい、その結果ドラッグに手を出すことになる。これでは、それこそ悪魔の思うつぼではないか。途中退席した金髪の女性も深刻な状況だった。いくつもの教会を訪ねては儀式に度々参加しているが、症状の回復は一進一退。それ以前には病院でも診てもらい、心療内科に通ったり、脳検査も受けているが、体調が悪化するはっきりした原因は分からないままで、医者からは匙を投げ出されていた。家族からも医学からも見放された彼らにとっての、最後のセーフティネットがエクソシストであるカタルド神父だったのだ。

 

週に一度のペースで開かれる集団での悪魔払いの儀式。床に昏倒した状態の参列者もいる。

 悪魔祓いを執り行う際には、取り憑かれたと訴えている人が他の病気、特に心理的な病を抱えていないかどうかを見極めることが重要となってくる。明らかに精神病を患っている場合は、向精神薬を用いて医学の力で治療すべきというのが今のカトリック教会の方針だ。時代と共に、宗教の在り方もずいぶんと変わりつつある。悪魔払いの儀式を実際に取材した経験のあるノンフィクション作家・島村菜津の『エクソシスト急募』(メディアファクトリー新書)を読むと、イタリアでエクソシストの需要が急増している社会背景として、精神病院が廃止されていることが挙げられている。非人道的だという理由から、患者を一般社会から隔離する旧来の精神病棟はイタリアではほとんど無くなっているそうだ。また、精神科に通うことでクスリ漬けになってしまうことを嫌い、教会に救いを求める人たちも多い。信仰、家族および生活環境、メンタルヘルスの問題を分離して考えることは難しい。

 カタルド神父は悪魔祓いの儀式のみならず、参列者たちの「夫が職場で浮気しているんじゃないかと心配」「仕事相手がなかなか代金を支払ってくれない」といった日常生活での不平不満にも耳を傾け、ひとりずつ助言を与えてなくてはならない。信者たちに慕われ、祈りの言葉のひとつひとつにありがたみが感じられるカタルド神父は身も心も休まる暇がない。

 カメラは最後に、アンソニー・ホプキンス主演作『ザ・ライト エクソシストの真実』(11)にも登場したヴァチカンにあるレジーナ・アポストロルム大学で行なわれているエクソシスト養成講座の様子を伝える。年に1度開かれるこの講座には、欧州だけでなく、米国からアジアまで世界各地からエクソシストとしての公認資格を得るために神父たちが熱心に集まっている。社会不安に加え、様々なストレスを抱え、心の闇に苦しみ続ける現代人は、悪魔の目には格好の獲物に映ることだろう。そんな現代人たちを悪魔の手から救うため、より多くのエクソシストたちが必要とされている。
(文=長野辰次)

『悪魔祓い、聖なる儀式』

監督/フェデリカ・ディ・ジャコモ
配給/セテラ・インターナショナル
11月18日より渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開中
C)MIR Cinematografica – Opera Films 2016
http://www.cetera.co.jp/liberami

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最終更新:2017/11/24 22:30
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