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「マンガの人たち」の信用は地に堕ちている──青少年健全育成基本法案の本当の問題点

■誰にも信用されないオタクたち

 

 10年。「非実在青少年」というインパクトのある言葉が投じられた東京都の「青少年健全育成条例」の改定をめぐる問題は、世論を動かして巨大な運動となった。あの時、一度は改定を断念するまで追い込んだ運動の始まりは「表現の自由」の視点から、危機を抱いたわずかなオタクの人々であった。それから、8年あまりが経ち、オタクが政治の世界でも重きを置かれる勢力であると考える者も多い。とりわけ16年の参院選で「オタクの味方」として出馬した山田太郎が、落選したとはいえ、29万票を超える票を得たことのインパクトは大きかった。

 けれども、もはや「非実在青少年」の騒動の時のようなオタクの社会運動は成立し得ない。ターニングポイントは、14年の「児童ポルノ法」改定をめぐる問題にあった。1999年の成立以来「児童ポルノ法」は、幾度も論争の火種になってきた。主要な問題点は2つ。単純所持、つまり児童ポルノを所持することそのものに罰則を与えるか否か。そして、マンガやアニメなど創作物を含めるか否かである。

 14年まで「表現の自由」に興味を惹かれるオタクにとって「児童ポルノ法」は主要な問題であった。そこでは、マンガやアニメを禁止される児童ポルノに含めることへの反対と共に、冤罪や権力の暴走を生みかねない単純所持への反対も唱えられていた。けれども14年、国会での改定に向けた議論の中で創作物は除外されることが確実になると、空気は変わった。マンガやアニメが規制されないという安堵の声に、単純所持の禁止が決められたことへの危惧は打ち消されていった。

 この時期、言論/表現の自由の立場から、運動を続けていた出版関係者からは、幾度も呆れた感想を聞かされた。

「マンガの人は、さあ……」

 それまで、戦列を共にしながら自分たちの間近に迫った危険が回避されると、途端にフェードアウトしたオタクたちの姿は、いまだに記憶されている。

 

■守りたい「表現」は、何か

 

 それから、すでに5年あまりが過ぎているが、オタクの信用は地に堕ちたままだ。口には出さないまでも、事情に通じた人は腹の中で嘲笑っている。

 それも当たり前のことだろう。

 今、「表現の自由」に関心を持つオタクたちにとって、社会運動に参加する手段といえば、選挙。投票し、味方になってくれそうな候補者の事務所を手伝うことに重きが置かれている。そして、オタクであることを自称したり、マンガやアニメに理解があるような台詞を吐く政治家に向けては、無批判に賛美が繰り返される。

「私、オタクでぇす」
「うひょひょ~こちら側の人間だ~」
「応援するぅ!」
「投票しゅる!」

 いや、どこの誰ともわからない、他人の批判をしている場合ではない。

 2007年、私は永山薫との共著で『2007-2008 マンガ論争勃発』(マイクロマガジン社)を書いた。この時に、テーマにしたのは、とりあえずさまざまな立場の人の話を聞くことであった。この手法も、今となっては、極めて未熟で幼稚なものである。自身の意志や立場性を隠匿し、中立性を装いながら、話してみたところで聞けるのは、薄っぺらい表面的な話だけである。

 なぜ、自分は……この人に話を聞いてみたいと思ったのだろうか。なぜ、この人は……このような意見や思想を持つに至ったのだろうか。目の前に座った相手をおだてて、気持ちよさそうにしゃべった音を、レコーダーに記録する。それを、聞き直しながら文字起こしすれば、記事は手軽に出来上がる。それは、確かに人の言葉のように見えるかもしれないが、なにも中身はない。

 何か「表現の自由」の危機が起こるたび、幾人かのライターは「オタクの味方」を自称する政治家をネタに、ちょうちん記事を書き連ねる。マンガ家も、そのほかさまざまな関連のオタクたちはネットでリアルで「こちら側」の政治家へ、お追従を並べ立てる。そんな風景には、表現などどこにもない。

 言論/表現の自由という言葉を記すのは簡単だ。でも、自分が守るべきはなんなのだろうか。
(文=昼間たかし)

最終更新:2018/03/22 22:30
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