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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.472

すべてのセックスが“ハニートラップ”に思える!? 元CIA工作員が描く官能作『レッド・スパロー』

ジェニファー・ローレンスが大胆なヌードシーンに初挑戦した『レッド・スパロー』。彼女に出会った男たちは次々と甘い罠に堕ちていく。

 セックスは性欲だけで成立する行為ではなく、ましてや愛情がすべてを占めるものでもない。そこにはパートナーに対する征服欲・支配欲も多分に含まれている。それゆえ謎めいたパートナーのほうが、より支配欲を掻き立てられ、セクシーに感じられる。人気若手女優ジェニファー・ローレンス主演映画『レッド・スパロー』を観ていると、そんなことを考えてしまう。本作は元CIA工作員という経歴を持つジェイソン・マシューズの処女小説が原作。ジェニファー・ローレンス演じる元花形バレエダンサーがその美貌と若い肉体を武器に、男たちを次々とハニートラップに仕留めていく官能サスペンスとなっている。

 ジェニファー・ローレンスは『世界にひとつのプレイブック』(12)でアカデミー賞主演女優賞、『アメリカン・ハッスル』(13)で同助演女優賞を受賞している実力派女優。ディストピア化した近未来社会の救世主を演じた『ハンガー・ゲーム』(12)はシリーズ化されて、大ヒットを記録した。そんなハリウッドを代表する若手女優No.1の座にあった彼女を悩ませたのが、2014年に起きたiCloudからのヌード画像ハッキング事件だった。ジェニファーは被害者でありながら、女優としてのキャリアにまで影響を及ぼしかねない騒ぎとなったが、そんな中でオファーされたのが『レッド・スパロー』だった。スパローとは男たちにハニートラップを仕掛けて、情報を入手する女性スパイのこと。大胆なヌードシーンに初挑戦したジェニファーは「この作品に出演したことで、吹っ切ることができた」と語っている。

“娼婦の学校”と呼ばれるスパロー・スクールにドミニカは入学することに。有名人だったドミニカは生徒たちの間でも注目の的だった。

 本作の主人公は、ロシアの国立バレエ団の看板ダンサーだったドミニカ・エゴロワ(ジェニファー・ローレンス)。公演中に大ケガを負ってしまい、再起不能となってしまう。病気療養中の母親と2人暮らしだったドミニカは宿舎の部屋代を払うこともできなくなり、途方に暮れる。そんなとき、ロシア対外情報庁の高官である叔父ワーニャ(マティアス・スーナールツ)が、ドミニカの美貌と知名度を活かせる新しい仕事を斡旋する。ハニートラップ専門の女スパイとして国家に仕えよというものだった。スパイ養成学校で過酷な訓練を受けたドミニカは、ハンガリーへと派遣される。米国の商務参事官、実はCIAに属するネイト・ナッシュ(ジョエル・エドガートン)に近づき、ロシア内部の密通者をあぶり出せというミッションだった。

 鬼教官(シャーロット・ランプリング)が指導するスパイ養成学校の授業内容が強烈だ。原作者ジェイソン・マシューズいわく「ソ連時代に実在した」というスパロー・スクールは“娼婦の学校”とも呼ばれ、自身の肉体を使って男たちを手玉にするノウハウを徹底的に若い生徒たちに実習させる。鳴りもの入りで入学したドミニカは、まず生徒全員が見ている前で全裸になるよう指示される。国家に仕える道具なのだから、邪魔な羞恥心は棄てろと鬼教官は冷たく命じる。

 ナチ収容所における倒錯愛を描いた『愛の嵐』(74)で知られるベテラン女優シャーロット・ランプリングとジェニファー・ローレンスとの、火花を散らす新旧女優対決は中盤の大きな見どころ。鬼教官の台詞「人間の欲望はパズル。欠けたピースを埋めることができれば、相手をコントロールすることができる」は本作のキーワードだ。頭のいいドミニカは、この言葉をいち早く自分のものにしてしまう。花形ダンサーだったというプライドの高いドミニカを、男たちは力づくで支配し、陵辱しようとする。だが、ドミニカは欲望まみれの男たちの二手三手先を読み、格闘技で言うところのマウントポジションを常にキープし続ける。

ターゲットの好みを事前に調べ、服装や髪の色を変えて接近する。国家機密をめぐり、高度な心理戦と肉弾戦が繰り広げられていく。

 スパロー・スクールのシーンで、ジェニファー・ローレンスはフルヌードを披露しているが、扇情的な目線で彼女を追っていた男性客たちはガツンとカウンターパンチを喰らうことになる。丸裸になったジェニファーが無敵の存在に映る。一糸まとわぬ姿になった若き大女優に、男たちはひれ伏すしかない。女にとってのヌードは必ずしも服従を意味するものではなく、最大の武器にもなることをジェニファーはスクリーン上で証明してみせる。

 後半はハンガリーの首都ブダペストへとドミニカは飛び、CIA捜査官ネイトと虚々実々の駆け引きが繰り広げられる。ネイトはドミニカの正体が女スパイであることを承知の上で、ベッドを共にする。ロシアからの亡命を訴えるドミニカ、その亡命を受け入れることを約束するネイト。どこまでが本音なのか、それとも罠なのか。身体を張って生きるドミニカとネイトの間に信頼と情愛が培われていく一方で、CIAとロシア対外情報庁のそれぞれの思惑が絡み、まるで超難解なあやとりのような展開となっていく。どんなラストが待っているのか、最後の最後まで予断を許さない。

 どこまでが本気で、どこからが芝居なのか。ベッドの上ですべての女は、女優へと変身する。そしてミステリアスな女優ほど、男心を魅了して止まない。すべてのセックスはハニートラップであり、どんな罠が待っているかは掛かってみなければ分からない。最強の女スパイを演じるジェニファー・ローレンスを見ていると、そんな言葉が思い浮かぶ。
(文=長野辰次)

『レッド・スパロー』
原作/ジェイソン・マシューズ 監督/フランシス・ローレンス
出演/ジェニファー・ローレンス、ジョエル・エドガートン、マティアス・スーナールツ、シャーロット・ランプリング、メアリー=ルイーズ・パーカー、ジェレミー・アイアンズ
配給/20世紀フォックス R15+ 3月29日(木)よりTOHOシネマズ日比谷にて特別先行上映、30日(金)より全国ロードショー
(c)2017 Twentieth Century Fox
http://www.foxmovies-jp.com/redsparrow

 

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最終更新:2018/03/23 19:45

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