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【wezzy】

ヒカキンは激務明かす…YouTuberは「好きなことで生きていく」楽な職業?

 HIKAKIN(以下、ヒカキン)やはじめしゃちょー、Fischer’s-フィッシャーズ-に東海オンエアなど、今やテレビを中心に活動するタレント以上に厚い支持を獲得している超人気のYoutuberたち。テレビ放送よりYoutubeを熱心に見ているという子供も多いだろう。ついに、小学生の「将来就きたい職業」にYouTuberが登場した。人材サービスのアデコが発表した調査結果「2018年版小中学生の将来就きたい仕事」によると、小学生男子の部でYouTuberは公務員やバス電車などの運転手と並んで9位にランクイン。子どもたちからの圧倒的な支持が改めて浮き彫りとなったかたちとなる。

 では、実際のYouTuberの仕事とはいったいどんなものなのだろうか? それは「好きなことで生きていく」という甘いキャッチコピーとはいささか様子の違ったもののようだ。先月19日に放送された『プロフェッショナル・仕事の流儀 新しい仕事スペシャル』(NHK)で、NHKのカメラがヒカキンの日常に密着しているのだが、この生活があまりにも過酷なもので視聴者を驚かせた。

 番組でNHKのカメラがヒカキンの仕事場兼自宅であるマンションの一室に着いたのは午後2時のこと。出迎えたヒカキンはスウェットにボサボサの髪で明らかに寝起き。ずいぶんと自由な生活だなぁと思うかもしれないが、まったくそんなことはなかったようだ。企画、撮影、出演、編集を全部ひとりで行う彼は、作業が徹夜になることもザラで、その密着取材の日も、1日前は寝ないで朝まで仕事をやっていて、そのうえその日の朝7時まで動画の編集をやっていたためのグロッキー状態なのだった。

 コンビニで買ってきたと思われる、シュークリーム、バナナ、コーヒーを立ったまま取り敢えず胃の中に流し込んだヒカキンは、シャワーを浴びたら早速撮影を開始。

 この日撮影する動画は、金箔が施された高級トランプで遊んでみる商品紹介動画なのだが、この動画もただただ遊んでいるように見えて、細かいところにまで神経をとがらせている。

 商品の細かい情報を間違えないように確認するのはもちろんのこと、ふと発した「貴族感出していこう」という言葉に違和感を覚えたヒカキンは、おもむろにスマートフォンを取り出し、「貴族」という言葉について検索。この言葉を使うことでなにかしらの問題が生じることがないかどうかを確認していた。

「貴族」なんて、日常的に使う言葉ではないか――と思うだろう。しかしヒカキンは、その単語を使うことで自分の意図と伝わる結果に齟齬が出ないかどうか慎重に検討したうえで、言葉を使っている。その理由をヒカキンは「誰が見ても嫌な気持ちになんないようにしなきゃなってとこで。『大丈夫っしょ』とか、むしろなにも考えないで調子こき過ぎると、案外、楽しく見られない人がいたりするんですよ」と語る。自分の考える“面白い”“楽しい”が絶対ではないはず、と疑うことが出来ているのだろう。

ご存知の通り、YouTuber全員がヒカキンのような考えをもっているわけではない。以前、wezzyでも記事にしたラファエルや禁断ボーイズのように差別や偏見を煽るような悪質な配信を行って再生回数を稼ぐ配信者もたくさんいるわけだが、ヒカキンは彼らとは一線を画す。だからこそ彼はYouTuberの頂点に君臨し続けるのだろう。つまり圧倒的な支持を獲得し続けるためには、これだけの細やかな配慮が必要なのである。

 そして2時間ほどで撮影は終了。しかし、ヒカキンの仕事はここからが難所となる。いよいよ動画編集の作業に入っていくのだ。収録する映像の切り貼り、効果音やテロップ入れといった作業を行っていくのだが、これには膨大な時間がかかる。たった7分の動画を完成させるための編集にかかった時間はなんと6時間。周囲からは「分業制にしないと身体がもたない」と助言されているが、自らのメッセージを過不足なく伝えるため、ヒカキンは独力での動画編集にこだわる。

 編集作業が終わったのは24時。しかし、まだ仕事は終わらず、その後、翌日配信予定のゲーム実況動画を撮影し、寝室に入ったのは25時をまわっていた。ただ、徹夜もザラとの説明を鑑みると、25時過ぎに布団に入れていた時点でこの日はまだ楽なほうだったのだろう。NHKのカメラが入っていた日は一日中仕事場にこもって動画製作を行うスケジュールだったが、取材対応や打ち合わせで外出したりすればそのぶん動画製作の進行も滞るわけで、しかし“毎日更新”となると「今日は撮影も編集もしない」という判断はできない。仕事場から外出する予定のある日はそんなに早くは寝られないというのも十分想像できる。

 ヒカキンがYouTuber一本で生活費を稼ぐようになったのは6年前。この6年間で、3700本以上の動画を製作してきたという。これは、毎日1本ないし2本の動画をつくっていなければ到達できないペースで、もちろんその間の休日はほぼゼロだったそうだ。

 ここまでして動画をつくり続けるのはなぜなのか、それはカメラの前でポツリとつぶやいたこの言葉がその理由のすべてを表している。

「人は飽きるものですからね、多分」

 常に動画を更新し続けていなければ、人はだんだんとそのYouTubeチャンネルを閲覧しなくなってしまう。「飽き」に対抗するには、新鮮なコンテンツを常に提供し続けるしかないのだ。YouTuberのファンは小中学生などの若年層が多いため、その傾向はより強いだろう。

 その状況をヒカキンは「マラソンだと思いますね、YouTubeは。ゴールの見えないマラソンみたいな感じですかね」とたとえる。「ゴールの見えないマラソン」ほど地獄のような状況はないようにも思えるが、Youtuberとして長く人気を得続けるためには仕方がない。

ヒカキンがこんな苦労をしてまでYouTuberを続ける理由
 長時間モニターに向かい合って試行錯誤する動画編集もつらそうだが、やはり一番キツいのは、1年365日、常にフレッシュな企画を考え続けなければいけないというところだろう。実際、ヒカキンは「単純に考えて、1年365本ネタが必要ってことなんで。それって、普通ではないと思うんですよね。全部自分で考えて、失敗成功も自分次第っていうところの、明日あさってもわかんないっていう不安とかは、(サラリーマンの生活とは)違うつらさはあるかなと思いますね、やっぱし。今日終わっても明日があるので、落ち着かないっていうか、考えなきゃいけないし。でも、その歩みを止めたら終わるんだろうなっていう」と語っている。「今日は終わっても明日があるさ」というのは、普通の人々にとっては希望の言葉だが、YouTuberにとってはそうでもないのだ。

 本稿ではYouTuberのつらい側面ばかりにスポットを当ててしまったが、それでもYouTuberがYouTuberであり続けるのはなぜなのか?

 お金? 有名になりたいという欲求?

 いや、そうではない。これだけの苦労をしても動画をつくり続けるのは、動画を見てくれた人が笑顔になってくれて、その笑顔や励ましに、ヒカキン自身も人生の意義を見出せるからだ。番組の最後にヒカキンはこんな言葉を残している。

「僕の動画で100万人ぐらい笑っているって考えると、誰でもできることじゃないことをできているっていうことを考えると、そっちのほうが、なんかいい人生だったって思えるんじゃないかと思うんですよね」

 楽しいこともあれば大変なこともあるのは、どんな仕事も一緒。YouTuberも同じだ。でも、大変だったら大変だっただけ、返ってくるものも大きい。ヒカキンは身をもってそんな人生訓を教えてくれているのかもしれない。

 一見すると、商品を紹介するだけで大金を得られるようなラクな仕事だと誤解されがちなYoutuberだが、ヒカキンの言葉からは「Youtuberって楽な職業じゃない」ことがわかる。ただ、小学生男子の人気職業として上位の「サッカー選手」「医者」「野球選手」もまた、なるのも続けるのも決してラクな仕事ではない。それらとジャンルは全く異なるものの、職業としてのYoutuberも、狭き門なのである。

(倉野尾 実)

最終更新:2018/04/14 07:15
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