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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.491

この映画で笑った奴らは全員強制労働に従事だ!! 共産主義コメディ『スターリンの葬送狂騒曲』

ロシアで上映禁止となった『スターリンの葬送狂騒曲』。変人役を得意とするスティーヴ・ブシェミは、髪を剃り上げてフルシチョフ役に!

 ナチスドイツを率いたアドルフ・ヒトラー、中華人民共和国を建国した毛沢東、そしてソビエト連邦の二代目指導者ヨシフ・スターリン。世界史に名前を残すビッグネームたちだが、同時に大量殺戮を繰り返した恐怖の独裁者としても知られている。フランスでベストセラーとなったグラフィックノベルを実写映画化した『スターリンの葬送狂騒曲』(原題『The Death of Stalin』)は、“鋼鉄の人”スターリンが急死したことで、残された取り巻きたちが次期指導者の座をめぐって姑息に出し抜き合う様子を描いたブラックコメディだ。製作国であるイギリスをはじめ欧米各国でスマッシュヒットを記録したが、撮影に協力したロシアでは上映禁止となっている。

 本作の舞台となるのは、1953年のソビエト連邦の首都モスクワ。30年近くにわたって最高指導者として君臨してきたスターリン(アドリアン・マクローニン)は、その夜も側近たちとの宴会でバカ騒ぎをしていた。くだらないジョークを連発するのは、中央委員会第一書記のフルシチョフ(スティーヴ・ブシェミ)。秘密警察の長官であるベリヤ(サイモン・ラッセル・ビール)が大笑いして、場を盛り上げる。スターリンに睨まれると、処刑者リストに載せられて即処刑、運がよくても強制収容所に送られて死ぬまで肉体労働に従事することになるため、側近たちはご機嫌とりに必死だった。スターリンは盗聴が趣味なので、自宅でこっそりディスることすらできない。

脳出血でスターリンが倒れたのに、側近たちは誰も医者を呼ぼうとしない。みんな、大笑いしたいのを懸命に我慢している。

 朝方になって宴会はようやくお開きに。寝室に戻ったスターリンはバタッと床に倒れ込んでしまう。脳出血だった。寝室のすぐ外には警備兵たちが控えていたが、スターリンを起こすことを恐れて、物音の原因を確かめようとはしない。食事を運んできたメイドがドアを開けるまで、スターリンはずっと放置されたままだった。メイドの悲鳴を聞きつけ、ベリヤ、フルシチョフたちが駆け付けるが、それでも誰も医者を呼ぼうとしない。できれば、このまま死んでほしい。それに医者を呼ぼうにも、まともな医者はスターリンを毒殺しようとした疑いでみんな投獄されていた。ようやく医者が呼ばれたのは、スターリンが倒れてから2日後。一時的にスターリンは意識を取り戻すが、後継者を指名することなく死去。享年74歳。フルシチョフたちは悲嘆の声を上げるが、傍から見ると大喜びしているようにしか映らない。

 スターリンが死んだことで、真っ先に動いたのはベリヤだった。それまでのベリヤはスターリンの命令に忠実に従って政治犯たちを次々と処刑していたが、彼らを解放する恩赦を大決行。次期指導者の座を狙っての人気獲りのためである。銃殺刑寸前のところで命拾いした者がいれば、逆に粛正される者もいる。スターリンの私邸にいたスターリンのそっくりさん(影武者)たちは「ご苦労さま」というねぎらいの言葉と同時に始末される。スターリンの死によって、ソビエト連邦全体を揺るがす悲喜劇が次々と派生していく。

 スターリンの前では太鼓持ちに徹していたフルシチョフだが、中央委員会の主導権をベリヤが握ろうとしているのが面白くない。スターリンが亡くなって最初の会合、ベリヤは気の弱いマレンコフ(ジェフリー・タンバー)を次期指導者に推薦する。マレンコフを影で操ろうとする魂胆が見え見えだった。誰もやりたがらない葬儀委員長を押しつけられたフルシチョフは、ベリヤへの嫌がらせを実行に移す。スターリンの葬儀に一般市民を呼び寄せ、クレムリン前は大パニックに。警備隊が一般市民に向かって発砲し、大量の死傷者が出てしまう。警備責任者であるベリヤに批難の声が向けられる。政敵への嫌がらせのために、1500人もの市民の命が犠牲となった。悪い冗談みたいだけど、本当にあったエピソードらしい。


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