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原作のメッセージ性より生理が優先された結末!! 現代篇は不要だった『この世界の片隅に』最終話

現代篇なしでも違和感ないが、予告に大物女優!! すずが闇墜ちする『この世界の片隅に』第4話の画像1
TBS系『この世界の片隅に』番組公式サイトより

 2017年7月、世界122カ国と地域の賛成を得て、核兵器禁止条約が国連において採択されました。でも、世界で唯一の被曝国である日本は、この条約には署名していません。核保有国である米国がこの条約に反対しているため、日本は米国に忖度したのです。広島、そして長崎への原爆投下から73年の歳月を経ても、核兵器問題は何ひとつ解決していないのです。広島市出身の漫画家・こうの史代のベストセラーコミックの実写ドラマ化『この世界の片隅に』(TBS系)の最終話。広島市江波の海苔農家の長女として生まれ育った主人公・すずの目に、終戦間もない広島市の光景はどのように映ったのでしょうか。

(前回までのレビューはこちらから)

 昭和20年(1945)11月。戦争は終わりましたが、食べ物がありません。呉市の北條家へと嫁いだすず(松本穂香)は闇市に出掛けるも、食料が手に入らず途方に暮れていました。そんなとき、四駆に乗った米兵たちが、ハーシーズの板チョコをすずに手渡します。すずがキャラメル好きなことはドラマ序盤でたびたび描かれましたが、ここでもすずは拒むことなくチョコを受け取りました。すずの右手を、姪っこ晴美の命を奪った憎い米軍ですが、空腹では逆らう気力も湧いてきません。すずは米兵を憎むよりも、生きることを選んだのです。

 しばらくすると、義姉の径子(尾野真千子)が配給の行列に並ぶすずを見つけ、米軍の残飯で作った雑炊を2人で分け合って食べることに。すずが嫁入りした当初はつらく当たっていた径子でしたが、娘の晴美を失ってからは寄り添うように暮らしています。右手のないすずに対して、径子はごく自然に雑炊を食べさせてあげています。すずは右手を失いましたが、大切なものを手に入れたようです。米兵からもらったチョコレートは、晴美の遺影の前に供えられました。

 最終話のハイライトとなったのは、すずの広島市への帰還です。義父・円太郎(田口トモロヲ)、義母・サン(伊藤蘭)らに背中を押され、ばあちゃん(宮本信子)の家で療養する妹すみ(久保田紗友)の見舞いに向かいます。以前にも増して色白になっている妹すみは、お布団に横になって過ごしていました。起き上がるのも大変そうなので、すずは妹の横に添い寝します。まるで子どもの頃、ばあちゃんの家で昼寝をしていたときのようです。懐かしさが込み上げてきますが、どう願ってもあの頃には戻れません。意を決したすみは、原爆投下の日から母・キセノ(仙道敦子)は行方不明になったこと、母を探し続けていた父・十郎(ドロンズ石本)は倒れて、すぐに亡くなったことを姉に伝えます。

「知らせるの遅うなって、ごめんね」と涙を流しながら謝るすみ。原爆病で苦しむすみが、何で謝らなくてはいけないのでしょう。あまりにも理不尽すぎて、とてもやりきれない史上最も哀しいガールズトークです。

 見舞いを終えて実家の様子を確かめに向かったすずと入れ違いで、すずの夫・周作(松坂桃李)が現われました。海軍に残っていた缶詰をお土産に、すみを励ます周作。すみは早く姉を追い掛けるように促します。「すずさんと一緒に生きていけるんは、えらい幸せじゃ思うとります」という言葉を残して去っていく周作。義兄の残した言葉が、すみの心を揺さぶります。戦時中、すみには親切にしてくれる若い陸軍の将校がいました。結局、すみが好意を抱いていた青年将校は、ドラマには一度もその姿を見せませんでした。恐らく、原爆で彼も命を落としたのでしょう。すずの後を追う周作の後ろ姿を、うらめしく見つめるすみでした。

 すみのような広島や長崎で被曝した若い女性がその後どんな人生を歩んだのか気になる方は、こうの史代のもうひとつの代表作『夕凪の街 桜の国』(双葉社)をぜひ読んでみてください。

 

■物語のフィナーレはマツダスタジアムへ

 絵を描くことが大好きなすずがよくスケッチしていた広島県産業奨励館は、原爆によって廃墟となっていました。街全体が焼け野原となって広がっています。ここはすずと周作が幼い頃に出逢った、思い出の場所でもあります。そんな大切な場所で、すずは周作と再会を果たします。「この世界の片隅に、うちを見つけてくれてありがとう」とすずは周作に感謝するのでした。

 呉市へと戻る広島駅で、すずと周作はボロボロの幼女と出逢います。幼女は母親を原爆で失い、浮浪児として3カ月間も一人でサバイバルしてきたのです。すずが落としたおにぎりを拾ったその子は、すずのない右手部分にしがみつき「お母ちゃん」と呼ぶのでした。そんな女の子に向かってすずは「この広島でよう生きとってくれんさったね、ありがとう」と優しく微笑み、呉市へ連れて帰ります。そして、この幼女の73年後の姿が、現代篇の節子(香川京子)でした。呉市の丘の上にある北條家は、すずだけでなく節子にとっても大切な居場所となるのです。

 原作&劇場アニメ版は、幼女が北條家の人々に温かく受け入れられるところで閉幕しますが、TVドラマ版はサプライズなフィナーレを2つ用意しました。巡洋艦青葉に乗り、呉港で撃沈した青葉と運命を共にしたと思われていたすずの幼なじみ・水原哲(村上虹郎)は実は生きており、故郷である広島市江波に「ただいま!」と元気に戻ってきました。もうひとつのサプライズは現代篇です。節子は年下の親友・佳代(榮倉奈々)と江口(古舘佑太郎)を連れて、マツダスタジアムへと向かいます。赤一色となった客席の中には「負けんさんなよー!!」と叫ぶ老女の後ろ姿が。すずはカープ女子として元気に生きていたのです。

「負けんさんなー!!」というすずの声に励まされ、呉市も「100年は人間は住めない」と言われた広島市も復興を遂げました。広島県民のド根性ぶりを見せるかのように今年の広島カープも元気です。こうして観測史上もっとも暑かった2018年の日本の夏の終わりと共に、実写版『このせか』は大団円を迎えたのでした。

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