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開いててよかったコンビニ美談の衝撃的裏事情!! 禁忌本『コンビニオーナーになってはいけない』

『コンビニオーナーになってはいけない』(旬報社)

 おにぎり、お茶、スイーツ、雑誌の購入に、銀行口座や公共料金の振り込み……。今や街のインフラとして、24時間営業のコンビニエンスストアは欠かすことができない存在となっている。また、災害時でも休まずに営業を続ける光景は、コンビニ美談として受け入れられている。現在、日本には5万4,000店以上ものコンビニが営業しているという。だが、今年9月13日に発売された新刊『コンビニオーナーになってはいけない 便利さの裏側に隠された不都合な真実』(旬報社)には、マスコミが触れることのない大手コンビニ業界の裏事情が赤裸々に綴られている。

 2009年に結成された「コンビニ加盟店ユニオン」と経済ジャーナリスト・北健一氏の共著である『コンビニオーナーになってはいけない』を開くと、気軽にコンビニを利用している一般客にとっては驚きの事実が次々と記されている。本書の内容をざっくりとまとめると、コンビニのフランチャイズ制度は現代における奴隷制度であるということ。コンビニオーナーはフランチャイズを運営する本部と一度契約を結んでしまえば、奴隷のように死に至るまで酷使され続けるはめになる。オーナーというと聞こえはいいものの、加盟店から本部へのロイヤリティ(商標使用・経営指導の代価)は大手コンビニの場合は6割を占め、さらに厳しい上乗せが追加される。

 コンビニでは賞味期限切れのお弁当や総菜が大量廃棄されていることが問題視されてきたが、これらのフードロスはすべてコンビニオーナー側が負担しなくてはならない。大量のフードロスが生じても本部の懐は痛まないため、本部は常に商品棚をいっぱいにし、お客にとっての機会ロスをなくすようにうるさく指導している。フードロス問題は一時期それなりに騒がれ、09年には公正取引委員会からの指導もあり、多少は改善された。それでもフードロスに対して、本部側の負担はわずか15%にすぎないという。

 

■コンビニで値引き販売が許されない理由とは?

 本書の中でひときわ強烈な印象を残すのは、店舗を巡回する本部社員の万引き犯に対する対応だろう。コンビニオーナーが万引き犯をバックヤードに連れ、説教をしていると「万引き犯も大事なお客さんですよ」と本部社員からなだめられたそうだ。廃棄処分になる食品だけでなく、万引きされた商品のロスもコンビニオーナー側が補填しなくてはならない。つまり、本部にとっては万引き犯も懐が痛まない、大事なお客さまというわけだ。オーナー側の負担が増えれば増えるほど、本部側はますます儲ける仕組みとなっている。

 フードロスを少しでも減らそうとコンビニオーナーが賞味期限の迫った食品を値引き販売すると、本部から「契約延長ができなくなりますよ」という圧力が掛かる。コンビニオーナーにとって契約の打ち切りは、借金地獄に陥ることを意味する。契約時に「一国一城の主になれます」とおだてられるのは甘い口説き文句であり、実際のところ借金漬けにされたコンビニオーナーは本部に逆らうことはいっさいできない。

 本部側の非情さを分かりやすく象徴しているのが、「ドミナント戦略」と呼ばれるもの。同じ地域に、やたらと同じ系列のコンビニがあちこち並んでいる光景を見たことはないだろうか。特定の地域に集中的に出店し、その地域をドミナント(支配)してしまおうという経営戦略だ。店舗同士は共食いとなり、店舗ごとの売り上げは伸びないものの、店舗数が増えることで本部側の収益は増え、美味しいことこのうえなしである。売り上げの落ちたコンビニオーナーはアルバイトを雇うことも難しく、オーナー夫婦が昼夜交替で働き続けるしかない。コンビニオーナーの過労死が多いという恐ろしいデータも掲載されている。

 東日本大震災時のエピソードは、まさに生死に直結するシビアな問題だ。コンビニは24時間365日営業を続けることが本部から義務づけられており、東日本大震災のときも店舗を閉めることができず、避難しそびれたコンビニオーナーや従業員たちは津波に呑まれてしまった。大震災以降、本部は緊急時マニュアルを作成したそうだが、コンビニで働く人たちの生命よりも、コンビニ契約のほうを重視する体質は今も変わっていないと本書は指摘している。

 これだけ多くの問題を抱え、15年にはコンビニ業界を代表して業界最大手の「セブン-イレブン」がブラック企業大賞を受賞しているものの、テレビをはじめとする大手メディアはコンビニ問題をほとんど取り上げることがない。テレビ局にとってコンビニは優良CMスポンサーであり、新聞社や雑誌社はコンビニ販売に頼っているため、マスコミはコンビニ問題を追及することができずにいる。

 よく利用する近所のコンビニは、スタッフの顔色がいつも悪い。「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」の声は機械的で、明るい店内に空元気さだけが響き渡る。本書を読んで、その理由をようやく理解することができた。
(文=長野辰次)

最終更新:2018/09/26 17:00
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