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映画『止められるか、俺たちを』公開記念特集第3弾

“革命家”足立正生が語る若松孝二と共闘した時代「若者が感じる閉塞感は今も変わらない」(前編)

若松孝二監督(画像左)とその盟友だった足立正生。足立は四半世紀にわたって中東でゲリラ生活を送ったが、2人の友情は途絶えることはなかった。

 秋雨の降る明治通りの交差点に、パレスチナ解放闘争の戦士は立っていた。白髪だが、肩幅はがっしりしており、真っすぐに伸びた背筋に意志の強靭さを感じさせる。足立正生、1939年生まれ。学生映画で活躍した後、“ピンク映画の黒澤明”と呼ばれた若松孝二監督率いる「若松プロ」で脚本家、監督を務めた。足立が「出口出」名義でシナリオを執筆した若松監督作品の数々は1960~70年代の若者たちに多大な影響を与えた。71年に足立は若松監督と共にカンヌ映画祭に参加し、その帰路にて中東のパレスチナゲリラを取材したドキュメンタリー映画『赤軍 PFLP 世界戦争宣言』(71)を共同監督。74年に足立は再び中東へと渡り、2000年に日本へ強制送還されるまでゲリラ活動に身を投じた。

 映画表現だけに留まらず、現実世界においても闘い続けた足立へのインタビューは、代々木にある映画会社「太秦」にて行なわれた。白石和彌監督が撮り上げた実録映画『止められるか、俺たちを』(現在公開中)で描かれた1969~71年という時代について聞くためだ。日本に帰国後も『幽閉者 テロリスト』(07)、『断食芸人』(16)と先鋭的な映画を撮り続けている現役の革命家は、煙草の煙をゆらしながら、とても柔和な口調で、井浦新が演じた若き日の若松監督、門脇麦が演じた「若松プロ」唯一の女性助監督だった吉積めぐみさんらと過ごした日々について語った。

──映画『止められるか、俺たちを』をご覧になって、いかがでしたか?

足立 試写の後、白石くんからも「どうでした?」と尋ねられ、僕は激賞しましたよ。今の若者たちにきちんと伝わるものになっています。でもね、僕が褒めると、みんな皮肉を言っているように感じてしまうようだね(笑)。白石くんは暴力の連鎖の中にいる人間を描くのが得意な監督だけれども、今回はヒロインであるめぐみ(門脇麦)の心情に丁寧に寄り添ったドラマになっている。監督としての幅の広さを見せた作品でしょう。僕が評論家気取りでコメントしても仕方ないんだけれど、ちょっとお上品に撮ったかな。もっとワルばっかりにしてもよかった。白石くんはそういう尖ったワルをこれまで描いてきたわけだし、当時の「若松プロ」はそんなヤツらばっかりだったんだからね(笑)。

映画『止められるか、俺たちを』より、足立正生(山本浩司)とサングラスをした若松孝二(井浦新)。足立によって若松作品は理論武装された。

──白石監督も、脚本を担当した井上淳一氏も「若松プロ」出身なだけに、レジェンドたちに対するリスペクトと自身の青春時代と重なることもあって、甘く感傷的になった部分があるのかもしれません。撮影前に足立さんから助言などはされたんでしょうか?

足立 「当時のみなさんの心情が知りたい」と白石くんに呼ばれ、原宿の飲み屋にレジェンドが全員集まりました。3時間くらいワーワーしゃべったかな。そのとき、秋山道男くんが中心になって言ったのは「昭和感」を出せということでした。若松孝二のモノマネをしても意味がない。当時の若者たちは社会に対する閉塞感を感じていたんです。今の若者たちもそうでしょ? そのことを今の人たちに理解してもらうためにも、時代性を出せと。低予算のインディーズ映画では無理な注文をしました(笑)。でもレジェンドからの注文はそのくらい。後は自由に撮りなさいと。

──『止め俺』が描いた時代は日本のインディーズ映画の黎明期であり、また足立さんや若松監督にとっても青春時代だった。

足立 僕も若松も20代だったからね。最初に出会ったとき、僕は24歳で、若松は27歳だった。それから7年間いっしょだった。「若松プロ」の誰よりも長く共に過ごしたんだけど、今考えるとわずか7年間だった。でも、当時は1年が3年分くらいのスピードで過ぎていったからね。若ちゃんとはずっと長く映画をつくってきた気がする。不思議な気分ですよ。当時は年間で5本くらい脚本を書いていたし、自分でも2本ほど監督していた。マジメに映画を製作していました。でも、夜は映画を撮っている時間よりも長く呑んでいました(笑)。

──社会に対して閉塞感を感じていたということですが、具体的にはどういうことでしょうか? 今から見ると自由な時代に感じられますが……。

足立 映画を武器に、世の中をかっさばいてやろうと時代と向き合っていたわけです。だから、「若松プロ」は他にはないエネルギーが充満していたんだと思います。でも、あの時代は高度経済成長による歪みが生じるようになり、社会格差も大きくなりつつあった。そんな中で若者たちは、自分は何をすればいいのか分からずに袋小路に追い詰められているような心境だったんです。今も似たような閉塞状況になっていますが、当時の若者たちは袋小路にいる状況を楽しもうとする心の余裕がまだあったように思います。僕は若松孝二や大島渚と共に仕事をしたわけですが、2人とも映画界の主流からはずれた存在。「若松プロ」に集まっていた連中は、はずれの中のはずれですよ(笑)。はずれでもいいんだ、だからこそ映画をつくれるんだというのが面白かった。

映画『止められるか、俺たちを』より。助監督として働き始めためぐみ(門脇麦)は、足立が時折見せる優しさに魅了されていく。
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