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戸田恵梨香『大恋愛』7.6%に急落……「病人が、病人ゆえに危害を加える」という視点の難しさ

■「やっぱり病気は怖い」と、後半で描く

 今回、ニューキャラ登場です。年齢不詳の青年・松尾(小池徹平)が、2人の間をかき乱すことになります。

 松尾は、尚ちゃんと同じく井原先生の患者さん。尚ちゃんより先にMCIを患っており、尚ちゃんとは逆に、病気が判明した瞬間に奥さんに逃げられてしまったバツイチ男でした。仕事は保育士、周囲はフォローしてくれているものの、園長先生から「もう事務だけやれ」と迫られたり、悩みはいろいろあるようです。やたらと愛想がいいのが不気味です。

 この松尾、不気味どころか、とんだサイコ野郎でした。

 講演会で、マイクがハウリングを起こした拍子に失神してしまった尚ちゃんが運ばれていく姿を、物陰から眺めつつニッコリ。さらに、尚ちゃんの病室に無断で侵入すると、「しんじ……しんじ……」と朦朧としている尚ちゃんに「そうだよ、ここにいるよ」とか言いながら、キスしたりします。怖い。

 仕事先から駆けつけ、キス現場を目撃した真司くんは松尾を突き飛ばし、尚ちゃんの顔を覗き込みますが、尚ちゃんの口からは「誰……?」と。血の気が引いてしまう真司くん。

 真司くんはこのとき、『脳みそとアップルパイ』の続編を書こうと決意します。従来のピカレスクでエロティックな作風の新作を用意していたところでしたが、「夫を見失っていく妻を、自分が書かないで、誰が書くんだ」とのことで。このへんの作家心理はよくわかりませんが、まあそういうものなのでしょう。

 意識不明瞭な女性に準強制わいせつ行為を働いた松尾氏が、鼻歌を歌いながら病院の階段を小躍りで駆け下りつつ、次回へ。

 

■「病人が病気ゆえに健常者に危害を加える」という視点

 松尾、サイコじゃん! って話なんですが、松尾が尚ちゃんに一目惚れして、勝手に突っ走って、相手のスキをついて唇を奪う姿は、第1話で真司くんに向かって、色目という色目を使いまくって猛進していった尚ちゃんと重なる部分でもあります。

 突然、まるで取り憑かれたように、常識があるはずの大人の人間が“大恋愛”に落ちていく──それが病気の症状なのか、真実の恋なのか。オッサンになった小池徹平のほうは「病気でおかしくなってる」で、相変わらず美人の戸田恵梨香は「素敵な恋に落ちてる」と、そう切り分けて審判を下すことなど、誰にもできません。あるいは2人ともが性根に粗暴な恋愛体質を持ち合わせていたのかもしれないし、2人ともがMCIの症状によって、目の前に偶然現れた誰かを「運命の人」と勘違いしてしまったのかもしれない。

 尚ちゃんが真司くんの心を見事に奪い去ったように、松尾が尚ちゃんを奪おうと考えたって、それは誰が責められることじゃない。人妻だから、いいことじゃないけど、気持ちの問題としては理解されて然るべきなのです。

 一方で、松尾の行為は、平和に過ごそうとしている真司くんと尚ちゃんに、危害を加えるものですし、明らかに犯罪でもあります。

 精神病の患者が、その精神病ゆえに健常者に危害を加える。今後、真司くんが、松尾もまたMCI患者であることを知ったとしても、「病気だから、うちの奥さんがキスされても仕方ないね」と思えるものではないでしょう。愛する者の病気は、それはすべてを受け入れて、病気さえも愛することができるかもしれない。でも、奥さんにわいせつ行為を働く、憎むべき犯罪者の病気を、それでも受け入れるべきなのか。「病気は悪くない」と、堂々と言えるのか。

 さらに松尾は、MCIが発覚したことで奥さんに逃げられ、天涯孤独であることも語られました。ここでは、親の顔を知らない真司くんと同種の「孤独」を抱かせているわけです。松尾は、いわゆる“尚ちゃん側”でもあり“真司くん側”でもある。さらにMCIについて尚ちゃんより見識と経験が深いことにおいては、元婚約者の“井原先生側”でもある。むしろ井原先生にはないMCI罹患者としての実体験があるわけですから、尚ちゃんにとって最高の理解者にもなりえる。

 この松尾というキャラクター、実に複雑で悲しみを含んだ設定で投下されました。サイコな行為の裏に、深い絶望があるのです。視聴者である私は、もちろんそんな松尾の悲劇に心を痛めるでもなく「小池徹平、絶妙だな! おもしろーい!」と大いに喜んでいる今日この頃です。今後どうなるか、全然わからない『大恋愛』。今夜、第7話の放送は22時から。
(文=どらまっ子AKIちゃん)

最終更新:2018/11/23 12:00
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