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ジュード・ロウとエディ・レッドメインが困惑した日テレ『シューイチ』のヤバい質問

 『ハリー・ポッター』のスピンオフシリーズである『ファンタスティック・ビースト』の最新作『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』が11月23日に日本公開された。それに伴い、舞台挨拶などのため出演俳優らが来日。そのなかでも、ジュード・ロウとエディ・レッドメインは各局のワイドショーにも出演している。

 11月25日放送『シューイチ』(日本テレビ系)もそのひとつだったのだが、番組でのインタビューで出された質問に対して現在批判の声が渦巻いている。

 安村直樹アナウンサーが担当したジュード・ロウとエディ・レッドメインへのインタビューコーナーでは、まず『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』についての軽い紹介をした後、いきなり映画とは何の関係もないこんな質問が飛び出した。

「『シューイチ』女性メンバーのなかで映画デートに行くなら誰がいいか?」

 安藤アナは、片瀬那奈、笛吹雅子アナウンサー、西村まどか、岩田絵里奈アナウンサーの4人の顔写真が載ったフリップを取り出しながらこの質問を投げかけたのだが、当然、ジュード・ロウとエディ・レッドメインが彼女たちのことを知っているわけもない。

 困ったジュード・ロウは、取り敢えず写真だけで安易に選ぶことを避け、「どういう人か詳しく教えてください」と返答。安藤アナは「ナナはアウトドアが好き」「マサコはチーズと赤ワインが好き」「マドカはお天気キャスター」「エリナは新人」と、一言だけ彼女たちのパーソナリティーを説明し、その数少ないヒントだけを頼りに2人は「一緒に映画デートに行きたい相手」を選ぶことになった。

 結果的にエディ・レッドメインは「お天気の話をしてみたい」との理由で西村まどかの名前を挙げ、ジュード・ロウは「チーズと赤ワインが好きだって言うから。嫌いな人はいないでしょう?」と言いながら笛吹雅子アナを選んだ。ただ、コーナーが終了してしまう前にエディ・レッドメインは「でも、ナナとエリナもみんなで一緒に行きましょう!」と大人なフォローを入れた。

 これを見たファンからは<余計な気を遣わせるな><こんなんならもう来て欲しくない申し訳なくて>といった声が起きている。

 

ジュード・ロウとエディ・レッドメインに出された質問の問題点
 『シューイチ』インタビューでの質問には問題点がいくつもあった。まずは、フリップに載った顔写真だけで「デートの相手」を選ばせようとしたこと。ジュード・ロウが「どういう人か詳しく教えてください」と言っていなければ、そのまま一切の説明もないまま、顔の写真のみで選ぶことになっていただろう。それはルッキズムへの批判的な眼差しがあまりにもなさすぎる。

 そもそも、「男性がデート相手の女性を選ぶ」という女性差別的な構造を前提としていること自体ポリティカル・コレクトネス的に問題を多く含んでいる。ジュード・ロウとエディ・レッドメインは番組の空気を壊さないために一応は質問に答えてくれたが、回答を拒否されてもおかしくない問題だろう。

 そして、「デートに行く相手」を「女性」にだけ限定して話を進めている点にも問題がある。

 相手のセクシャリティーを決めつけて話をする態度は、もはやメディアが取るべき姿勢ではない。

 欧米の俳優たちのなかには所与のジェンダーに囚われない生き方をメッセージとして発信する人も増えており、『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』出演者のなかでも、クリーデンス・ベアボーン役を演じるエズラ・ミラーは、自らのセクシャリティーを「クィア」と表現して、一般的なジェンダーの枠にはおさまらない人生を歩んでいると公言している。もしも『シューイチ』のインタビューの席にエズラ・ミラーがいたら、確実に微妙な空気になっていただろう。

 ジュード・ロウとエディ・レッドメインは終始にこやかに対応し、『シューイチ』の用意したインタビューの空気を壊さないようにしていたが、番組の用意した質問が質問であっただけに、ジュード・ロウとエディ・レッドメインはかなり気を遣った感がある。

 『シューイチ』が出した質問は、日本のワイドショーやバラエティ番組ではおなじみのもの。『シューイチ』だけに限らず、同様の質問は日本の俳優相手にも日常的に出されているものだが、ジュード・ロウとエディ・レッドメインの例が象徴的なように、相手が海外スターになると、その感覚が「時代遅れ」であることが炙り出される。

アリアナ・グランデの反応が示した「ブスネタ」の取り扱い
 同じような出来事が、2016年4月13日放送『スッキリ』(日本テレビ系)でもあった。この日の放送では歌手のアリアナ・グランデがゲスト出演していた。近藤春菜(ハリセンボン)の容姿が「マイケル・ムーア監督やシュレックに似ている」という持ちネタで、アリアナ・グランデのことを笑わせようとしたのだが、アリアナ・グランデは笑うどころか、近藤を慰めるような言葉をかけたのだ。

 

 この日の放送では、まず司会の加藤浩次(極楽とんぼ)がアリアナ・グランデに対して「(近藤の顔を指しながら)会ったことあるんじゃない? 映画監督でさ」と定番のフリをやり、近藤が「マイケル・ムーア監督じゃねぇよ!」とツッコむくだりをつくった。しかし、アリアナ・グランデは笑わない。通訳が説明しても笑わない。加藤が近藤を指さしてもう一度「マイケル・ムーア監督(に似てる)」と言うが、アリアナ・グランデは「今日初めて会いました」と返答した。

 マイケル・ムーアでダメならと、今度は「シュレックじゃねぇよ!」をやらせるが、アリアナ・グランデはやはり笑わなかった。それどころか「シュレックだと思いませんでしたよ、すごくかわいい!」と発言したのだった。

 アリアナ・グランデはCM中、近藤に対して「あなたは本当にマイケル・ムーアに似てないから。私が約束する」と声を掛けたという。これは、「身体的特徴で笑いをとる」という、日本のバラエティ番組では現在でも盛んに使われている古典的な笑芸のテクニックが、現在のポリティカル・コレクトネスにそぐわなくなっていることを端的に示す事例である。

メディアは早急にジェンダー感覚を更新すべき
 以上の2例からでも、日本のメディアがいかにジェンダー感覚を更新しないままコンテンツ製作を続けているかがよくわかる。

 こういった話が出ると「なんでもかんでも欧米的価値観に合わせる必要はない」といった反発が必ず起こるが、メディア(特に地上波テレビ)内でのコミュニケーションのあり方は、市井の人々が営む日常でのコミュニケーションのあり方に大きな影響をおよぼすものだ。

 このまま欧米とのジェンダー感覚がズレていったまま時代が進むのは、視聴者の人生に悪影響しかもたらさないのではないか。

 旧来通りの感覚でコンテンツ製作を行うのは楽かもしれないが、そういう怠惰な姿勢が許されない時代にもう突入していることをメディアは自覚すべきだろう。

(倉野尾 実)

最終更新:2018/11/27 07:15
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