日刊サイゾー トップ > カルチャー  > 聖地巡礼に人が来ない対馬の最果て感

『アンゴルモア 元寇合戦記』は面白かったけど……「聖地巡礼」で人なんか来てなさそうな対馬の最果て感

■とはいえ、対馬は魅力満点である

 だが、この「行くに行けない」という到達困難さが、逆に興味をそそる。今回、筆者が目指した和多都美神社は、かの神武天皇の祖父である彦火々出見尊(山幸彦)が、豊玉姫命と出会った神話の地。ここは、まだ公共交通機関で到達できる神社。

 とはいえ、バスは日に数本だけ。それも厳原からは約1時間。そして、バス停からは歩いて3キロあまりという立地。最近、休日は神社までバスが来るようになったというので、まだ観光客向けにマシにはなった様子。

 でも、その到達困難さゆえに、神社には圧倒される雰囲気がある。海へと連なる鳥居。本殿の裏手にある磐座は、日本の古来からの信仰を今に伝えてくれるのだ。

 ほかにも対馬には、見どころのある神社は、多い。厳原の街にある厳原八幡宮神社は、三韓征伐の時に、神功皇后が神を祀ったとされる由緒正しい神社。

 そんな神社なのだが、気になるのは境内を同じくする天神神社と若宮神社(合祀され社殿はひとつ)。

 まず天神神社の祭神は安徳天皇と菅原道真。なぜ、安徳天皇かといえば、対馬に伝わる安徳天皇が壇ノ浦で入水せずに逃れてきた伝説があるから。

 でも、これはまだわかる。もっと気になるのは、若宮神社のほうである。

 この祭神は小西マリア。よほど歴史好きでないと知らないだろうが関ヶ原の戦いで西軍について敗れた小西行長の娘である。マリアは、対馬藩主・宗義智に嫁いだが、父が敗れて処刑されたため離縁され、長崎でキリスト教を信仰しながら生涯を終えたという……。

 そんな女性を祀っているのが、この神社。

 わかるだろうか。日本の神社なのに、キリスト教徒を神様として祀っているという希有な神社なのである。なんだ、この妙な懐の深さは……?

 巨大な島に散らばる名所をめぐるための交通網は、観光客にはまったく優しくない。だが、この観光客にまったく慣れていないがゆえの独特の冷たさは、どこにいっても「町おこし」が盛んな現代においては、味わえぬもの。

 来年には、長崎県立対馬歴史民俗資料館の移転・改修も終わり対馬博物館としてオープン予定というが、雰囲気に変化は訪れるのだろうか。

 本土から遠く離れた島で、限れた商店は努力しなくても客は来るのか、大して愛想もよくない。そんな独特の感覚は、そう簡単には変わりはしないだろう。

 むしろ、その独特さこそが、やたらと過剰なサービスとかマニュアルがあふれる現代にあっては、新鮮である。

『アンゴルモア 元寇合戦記』でも用いられた「率土の最果て」という言葉が似合う島・対馬。観光とか「聖地巡礼」では味わえない最果て感を、あえて味わいにいってもよさそうだ。
(文=昼間たかし)

最終更新:2018/12/16 18:00
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