ミワリョウスケの「未来はいつも分からない」

『ラジコフェス』『ソフィ・カル』『ハチクロ』~片想いと失恋をめぐる考察~

2019/04/17 21:00

文=ミワリョウスケ
TBSラジオより

 初めてラジオでメールが読まれたのは2013年の3月だった。『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』(TBSラジオ)内の「しまおまほのぼんやり相談室」というコーナーに、当時高校生の自分は、こんな相談メールを送った。「僕は現在高校3年生で、来月から浪人生になります。付き合っている人がいて今も好きなのですが、勉強に集中するために別れるべきでしょうか?」というものだ。なんて青く、そして身勝手な相談だろうか。宇多丸さんは、「どうせ別れたってやりまくるんだよ! 関係ない!」と言い、しまおまほさんは「たぶんもっとプラトニックな話だと思う。だってラジオネームが草食系の極みだよ」と言った。この時僕は、しまおさんに一生ついて行くと誓ったのだった。

 それから6年たった19年の3月21日、『TBSラジコフェス』という番組が放送された。radikoのPRを兼ねた4時間半の番組で、爆笑問題が司会を務め、TBSラジオの人気番組のパーソナリティとトークを繰り広げた。その中で、ジェーン・スーさんがゲストの時間に、リスナーからこんな内容の恋の相談が届いた。

「意中の女性がいるのですが、告白する勇気が出ません。そもそも、相手が自分のことを好きなのかもわかりません。これまでは一緒に出かけたりしていたのに、最近は誘ってもなかなか予定を合わせてくれません。彼女の気に障ることをしたのではないかなど、ねちねちぐるぐる考えてしまいます。告白しても振られるビジョンしか見えませんが、こんなに恋い焦がれるのは初めてです。私は何をすべきなのでしょうか?」

 このメールが読まれた直後、爆問田中さんは、「俺が23の時なんか片想いしかしてなかったよ。両思いなんて経験ないよ」と言い、太田さんは、「俺はいつまでもうじうじしてろって思うよ。それが後にいい経験になるよ」と言った。

 少し話がそれるが、先月まで原美術館で開催されていたフランスの女性現代美術作家ソフィ・カルによる『限局性激痛』という展示があった。この展示は2部構成で、1部ではソフィ・カルが失恋に至るまでの恋人との手紙と写真が展示され、2部ではその失恋から立ち直るために、自身の失恋話を他者に語り、その代わりに人生で一番不幸であった話をその人から聞き、そのお互いの語りが刺繍で縫われたテキストによって表現されていた。ソフィ・カルは幾人もの人に同じ失恋話をしていくにつれて、最初は悲劇的な語り口であったものが他者の不幸話によって自分の不幸を次第に客観視できるようになり、どこにでもある話のように失恋を受け止めていく。

 ラジコフェスの片想いの相談を聴き、ソフィ・カルの失恋にまつわる展示を見て、「恋はどこまでも普遍的であり、しかし個人的である」と思った。好きな人に振り向かれたいが、きっと相手は自分に興味がない。わかってはいるけれども、可能性は捨てられない。振られた時、それは人生の終わりのようであり、食べ物も喉に通らないかもしれない。しかし、時間がたてば、よくある話のようになる。恋にまつわるこれらは、きっと誰もが経験したことのあるものだ。それゆえに普遍的だ。けれども、それを経験した個人という揺るぎない存在がいる限り、その想いは唯一無二であるのだ。

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