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地下鉄サリン、東電OL殺人、秋葉原殺傷事件ほか平成30年を振り返る実話系犯罪映画ベスト10

ベストセラーとなった獄中記の映画化

『I am Ichihashi 逮捕されるまで』2013/リンゼイさん殺害事件

 

 2007年3月に起きた「リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件」の映画化。2年7か月に及ぶ逃亡生活を送った犯人・市橋達也の獄中手記『逮捕されるまで』(幻冬舎)を原作に、ディーン・フジオカ初主演&初監督作として劇場公開された。

 当初は『刑務所の中』(02)や『血と骨』(04)などのヒット作を放った崔洋一監督が撮る予定だったが、亡くなったリンゼイさんの遺族側への配慮から、事件の全体像を描こうとしていた崔監督は降板することに。台湾やインドネシアで俳優&ミュージシャンとして活動していたディーン・フジオカが主演だけでなく、監督も兼任することになった。

 映画では殺害および死体遺棄シーンはなく、市橋が警察の捜査網をかいくぐって逃げ続ける様子を、市橋の主観ドラマとして描いている。市橋は顔を整形し、名前を変え、離島で暮らしながら、自分は何者であるかを自問自答し続ける。結局、自分の正体が分からないまま逮捕の日を迎えた。現実から逃げ続ける市橋は、何者でもない、ただ中身が空っぽなだけの存在だった。彼がようやく手に入れたものは、殺人逃亡犯という重い肩書きだけだった。

“平成の毒婦”が仕掛ける禁断のゲーム

『ソドムの林檎 ロトを殺した娘たち』2013 /首都圏連続不審死事件

 3度目の獄中結婚をしていたことで話題を呼んでいる“平成の毒婦”こと木嶋佳苗。婚活サイトを通じて木嶋と知り合った男性たちが一酸化中毒などの不審死を次々と遂げたことから、「首都圏連続不審死事件」として世間を騒がせた。

 寺島しのぶが主演した『ソドムの林檎 ロトを殺した娘たち』はWOWOWで放映された5話完結のドラマだが、脚本は荒井晴彦、演出は廣木隆一監督と映画界の手だれたちが手掛けており、地上波ドラマとはひと味違う趣きに仕上げてある。結婚詐欺、および4人の男性を殺害した疑いで逮捕される恵(寺島しのぶ)。美人ではないものの、どんなメールの文面が男たちを惹き付けるかを熟知しており、誘いに乗った男たちは手料理の数々やセックステクによって、すっかり籠絡されてしまう。恵にとって、男たちは自由にお金を引き出せるATMみたいなものだった。

 大竹しのぶの魔性ぶりが目に焼き付く『後妻業の女』(16)も実在の婚活殺人を扱っており、彼女のターゲットとなった高齢者たちは夢見心地のままあの世へと旅立つことになる。禁断の果実を食べたアダムとイブの末裔である人類は、この禁断のゲームからは永遠に逃れることはできそうにない。

元犯罪者の社会生活は許されないのか?

『友罪』2018/酒鬼薔薇事件

 2013年に出版された薬丸岳のミステリー小説『友罪』を、『64 ロクヨン』(16)の瀬々敬久監督が映画化。あくまでもフィクションではあるが、この作品のモチーフとなっているのは1997年に神戸で起きた「酒鬼薔薇聖斗事件」だ。元少年Aと同世代である瑛太と生田斗真が熱演を見せた力作となっている。

 瀬々監督は「光市母子殺害事件」からインスパイアされた上映時間4時間38分の大作『ヘヴンズ ストーリー』(10)をはじめ、数々の実話系犯罪映画を撮ってきたスペシャリスト。更生施設で心理療法と職業訓練を受けた元少年Aが名前を変え、職場を転々とする姿を追っている。

 元少年Aのような大事件を起こしていなくても、誰しも人間は心の咎を感じながら生きている。一度でも過ちを犯した人間は、社会生活を営むことは許されないのか。もし、隣人の隠された過去を知っても、平然としていられるのか。建前と本音が異なるだろう難問を本作は突き付けてくる。

 瀬々監督が撮る犯罪映画は、風景のこだわりでも知られている。本作では終盤に登場する巨大なパラボラアンテナのある風景が印象に残る。心に闇を抱える主人公が、亡くなった人たちへ“祈り”という名の交信を試みているかのように思えてくる。
(文=長野辰次)

最終更新:2019/04/29 20:00
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