川崎登戸殺傷事件で凶器持ち走るアナウンサーの“現場検証”、ワイドショーの無神経がひどすぎる
28日朝に神奈川県川崎市多摩区の登戸駅付近で発生した19人殺傷事件について、テレビ各局は熾烈な報道を続けている。
29日放送の『情報プレゼンター とくダネ!』(フジテレビ系)では、笠井信輔アナウンサーが事件現場から生中継で、凶器となった刃渡り30センチもある包丁に見立てた棒状のものを手にレポート。警察発表では岩崎隆一容疑者が犯行から自殺に至るまで「10数秒」だったとして、笠井アナは「10数秒でその犯行が可能なのかどうか。実際に時間をはかってみたいと思います」とストップウォッチを手に走り、事件を再現した。
『スッキリ』阿部祐二リポーターも同様に、凶行の現場を走り、ストップウォッチで時間を測定していた。
その検証がなぜ必要なのか、被害者のフラッシュバックや被害者家族、関係者への配慮はないのか。直接被害に遭っていなくともこの事件にショックを受けている視聴者も多いはずだ。
また、事件発生直後からテレビではヘリを飛ばすなどして上空からの映像を繰り返し流したが、負傷者を懸命に救護する様子や血痕などがはっきり映されていた。事件を伝えることと、配慮せずありのままの映像を流すことは違うだろう。
この事件で被害に遭ったのは、学校法人カリタス学園 カリタス小学校に通う児童とその保護者たちであり、スクールバスを待つわずかな時間の悲劇だった。その場には引率のため小学校教頭もいたことを、昨日開かれたカリタス小学校の会見で明かしている。会見では子供達の心のケアを最優先にする語られたが、教員にもまたケアが必要だ。そのような状況で、29日放送『グッデイ』(フジテレビ系)では、学校側の落ち度を暗に責めるような場面もあった。
また会見では理事長が「子供達そして保護者、本当に深い心の傷を負っておりますので、できることなら子供達への直接のご取材はお控えいただければと思います」と要望。校長も「報道関係者の皆様にお願いします。これは保護者からです。子供達の写真を撮ったり、子供達にインタビューをしないでほしいという要望が出ています。これは、保護者の願いですので、どうぞ受け止めていただければありがたく思っております」と語っている。しかしこのシーンで28日放送『Nスタ』(TBS系)は音量を絞り、スタジオに切り替えた。即座に視聴者から「それはおかしい」とSNSなどで異論が相次ぎ、番組放送中にアナウンサーが謝罪するに至っている。
29日『スッキリ』では近藤春菜が、亡くなった男性の妻の「これ以上取材はお控えください」というコメントや、亡くなった小学生の自宅前に報道陣が詰めかけ、父親が「今日は勘弁してほしい。妻を一人にすることができない。後ほどコメントを出します」と話したことに振れ、「信じられない」とメディアの姿勢を批判。を挙げ、声を震わせながら「それ(記事)を読んで、信じられなくて」と無念の表情。遺族が取材にコメントを出す必要はないとして、「一番そっとしておかないといけない」「我々ができることは、もう、(被害者や関係者を)傷つけないということ」だと話した。
午前も午後も、夕方も夜も、複数のニュース番組がこの事件を取り扱い、ショッキングな映像をたびたび流し、事件の詳細を生々しく伝え、被害者の個人情報や加害者の生い立ちを掘り下げる。それが本当に視聴者に求められているのだろうか。そうした情報を得ることで精神的に不安定になってしまう視聴者もいるかもしれない。刺激的な情報よりも、多方面への配慮を求めたい。
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