セレ女「チャント動画」批判から見えた、時代遅れのゴール裏文化

2019/07/09 21:00

文=TV Journal編集部

 

くだんの動画

 Jリーグファンの間で、とある動画がバズッた。

 それは、セレッソ大阪のユニホームを着た女性4人組が、ブルーノ・メンデスのチャント(応援歌)を楽しそうに歌っている動画だ。9日15時現在で100万回以上も再生され、中毒者が続出。Yahoo!トップニュースにほとんど取り上げられることのないJリーグにとって最高のコンテンツとなったわけだが、一部のコアサポーターからは批判的なコメントが集まっている。

「戦場であるゴール裏で自撮りしながら応援するなんてけしからん」というストレートなものから、「セレッソは緩くていいね。ウチではありえないし、やめてね」といった皮肉めいたものまである。

 なぜこのようなコメントが噴出したのか? サッカーライターに訊いた。

「日本サッカー界ではよく『Jリーグは最初の10年で選手がプロ化し、次の10年で指導者がプロ化した。次の10年で必要なのはフロントのプロ化だ』といわれるが、日本のサポーターも変わらなければいけない部分があると思います。今のJリーグのゴール裏サポーターの応援は、Jリーグが開幕した1993年から2000年ごろにかけて作られたスタイルです。若くて血気盛んな一部のグループが応援をリードし、試合中に飛んで跳ねて歌い続ける海外のスタイルが踏襲されている。でも、お手本にしていた海外も変わりつつあります。たとえばプレミアリーグは、サポーターが先鋭化し、フーリガン化したことで、サポーターへの監視を強めました。結果、ゴール裏はコアサポーターのものではなくなりました。しかし、くだんの動画へのコメントにあるように、 日本の先鋭化したサポーターたちは、今の場を失いたくないし、変えたくないのでしょう」

 プレミアリーグはフーリガン対策として、90年代に立見席を廃止し、前席指定席の椅子席へ変更。それと共にチケット価格も上げ、結果的にガラの悪い労働者階級はスタジアムから去り、スタジアムの雰囲気は一変した。ゴール裏は皆のものになった。

 そして、現在はハイライトシーンで総立ちし、たまに歌うスタイルに変わり、戦場ではなく、夢の劇場と呼ばれるようになった。呼応するようにファミリー層も増え、さらに接待でも使われるスタジアムになり、収容率99.9%の世界でも最も観客が多いリーグの一つに成長した。

 一方のJリーグだが、2015年にサポーターの差別問題が連発した時(参照記事)から、ゴール裏は何も変わっていないように思われる。くだんの動画との対比で、別のクラブのゴール裏の動画がアップされたが、相手選手に対し、「死ねよ、おい」といった罵詈雑言が飛んでいた。それを「熱いゴール裏だからこそ」と思っているサポーターがいるから恐ろしい。

 ゴール裏を“戦場”とする先鋭化された選民意識を持つサポーターが減らない限り、Jリーグがプレミアリーグのように成長することはない。そう思う半面、セレッソ大阪のゴール裏に未来も感じた。

(文=TV Journal編集部)

最終更新:2019/07/09 21:17

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