NHK『秋葉原事件』元同僚が自問し続ける「加藤智大と自分の違い」

2019/07/10 21:00

文=日刊サイゾー編集部(@cyzo
NHK公式サイトより

 NHKのドキュメンタリー『事件の涙「“君の言葉”を聞かせてほしい~秋葉原無差別殺傷事件~」』が話題を呼んでいる。

 2008年6月8日、休日の秋葉原の歩行者天国にトラックが突っ込み、乗っていた男が人々に襲いかかり、死者7人、負傷者10人を出した秋葉原無差別殺傷事件。その場で現行犯逮捕された加藤智大(当時25)は派遣社員だったことから、派遣労働や格差社会の問題、また人間関係の希薄さなどがその原因として語られたが、裁判で加藤が語った「ネット掲示板の『なりすまし』に腹を立てて事件を起こした」という理由に世間は納得できないままでいる。

 一方、事件前に加藤がネット上に書き込んでいた世の中への不満を訴える言葉は、11年たった現在でも拡散され続けている。

「現実でも一人、ネットでも一人」

「勝ち組はみんな死んでしまえ」

「他人に仕事と認められない底辺の仕事ですから」

 社会から孤立し、生きづらさを抱えた人たちが、加藤の言葉に共感している――番組では、そんな現状に疑問を覚え、事件と向き合い続ける2人を追った。

 被害者のひとりで瀕死の重傷を負った湯浅洋さん(65)は、獄中の加藤に手紙を送り続けているが、納得できる回答は得られていない。目の前の人たちを助けられなかったという後悔の念から事件の真意を知りたいと願う湯浅さんだが、理由はそれだけではない。加藤と自分の子どもが同じ年ごろということもあり、「死刑執行までに一人の人間としての言葉を残してほしい」と、複雑な心境を吐露する。

 一方、加藤と同じ職場で働いていた大友秀逸さん(43)は、同じ境遇にいた自分と加藤の違いはなんだったのか、自問し続けている。

 16年前、非正規社員として警備の同じ班に配属された2人は、深夜に交通誘導の仕事をしていた。ドライバーから罵声を浴びせられたり、空き缶をぶつけられたり、といったことも日常茶飯事だった。

「人生の中で一番つらかったというのは振り返ってみて思うし、人として扱われていなかった感があった」(大友さん)

 帰り道、同僚への愚痴、ゲームの話、職場の女性への淡い思いなど、たわいない話を語り合っていたという2人。友人と呼べる関係ではなかったかもしれないが、苦楽を共にしたことで仲間意識は強かったようだ。

「傷のなめ合いかもしれないし、同じ弱者で頑張っているよね、っていう慰め合いかもしれない。こんなひどい会社だけど、お互い頑張っているよねって」(同 )

 その後、会社を辞めた加藤の名前を久々に聞いたのはテレビの報道だった。同じ境遇にいた元同僚が多くの命を奪ったことにショックを受け、まったく眠れない日が続いたという。

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