深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.540

ベッドの下で初恋の女性を見守る純愛系変態男!! 高良健吾主演のR18作『アンダー・ユア・ベッド』

高良健吾の純粋がゆえの狂気

目立たない性格の直人(高良)にとって、クラスで一番の人気者・千尋(西川)は眩しい存在だった。

 すでに人妻となっていた千尋の住む街で、偶然を装い熱帯魚店を開く直人。園子温監督の傑作バイオレンス映画『冷たい熱帯魚』(11)の熱帯魚店オーナーと同じように、直人も底知れぬ暗い情熱が心の奥底に流れている。直人の思惑どおりに千尋は店を訪ね、直人は「開店サービスです」と称して千尋にグッピーと飼育セットを贈ることに成功する。と、ここまでは『グレート・ギャツビー』の世界だ。だが、現代日本のギャツビーは、よりアグレッシブで変態的である。千尋の家に水槽を運び込む際に鍵を持ち出してコピーし、さらには盗聴器を仕掛ける。千尋が直人のことをすっかり忘れていたのはショックだったが、これでいつでも千尋に会えるし、24時間身近に感じることができる。だが、盗聴器から流れてきたのは、千尋が泣き叫ぶ地獄のような生活だった。

 仕事のできる、一見すると爽やかそうな千尋の夫・健太郎(安部賢一)は実はとんでもないDV野郎だった。会社から帰った健太郎は、千尋を性奴隷として連日虐待していた。盗聴器と望遠レンズでそのことを知るや、直人はじっとはしていられなくなる。千尋宅に侵入し、ベッドの下に身を潜める直人。すぐそばに千尋はいるが、直人はただベッドが激しく軋むのを間近で感じているだけだった。これではギャツビーではなく、江戸川乱歩の『影男』か『人間椅子』の世界である。

 端正な顔立ちの高良健吾は、『横道世之介』(14)のような純情な青年役もいいが、『蛇にピアス』(08)のアマ、『白夜行』(11)の亮司のような性格の歪んだ役がよく似合う。純粋すぎるがゆえの狂気をはらんでいる。本作を撮った安里麻里監督は、そのことを充分に承知してキャスティングしている。

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