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日本の“こどおじ”による狂気の事件が乱発! 就職氷河期世代は日本の病巣なのか?

文=鷲尾香一

「8050問題」が、いま日本社会の至るところでじわじわと問題の病巣となっていることをご存知だろうか?

「8050問題」とは、親が80歳代でその子が50歳代という関係で、子どもが引きこもり状態にあり、親の生活支援に頼っている状況のこと。「子供部屋おじさん」通称“こどおじ”などともよばれ、6月に元農林水産省次官の熊沢英昭容疑者(76)が、息子の熊沢英一郎氏(享年44)を自宅で刺殺した事件でも脚光を浴びていた。

 親が高齢化し介護などの問題が発生する一方で、その親が亡くなれば、子どもが生活困窮に陥ったり、社会参加ができないなど複雑な問題を抱えている。

 この問題に対して厚生労働省が7月16日に、「地域共生社会に向けた包括的支援と多様な参加・協働の推進に関する検討会(地域共生社会推進検討会)」で、自治体が「断らない相談支援」を実施するなどの新たな方策を盛り込んだ中間報告書をまとめた。同省では、来年の通常国会に関連法案の提出を目指すという

「この報告書では、介護と子育てに同時に直面する『ダブルケア』など、社会福祉問題が複雑化している点も挙げられています。それというのもこれまでの行政対応では、ただでさえ役所に相談するのがやっかいな介護、生活保護、職業支援など各問題に対して、担当する窓口が違っていて、縦割り行政の中で相談者が“たらい回し”にされるケースが多く、十分な支援体制が実施されていなかったことが問題となってきましたよね。今回の報告でやっとお役所の縦割り仕事が正式な問題とされ、対応を進めていくことに本腰をいれることにしています」(取材した記者)

 今回の中間報告では、こうした複雑な問題に対して、断ることなく一括して相談に応じる「断らない相談支援」などを実現するため、市町村の縦割り対応の見直しなどを盛り込んだというわけだ。

 例えば福祉政策の新たなアプローチを実現するための包括的な支援体制は大きく、

①断らない相談支援

②参加支援(社会とのつながりや参加の支援)

③地域やコミュニティにおけるケア・支え合う関係性の育成支援

 という3つの支援の機能を一体的に具えることが必要と指摘。こうした体制の整備に積極的に取り組む市町村に対して、「国としても政策的な支援を行うべきである」とした。ある意味“本気の姿勢”が見て取れる格好だ。

 さらに、相談者や家族が抱える問題は、生活状況や年齢に応じて変化することから、継続して取り組みを続ける「伴走型支援」が必要となっている。

 現在の相談機関等の支援体制は、個別制度がそれぞれ補助する形をとっていることで、“断らない相談支援”を中心とした包括的な支援体制を市町村において構築しづらくなっているため、これらの課題を解消し、包括的な支援体制を各自治体の状況に合わせて整備することを後押しする観点から、『属性や課題に基づいた既存の制度の“縦割り”を再整理する、新たな制度枠組みの創設を検討すべきである』とも指摘されている。

■“言うは易く行うは難し”である

 確かに複雑な問題をひとつの窓口で対応し、さまざまな状況や環境の変化に合わせて相談者に寄り添うように長い時間をかけて問題を解決できるようになるとするなら、それは素晴らしいことだろう。だがしかし、そんなことが本当に可能なことなのだろうか?

 6月に内閣府が発表した「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太の方針2109)では、「就職氷河期世代」の支援策が盛り込まれた。

 この「就職氷河期世代」とは、厚生労働省の資料によると1993~2004年に卒業した、現在、大卒なら37~48歳、高卒なら33~44歳の世代を指す。内閣府が出した「就職氷河期世代支援プログラム関連参考資料」によると、この世代には、非正規の職員・従業員371万人、完全失業者33万人がいる。

 そして、日本総研の推計によると、実は、この「就職氷河期世代」にも、「8050問題」と同様に40歳代のひきこもり約27万人も含まれている。

「彼らは、新卒時点で不況のあおりを受け就職できず、景気が立ち直った時には企業が新卒層を中心に採用を進めたので、すでに就職ができなくなっていた。当然、自らが率先して非正規社員になったわけではなく、“不況時代の寵児”として非正規社員に甘んじている側面が大いにあるんです」(同)

 そして、「就職氷河期世代」の支援策の中心を担うのは、公共職業安定所(以下、職安)となる。結局、就業に関しては職安が担当するという縦割りの政策になってしまっているということなのだ。

「就職氷河期世代」も「8050問題」と同じような問題を抱えているのに何故、就職氷河期世代の支援策を打ち出すときに、今回の中間報告のように縦割り行政を超えたものが出せなかったのか? 

「つまるところ、政府・政治そのものが縦割りから脱却できていないから、縦割りを超えた枠組みでのトータルな対策の検討すらできなかったというのが実態でしょうね」(同)

 その上、前述の中間報告にあるように、新たな対策の推進母体は、国・政府ではなく、市町村という地方自治体であり、結局のところ対策は国からの“丸投げ”に他ならない。

 児童虐待が問題になるたびに、児童相談所の機能強化が取り上げられるが、児童相談員といった専門家が不足しており、その拡充は簡単なものではない。さらに、「断らない相談支援」を行うためには、専門家の育成が大きな課題となるだろうし、その拡充は容易なものではないことは容易に予想できる。

 厚労省では年末までに最終報告をまとめる方針とあるが、その内容はくれぐれも夢物語の“絵に描いた餅”にならないことを願うばかりだ。

最終更新:2019/08/02 17:45

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