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エッジ・オブ・小市民【6】

“恐怖”と“不安”の炎上に意味はある? 小籔千豊の「人生会議」ポスター問題

厚生労働省HPより(現在は削除済)

 厚生労働省が制作した『人生会議』のPRポスターがなかなかの勢いで炎上した。患者団体や遺族から大きな批判を呼び、予定されていた自治体へのポスター発送は中止。ホームページへのPR動画の掲載も見合わせることになった。ポスターに起用された芸人の小籔千豊氏は、出演したテレビ番組で「責任を感じる」などとコメントしているようで、気の毒といえば気の毒な話ではある。確かにポスターで見せた小籔氏の“死人っぷり”はなかなかのインパクトがあったが、何か悪いことをしたわけではないし、そこに責任を感じる必要もないだろう。ただ、この人生会議の普及啓発事業を吉本興業が4,070万円で委託契約していたなんて話を聞くと「ほう、またまた行政にがっちり食い込んでうまいことやってますな」という気分にさせられることもまた事実。なんだかんだで厚生労働省、吉本興業に対する風当たりは強いものとなった。

ポスターからあふれ出る“死”のイメージ

 そもそも人生会議とは何なのか。厚労省によると「もしものときのために、あなたが望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと繰り返し話し合い、共有する取組」のこと。要するに、自分が死ぬときにどのような対応を望むのか、ちゃんと事前に話し合っておきましょうね、という啓発活動だ。こうした取り組みは国際的に「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」と呼ばれている。この認知度をより高め、普及させていくために厚労省はAPCの“愛称”の公募を行い、去年11月30日に“人生会議”という名称を使うことを選定・決定したそうだ。ちなみに、この11月30日は「いい看取り・看取られ」の意味で“人生会議の日”になったという。その感覚もちょっとどうかと思う。小籔氏はこの愛称“人生会議”の選定委員にもなっていた。

 問題のポスターは、病院着を着た小籔氏が鼻に酸素吸入チューブをつけた姿でベッドに横たわり、家族に自分の思いを伝えられなかった後悔を明かして「人生会議しとこ」と呼びかけている。コピーは以下の通り。

“まてまてまて
俺の人生ここで終わり?
大事なこと何にも伝えてなかったわ
それとおとん、俺が意識ないと思って
隣のベッドの人にずっと喋りかけてたけど
全然笑ってないやん
声は聞こえてるねん。
はっず!
病院でおとんの
すべった話
聞くなら
家で嫁と子どもと
ゆっくりしときたかったわ
ほんまええ加減にしいや
あーあ、もっと早く
言うといたら良かった!
こうなる前に、みんな
「人生会議」しとこ

命の危機が迫った時、
想いは正しく伝わらない”

 ポスターは全体的に青白い色調で、小籔氏の顔色も悪い。表情も奇妙に歪んでいる。体に重ねられた心電図のような波形は徐々に小さくなって平坦になり、小籔氏の手には家族らしき人の手が添えられている。もろに“死”のイメージを全面に打ち出していて、冒頭でも触れたように非常にインパクトの強いビジュアルだ。ただ、このネガティブで強烈な印象と比して、その“心の声”は妙に軽い。「死の床で父親のすべった話を聞かされて恥ずかしい」と言われたところで笑えるはずもなく、このバランスのいびつさが、ポスターを見た人になんとなく居心地の悪さを感じさせるのだろう。見た人にインパクトを与える意図があったのだとすれば、それは成功しているが、そのインパクトの強さゆえに多くの人から批判を浴びる結果になってしまった。

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