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NewsPicks後藤直義の「GHOST IN THE CHINA」

中国版「24時間戦えますか?」を支える大富豪たちのポッドキャスト

――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界最大の人口14億人を抱える中国では、国家と個人のデータが結びつき、歴史に類を見ないデジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。

今月のテクノロジー『996(ナインナインシックス)』

中国系のテクノロジー企業の創業者などに、苦労話や裏話などを聞き出すポッドキャスト番組(英語)。ホスト役は、シリコンバレーでも中国投資のプロとして名高いハンス・タン氏。2018年にスタートし、隔週で1本(60分)、新しいエピソードを配信している。日本でもSpotifyやAppleのポッドキャストアプリを通して楽しむことができる。

 あなたは中国で広がっている、996(ナインナインシックス)という言葉を知っているだろうか。

 これは朝の9時から、夜の9時まで、週6日間にわたって働く「中国式」の猛烈なハードワークのことを指す。何しろ14億人の人口を抱えており、すべてにつき競争、競争、競争という社会だ。とりわけテクノロジー業界では、こうした働き方を前提に、エリート社員が馬車馬のごとく働いている。

 世界で一流企業として注目されるようになった、中国の通信IT企業のファーウェイをはじめ、ショート動画「TikTok」で世を席巻しているバイトダンスや、ECサービス最大手のアリババまで、この「996文化」というのはどこまでも染み渡っている。

 いずれの会社もまだ創業一代目が健在であり、ゼロから会社を育ててきた遺伝子が残っているため、日本の「働き方改革」とは真逆のスタイルが事実上推奨されているわけだ。
 2016年に登場した996という単語は、中国の高度成長と、働けばお金持ちになれるという「チャイニーズドリーム」を象徴するポジティブな意味と同時に、あまりにも野蛮なサバイバル人生を意味するネガティブな意味も含んでいる。
 だから中国人のビジネスパーソンと996について雑談をすると、ジョークとして「いやいや、僕は007っすね」と返すのが定番になっている。もちろんこれはジェームズ・ボンド主演の、スパイ映画のことではない。これは0時から0時まで、つまり24時間体制で、一週間休みなく働いているよという意味になる。日本語に意訳すれば「もう働きすぎて、死にそうですね」といったところか。

 高度成長期の日本において、栄養ドリンクのリゲインのテレビCMで「24時間戦えますか?」というキャッチフレーズが一世を風靡したが、あの中国バージョンだと思ってもらえばいいだろう。

 しかし最近ではこの996をめぐって、中国のSNS上で炎上事件まで起きている。

 今年3月、世界最大級のエンジニアの開発プラットフォームであるギットハブ上で、こうした過酷な働き方を批判する「996.ICU」というプロジェクトが登場した。ICU(集中治療室)のアイコンを掲げて、ブラックと思われる中国企業を、名指しで批判し始めるムーブメントが起きたのだ。

 そうした批判について、億万長者になった創業者たちが、996を正当化するようなコメントを発信。それが“燃料”になってしまった。

「996で働けることは幸せなことだ。多くの企業や個人は、そんなことができる機会すらない。むしろ誇りに思うべきだ」(アリババ創業者、ジャック・マーの投稿)

 この投稿をめぐって、国民的ヒーローとして尊敬されているジャック・マーですら、釈明をする羽目になっている。若者世代からすれば、十分豊かな社会になった反面、お前が成功したときとは時代が違うんだよ、と言ったところだろうか。

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