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NewsPicks後藤直義の「GHOST IN THE CHINA」

スニーカー中毒者を量産する中国「ファッションアプリ」の裏事情

――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界最大の人口14億人を抱える中国では、国家と個人のデータが結びつき、歴史に類を見ないデジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。

今月のテクノロジー『毒(ドゥ)』 

「毒(ドゥ)」は、中国発のアプリで、スニーカーに特化した売買プラットフォーム。MAU(月間ユーザー)は800万人を超えており、運営企業の時価総額は約450億円にも達する。米国にもスニーカー転売市場の「StockX」が存在しており、すでにスニーカーの販売・転売はグローバル・ビジネスになっているが、人口14億人を抱える中国はその規模とお金の流入量で桁がちがう。

 一度聞いたら、忘れられない名前のメード・イン・チャイナのアプリがある。その名も「毒(ドゥ)」だ。

 これは現在、中国で大流行しているスニーカーを売買する専用プラットフォームだ。ここに毎月800万人ものユーザーが集まっては、まるで中毒者のように夢中になってスニーカーをあさっている。

 何せ人口14億人を抱えている中国だ。洗練されたファッションによって、自分は特別だとアピールするためには、手間やお金を惜しまない。

 中でも入手が難しい、希少な限定品のスニーカーは、若者がファッションでマウンティングするには格好のアイテムだ。中には1足あたり数十万円のプレミア価格で売買されている、レアシューズもある。

 自身も「毒」のヘビーユーザーであり、スニーカーが大好きだという北京在住の夏目英男さん(23)はこう語る。

「中国のスニーカー熱は、半端じゃありません。希少なスニーカーは高く転売できるため、多くの人が投資する“株式”のような存在になっています」
 例えば、ナイキの人気スニーカーである「エアジョーダン1」が、カリスマ的な人気を誇るストリートブランドのOFF-WHITE(オフホワイト)とコラボレーションしたことで生まれた1足。定価は1499元(約2万3700円)だが、現在の相場価格は2万8000元(約44万2300円)まで高騰している。

 また世界的なラッパーのカニエ・ウェストが、アディダスと一緒に作ったスニーカーブランド「YEEZY BOOST(イージーブースト)」も価格は急上昇。クラブなど暗い場所で光るようにデザインされている限定品は、1足あたり20万円前後の価格がついている。

「それでも、周囲から『あいつのスニーカーはカッコいいな』と言われたいじゃないですか(笑)。履いているスニーカーで、オシャレ度がわかりますから」(夏目氏)

 そこまで高価ではなくても、定価の1.5~2倍ほどのプレミア価格で売り買いするのは日常茶飯事だ。だから中国全土のスニーカーファンたちは、この毒をチェックして、1足4万円、5万円という金額を払って買うようになっている。

 人気があるのはナイキやイージーブースト、アディダス、コンバースなどの希少スニーカーに加えて、シュプリーム、オフホワイトなどのストリートブランドだ。

 ちなみにアプリ上では、こうした希少なスニーカーの取引価格が、どのように推移しているかも見ることができる。

 夏になれば、青色や白色などの爽やかなカラーリングの商品の値段が上がる。また希少スニーカーであっても、再販売されることが決まれば値段は下がる。まさに生の「スニーカー相場」だ。

 そしてバイヤーと呼ばれるプロたちは、こうした希少なスニーカーを大量に仕入れて、自社倉庫などに在庫を抱えており、それを高く売ることで利益を出しているわけだ。

 彼らは希少スニーカーを販売するナイキやアディダスなどの公式サイトの「抽選販売」を当てるため、ハッキングすれすれのソフトウェアを活用している業者なども発生。いたちごっこのような状況が続いているのだという。

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