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渋谷区職質問題をきっかけに知ってほしい──在日クルド人ドキュメンタリーが映し出す“日本の難民”

文=西森路代(にしもり・みちよ)

『バリバイ一家の願い~“クルド難民”家族の12年~』(2019年)

入国管理局ホームページより

 オザンの物語は、今まで知り得なかったクルド人の日本での生活を身近なものとして感じさせてくれるものだった。

 一方、ETV特集『バリバイ一家の願い~“クルド難民”家族の12年~』は、主に入管がどんな場所であり、いつそこに入ることになるかわからないクルド人の人々が、日々どんな気持ちで過ごしているのを少し知ることができる番組であった。

 主人公となるバリバイの一家は、2007年にトルコから日本にやってきた。住んでいた村が武力衝突に巻き込まれ、さらに父親が反政府組織への関与を疑われ、拷問されたからだ。

 一家は日本に来たときからずっと仮放免という立場で、二か月ごとにそれを更新している。次男は日本人女性と結婚して正規の在留資格を持ち、働くことも違法ではなくなったが、いまだ危険な解体業に従事している。ほとんどのクルド人は、「ルールだから」と働くことが許されず、日本の若い人がやらない危険な仕事に従事しているという。

 母親は手足のしびれなどがあるが、保険もなく、医療費はすべて全額負担している。末っ子は小学校に通っているが、なかなかうまく話せない。そして拷問により心を病んでいた父親は、家族がいつも集まっている公園で自ら命を絶った。長男は、父が亡くなったことを「半分は日本の入管のせい、半分はトルコのせい」と語る。

 父親の死からほどなくして四男は、県外に出るときに必要な外出許可を取ることを忘れたまま出かけたために、茨城県牛久市の入管(東日本入国管理センター)に収容された。入管では外の景色も見れず、決まったメニューが小窓に差し込まれるだけの食事をとって過ごした。何度も仮放免を求めるも受け入れられず、「死ぬことも考えるようになった」と語る。

 日本の入管では上限なく長期にわたって収容・拘禁が続き、自殺未遂が後を絶たず、国連の拷問禁止委員会などからも、たびたび勧告を受けているという。2018年に長期収容のインド人が自殺したことを覚えている人も多いだろう。

 2年後、ようやく収容が解かれる許可が出た四男。母親との再会に泣いて喜んだが、その後、収容中に受けた経験がトラウマとなり、夜中にうなされるようになり、抑うつ症状があると診断された。それでも四男さんは、「何があっても希望はなくさない」と語る。それこそが「生きる意味がある」と。彼の強い決意の中には、近所に友達もでき、サッカーが大好きな末っ子の弟が明るい未来を生きられるようにという希望の意味もあるように思えた。

 最後に番組ディレクターが一家の母親に「希望は?」と聞く。彼女は簡単には希望は語らない。「私たちは普通の生活がしたい。収容されることなく平和に暮らしたいだけ」という言葉が重い。

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