危機的状況下で、人はどんな行動をとる? 『新感染』『アイアムアヒーロー』に見る、日韓社会の特徴
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家で過ごす時間も増えた昨今、スカッとした映画や、心温まる映画を見たいという人もいれば、危機感のある作品を見て緊張感を持って目の前の事態に臨みたいという人もいるのでは(筆者は後者である)? 人間が窮地に陥ったとき、どんな行動をとる可能性があるのか、そしてそこから何を学べばいいのか、そんな目線で、日韓のパニック映画2本を見返してみたい。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』は、2016年7月に韓国で公開された作品だ。主人公は、ファンドマネジャーをしていて、仕事ばかりで家庭を顧みないソグ。彼は娘のスアンの誕生日に、以前と同じプレゼントを選んでしまうような父親で、そんなところに愛想を尽かされたのか、妻とは別居中だ。娘は誕生日に母親に会い釜山へ一人で行くと言いだしたため、ソグは仕方なくスアンと共にソウル発釜山行きの高速鉄道に乗る。しかし、列車の中には謎のウイルスに感染した乗客が乗っていて、ほかの乗客たちも、次第にそのウイルスに感染していくのだった……。
映画『82年生まれ、キム・ジヨン』にも出演するコン・ユが主人公のソグを演じているが、その主人公は決して窮地を救うヒーローというわけではなく、高速鉄道の中でも、自分と娘を守りたいがために、コネを使って自分たちだけ安全を確保しようとしたり、利己的な行動することもしばしばだ。そんな父親を見て、娘は「パパは自分のことばっかり」と「だからママはうちを出ていっちゃったんだ」と嘆くのだ。
ソグやスアンが電車の中で出会う屈強な男が、マ・ドンソク演じるサンファである。サンファは感染して狂暴化した乗客から逃げ、妊婦の妻と共に別の車両に駆け込もうとしているところを、ソグにドアを閉められたりもしてしまうのだが、やがて2人は協力して危機を脱するべく、格闘する。
感染していない乗客と感染した乗客の間には、当然のごとく分断が生まれる。感染者に襲われながらも、命からがら安全な車両に戻ろうとするソグたちに対して、感染していない乗客たちは、なんとしてでも自分たちの車両に入れまいとバリケードを作る。感染しただけで、いわれなき差別が生まれかねない今、こうした描写に以前よりもリアリティを感じて胸が痛む。
本作の中では、力がある者たち、つまり体格のいいソグやサンファは率先して戦い、力がない老人や女性、子どもたちはその分、譲り合うことで窮地を逃れようとする。そんな姿が一貫して描かれていた。一見、ジェンダー規範が固定化されているようだが、むしろ、韓国の儒教的な考えからこうした描写になっているように思えた。そして結局、本作の中では、利己的に生きている者は誰も助かることはないのだ。
本作についてネットで検索していたところ、「韓国人はジコチューだ」という内容の記事を見つけた。しかし、本作をあらためて見直してみると、人には誰にでも自己中心的なところはあって、もし自分がパニックに陥ったとしても、その悪しき面にのみ込まれないようにと言っているようにも思えた。主人公ですら聖人君子でないのは、誰にでも利己的に生きたいと思う心はあるからこそ、その利己的な部分に気づくことが大事だと言っているかのようであった。
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