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『家、ついて行ってイイですか?』「島つい」特別編! 父島へ流れ着いた元水族館勤務の25歳男性「海と魚が見たい、それだけです」

【沖縄】ある事情で“よそ者”扱いされてきた男性が在来種保護に取り組む理由

 沖縄・那覇でスタッフが出会ったのは、28歳の男性・翔生さん。アメリカ人の父と日本人の母を両親に持つダブル(ハーフ)だ。スタッフはタクシーで彼の家について行くことにする。しかし、翔生さんが手を上げているのにタクシーがなかなか停まらない。

「これはハーフあるあるです。顔見て外人だと思うと、対応できない運転手は“やべーっ”ってなる」(翔生さん)

 外国人が多い沖縄なのに……? と思ったが、「沖縄だからそうなのかも」と思い直した。戦争で嫌な思いをした人がこの地にはいて、そんな親類を持つ人もこの地には多い。だから、外国人差別が存在するのかもしれない。顔つきがアメリカ人寄りな彼は、敬遠されることがあった。しかも、翔生さんの幼少期はハーフが良く思われない時代だったそうだ。だから、大学に進学したいとは思えず、米軍に入隊した。

「たぶん、初じゃないかな? 沖縄で育って米兵になったのは(笑)」(翔生さん)

 17~18歳で初めてアメリカに住み、軍隊に入ってからはアフガニスタンに勤務したそうだ。

「向こう(米軍)でも外人扱い、故郷(沖縄)でも外人扱い。ずっと苦しい思いをしました。『じゃあ、俺は何人なんだ?』と」(翔生さん)

 翔生さんが住んでいるのは家賃56,000円の2LDK。軍隊には学費と生活費を支援する制度があるのだ。部屋の冷凍庫を開けると、なぜかたくさんのヤギ肉が保存してあった。部屋の片隅にはヤギのぬいぐるみもあるし、本棚にはヤギにまつわる書籍がたくさん収まっている。

「僕、ヤギ飼いなんです。『アルプスの少女ハイジ』のペーターっているじゃないですか? あれは同業者(笑)」(翔生さん)

 翔生さんが育てているのは琉球ヤギという品種。約500年前の琉球王朝時代から沖縄で生きてきた在来種だ。しかし戦後、海外から外来種のヤギがたくさんやって来て、琉球ヤギは激減した。外来種と比べてサイズが小さく、肉があまりない琉球ヤギ。畜産物としての価値が低いとされ、見放されてしまったのだ。

 翔生さんは在来種保護に執着し、現在は9匹のヤギを飼育している。彼が育てる琉球ヤギを見ると、奇形の子がいることに気付く。ツノが自分の頭の方向に曲がり、切ってあげないと後頭部に刺さってしまいそうである。近親交配や雑種化が原因だ。

「これ以上切ると神経に入ってきて痛がるんでやめてますけど、本人はキツイと思いますよ。せめぎ合って、ツノがくっついてるので」(翔生さん)

 細心の注意と思いやりが必要ということ。ちなみに、ヤギ飼いは儲かる仕事ではない。

「(金銭的に苦しいのは)常にです。こんなこと(在来種保護)をやっても誰からも褒められるわけでもないし、今のところ見向きもしてもらえてない。でも、500年の歴史が終わるってイヤじゃないですか」(翔生さん)

 アメリカでも沖縄でも外国人扱いされてきた翔生さん。どこへ行ってもよそ者とされた青年が、在来種のヤギの保護活動をしている。彼の境遇と今の仕事が、根底で繋がっている気がしてならない。生い立ちに悩み、自身のアイデンティティ確立のために在来種を守る生き方を選んだ。強い気概を感じるし、どこか切なさも感じてしまう。そして、応援したいと思う。この放送によって在来種保護活動が広く知れ渡り、活動を援助する救いの手が彼に差し伸べられることを祈りたい。

 今回登場したのは、人生を生きたいように生き、それを現実化する行動力を持った3人だった。芯がある彼らの生き方に感動した。良い回だったと思う。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2020/08/26 17:30
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