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『家、ついて行ってイイですか?』南正人の生き様と死に様を偶然にも記録した、日本ロック史の貴重な資料

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南正人「START AGAIN / スタートアゲイン」

『家、ついて行ってイイですか?』(テレビ東京系)は、街行く市井の人の飾り気ない生活を切り取るコンセプトが人気の同局の看板番組だ。しかし、最近は別の価値も備わり始めている。1月6日放送のイノマー密着をはじめとし、日本の音楽史の貴重な映像を残す番組になってきたのだ。

 3月10日放送回のゲストは泉谷しげると玉井詩織(ももいろクローバーZ)。実は、この座組には意味があった。

下北沢で声を掛けたのは、泉谷しげるも尊敬するレジェンドだった!

 2020年7月、下北沢で番組スタッフが声を掛けたのは麻雀帰りだという76歳の男性。音楽関係の仕事に就いているらしい。「家、ついて行ってイイですか?」と申し出ると承諾してくれたので、喜多見にあるという家へ向かった。タクシーの車中でスタッフによるインタビューが敢行される。お名前を聞くと、男性は「南正人です」と自己紹介をした。その瞬間、VTRを見る泉谷が声を上げた。

「あっ! 正人かよ? (南は)先輩で……」(泉谷)

 下北沢で飲んでいると油断ならない。飲み屋で何気なく会話した初対面の人が、実は有名なミュージシャンや喜劇人だったりすることが結構あるのだ。今回は、まさにそのパターンだ。

 南さんのご自宅にお邪魔すると、そこは4階建てのビルだった。40年連れ添った奥さんに70歳で離婚を切り出され、現在は両親が建てたビルの地下室で生活しているという。ちなみに、彼の弟さんはビルの2階に住んでいるらしい。

 それにしても、凄い部屋である。土足OK。整理はされておらず、雑然としている。マンガ『刃牙』のコミックスが置いてあったり、気ままに生活しているようだ。そんな中、棚に無造作に置いてあったのは『回帰線』なるタイトルのCDである。71年に彼がリリースしたファーストアルバムだ。

「名作中の名作ですよ。歌が素晴らしい! このアルバムで勉強しましたねえ。もう、尊敬するミュージシャンですよ」(泉谷)

 南正人はレジェンドだ。1970年代にメッセージ性の強い曲でフォーク・ロックの草創期を牽引した先駆者で、『回帰線』には細野晴臣が所属したバンド、キャラメル・ママも参加している。南から影響を受けたミュージシャンと言えば、泉谷と忌野清志郎の名前が真っ先に挙がる。若き日の南のライブ映像を見ると、やはり曲も歌い方も泉谷は南に似ているのだ。また、70年代ですでにレゲエの影響を受け、取り入れているのも特筆に値する。そんな彼も、今は実家の地下室を拠点にマイペースな活動を続けているようだ。

「俺を引き抜いたプロダクションのディレクターがいて、テレビに出され始めたわけ。堅っ苦しいんだよ、テレビ局ってさ。終わったらみんなでね、『カメラに向かって手を振ってください』だとかさ、『冗談じゃないよ』って俺なんかそっぽ向いちゃってさ。俺はテレビに出て有名になりたくてやってる音楽じゃなくてさ、社会と共に生きてる歌を歌わなくちゃダメだって思ってさ」

 ある意味、南と泉谷は対照的な生き方に見える。そんな南にも家庭を持っている時期があった。6年前に離婚した理由は以下だ。

「まあ、旦那は前科者でさ。ヘロインで捕まって。俺が。ムショ暮らししてるし、世間体もあるだろうけど。奥さんとちょっと揉めて『別れて』って言われたのが最初。それで、離婚ってことになったんですよ」

 ドラッグ歴について飄々と語る本人が言う通り、南さんは1980年にヘロインや覚せい剤を使用した罪で逮捕された。また、『回帰線』のラスト曲「果てしない流れに咲く胸いっぱいの愛」は全員に大麻を回し、ラリった状態で録音されたというエピソードが有名だ。自由人ほど独身率が高くなるのは避けられない運命である。でも、子どもとの仲は良好。現在は、ドラマーの息子さんと同じバンドで活動しているらしい。

 この番組のいいところは、大物と遭遇してもスタッフが無知なため怖いもの知らずでグイグイお願いできるところだ。「ちょっと、生で(曲を)聴きたいんですけど」というスタッフのリクエストに応え、南さんはギターで『スタート・アゲイン』を弾き語りしてくれた。浅川マキをゲストに迎え制作された名曲である。同曲にはこんな歌詞がある。

「あー、どうしてこんなになっちまったんだい 俺は帰ってゆくぜ 俺の生き方に」

――いい歌ですね。
南 「うん、いい歌多いよ。まだまだ! アゲイン、アゲイン、アゲイン。何度も何度も立ち上がっていこうっていう。どの生き方も俺を満足させることはできない。俺は俺の生き方に戻っていくと。俺の道を行くのが一番だ」
――今、76歳。何歳まで生きたいっていうのはあるんですか?
南 「いくらでも生きるよ。地球が断末魔上げるのを見届けてやろうと思ってるから」

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