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CVC東芝買収断念で日本の安全保障が救われた!? 海外投資家の草刈り場になった日本を示した“東芝劇場”

物言う株主が突き崩す従来の予定調和

 伝統的に日本の企業統治システムは、ステークホルダー間の相互利益と良好な関係性を重視してきた。その中で株主はいわゆる「物言わぬ」存在として重宝され、決して取締役会を牽制する存在ではなかった。しかしながら、東芝の例を見るまでもなく、海外からの投資、“物言う株主”が増えるにつけ、株主の力は日本市場において日に日に高まってきている。株主が取締役会の意思決定に対し、物言う姿勢を明確にするケースが確実に増えてきている。

 米国とヨーロッパがこれまでの“物言う株主”の舞台であったが、昨今ではアジアのシェアも高まっている。その中でも日本は最も魅力的な投資先市場の一つとして注目度が急速に増しているようだ。

 英紙「フィナンシャル・タイムズ」(2020年2月3日付電子版)によると、19年、日本では75件のアクティビスト「イベント」(株主による経営陣への正式な要求)が行われ、45億米ドルの資本が投入された。このうち19のアクティビストキャンペーンが実際に開始された。この数字は4年前の集計の約5倍になる。

 東芝の場合、約63%が外国人株主であるという特異な株主構成に加え、15年の粉飾決算から始まった一連の不祥事を顧みれば、あくまで例外的な事例と考えたくなる。

 しかしながら、日本を代表する、かつては経団連会長を輩出した名門企業においてこのような形で、“物言う株主”側に軍配が上がったことに目を背けるべきではないだろう。

 いい悪いは別にして、今回の“物言う株主”たちの勝利は間違いなく日本市場におけるアクティビズムの流れを後押しするものとなるからだ。日本市場を虎視眈々と狙うアクティビスト・ファンドにとって、今回の東芝のケースは二匹目、三匹目のドジョウを狙う彼らにとっての絶好の成功体験となるはずだ。沈む泥船、東芝は自らの沈没と引き換えに、日本における今後のアクティビスト(物言う株主)からの予想される攻撃、脅威を示してくれた。

姿を変えて再び日本に舞い戻った“物言う株主”たち

 思い返せば、00年代に村上ファンドが登場した際、日本の規制当局とメディアはそれを欧米的な拝金株主資本主義の「ハゲタカ、ハイエナに他ならない」と糾弾し、市場から排除しようとした。しかし今回、東芝に臨時株主総会を開かせ、自分たちの提案をのませたエフィッシモの創業者3名は、いずれも村上ファンド出身だ。10年の歳月はハゲタカと呼ばれた彼らを再び表舞台に引き上げた。

 勿論、この間にアクティビスト(“物言う株主”)たちの行動パターンも大きく変容した。

 10年前の“物言う株主”はホリエモン(堀江貴文)に代表される、劇場型で無理な要求を企業に突きつける「市場の問題児」だった。そんな問題児たちも歳月を経て大人になったのか、今や、より経済合理性に則っており且つ責任のある提案をするようになった。いわゆるESGと呼ばれる、環境・社会・ガバナンス要素も考慮した社会的責任投資のスタイルもこれに加わった。

 最近は“物言う株主”が率いるファンドには、戦略コンサルティング・ファームや投資銀行などのトップ企業エリート層からの人材が集まるようになってきている。野武士や浪人たちを集めたような、かつての得体が知れなかったファンドとは様変わりしている。こうした人材層の変化が功を奏しているのか、アクティビストは単なる市場の問題児から、「理にかなったマーケット・アクター」としての立ち位置を確保しつつある。

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