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珍そば・奇そばに走る「富士そば」の店長たち 今後は「マニアの方々には少し物足りないラインナップに…」

文=名嘉山直哉(なかやま・なおや)

 特大のから揚げが乗った「ビッククリスピーおろしそば」、まろやかなコクがあとをひく「明太豆乳うどん」、しびれる辛さがたまらない「しびから火鍋つけ麺」――。これらはすべて立ち食いそばチェーン「名代 富士そば」で提供されていたメニューである。

 変わり種の多くは、店長自らが考案した店舗限定メニュー。富士そばは、店長の裁量でメニューを開発できるので、ときには目を疑うような珍そば・奇そばが登場することも。過去に登場したその一部を蔵出しして紹介する(現在は終売)。

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赤・白・緑の色彩がイタリア国旗を彷彿とさせる「蕎麦リアン」

 明治通り店は、果敢にもそばとイタリアンの融合に挑戦。トマトピューレ・サワークリーム・バジルソースを和えた蒸し鶏で、イタリア国旗を再現した「蕎麦リアン」を生み出した。一見異質な組み合わせだが、トマトやサワークリームのほどよい酸味が冷たいそばともよく合い、サラダ感覚でペロリといける。

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肝心の冷製スープが脇役になってしまった「ヴィシソワーズそば」

 ジャガイモの冷製スープ「ヴィシソワーズ」を豪快にぶっかけたのが、いまはなき八重洲店の「ヴィシソワーズそば」だ。単体であれば美味しくいただける冷製スープも、醤油が際立ったつゆや濃厚な温玉には味が負けてしまいアンバランスな仕上がりに。なお現在は別の店舗にてつけそばスタイルで提供されている。

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「富士金時そば」。店長いわく「食べ方はお客さんにゆだねます」

 何を思ったのか、三光町店は昔ながらの氷菓に注目。抹茶で色をつけた大根おろしや本物のあんこ、白玉を使って、見事、そばの上に「宇治金時」を再現してみせた。名付けて「富士金時そば」。あんこの甘さをのぞけば、味は「冷やしおろしそば」といったところ。完全な出オチだったが、パンドラの箱に手をかけたことに違いはない。

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立ち食いそばの歴史を塗り替える新機軸「燻かけそば」

 北千住東口店は燻製したつゆを使った「燻かけそば」で、定番商品「かけそば」のアップデートを図った。つゆは燻製チップで香りづけする手の込みようで、提供期間中は店内が富士そばらしからぬ薫香でいっぱいに。

富士そば広報担当が語る「原点回帰」

 ともすれば店長の“暴走”にも見える、店舗限定メニュー。開発にあたって「NG」はないのだろうか。富士そばを運営するダイタンホールディングスの広報担当・工藤寛顕氏は、ざっくばらんにこう打ち明ける。

「鮮度が落ちやすい生ものを使っていなければ、設定している原価率を超えないかぎりなんでもあり。それ以上の厳しいルールを設ける必要もないと思っています。だから、店長たちは客層にあったメニューを考えたり、自分が食べてみたいメニューを開発したりできるんです」

 最終的には同社社長・丹有樹氏がメニューのチェックを行うが、ほとんどの提案が採用される。

 メニュー開発の背景には店長たちの野心や功名心が見え隠れする。ひとつの到達点ともいえるのが「ホームラン賞」だ。これは、ヒットした限定メニューに贈られる社内表彰制度。栄えある賞に輝けば、グランドメニューとして全店舗で提供されるほか、開発者には賞金最大10万円が贈答される。いまや富士そばの代名詞となった「肉富士そば」「カレーかつ丼」も、実はかつてのホームラン賞なのだ。

「いつかホームラン賞を!」との思いが、富士そばの店長たちを前例のない珍そば・奇そばに走らせるーー。店長たちが織りなす人間ドラマに思いを馳せるのも限定メニューの醍醐味なのだ。

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売り出し中のワンコインメニュー、ミニメンチカツ丼セット

 しかし、そんな人間ドラマが見られるのも今後は少なくなるかもしれない。コロナ禍で離れていった客を呼び戻すためには、珍そば・奇そばよりも万人にウケるメニューが求められるからだという。

「運営側としては、当面は全店舗共通のワンコインメニューを充実させていく考えです。
 安くて気軽に楽しめる、これは本来の立ち食いそば店への原点回帰ともいえます。限定メニューは今後も継続されますが、店長も慎重にならざるをえないでしょう。マニアの方々にはちょっと物足りないラインナップになるかもしれませんね」(工藤氏)

 不安定な世の中で揺れ動く限定メニューの存在意義。逆境をくつがえす、ウルトラCの一杯が待たれるところだ。

名嘉山直哉(なかやま・なおや)

名嘉山直哉(なかやま・なおや)

フリーライター。2014年から「名代 富士そば」ウォッチをはじめ、富士そばライターを名乗る。2015年と2021年に富士そば全店制覇を達成。

Twitter:@l_f_nakayama

富士そば原理主義

最終更新:2021/05/08 12:00
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