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「土偶は植物のフィギュアだった」独立研究者が発表した新説のルーツと反発を招いた本当の理由

文=飯田一史(いいだ・いちし)

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青森県で出土した遮光器土偶。(「東京国立博物館ホームページ」より)

 縄文時代に作られた土偶については「女性をかたどったもの」といわれてきたが、「土偶は縄文時代の食用植物をかたどったフィギュア」――具体的かつ写実的に、植物に手と足を付けて「植物の人体化」をした像であるという仮説を提唱する新刊『土偶を読む 130年間解かれなかった縄文神話の謎』(晶文社)が話題だ。NHKニュースで取り上げられ、いとうせいこうらが絶賛するなどしている。

 いわく、椎塚土偶はハマグリの貝殻や中身に、みみずく土偶は二枚貝のイタボガキに、無数の穴が施された刺突紋土偶はヒエの穂のつぶつぶに似ている――。栗や貝の頭部を持つゆるキャラをつくるようなやり方で縄文人は土偶の形を考案していったのだ、というユニークな見解が示されている。

 そんな本の著者である独立研究者の竹倉史人氏とは、一体どんな人物なのか。はたまた発表するや否や巻き起こっている反論・批判をどうとらえているのか――。竹倉氏本人に訊いた。

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竹倉史人著『土偶を読む 130年間解かれなかった縄文神話の謎』(晶文社)

研究内容や方法論もオリジナル

――竹倉さんの土偶研究に至るまでのバックグラウンドを教えてください。

竹倉 私は3人兄弟の末っ子で、親も「自由に生きろ」的なスタンスだったこともあって、結構はちゃめちゃキャリアです。慶應義塾高校から慶應大学法学部にエスカレーターで行ったけれども、面白くなくて辞めまして。一度、医学部に行こうかなと思ったものの、今までやっていなかったことをやってみようと結局、美大(武蔵野美術大学)に行きました。楽しかったのですが、3年生になるときに留年したのと、いろいろ新しいことは学べたかなという思いもあり、中退しました。最初は就職しようと思っていたのですが、ひょんなことから試しに東京大学を受けてみたところ、運良く合格しました。もちろん受験勉強はきちんとしました(笑)。そして、宗教に興味が出てきたので、宗教学科に進学して卒業。最初はそのまま大学院に行こうかなとも思ったのですが、アカデミックな空気が自分にはあまり合わなくて。数学が好きだったこともあって、卒業後は医学部受験予備校とか家庭教師で数学講師をやって生計を立てていました。それで30歳を過ぎた頃、縁があり、東京工業大学の上田紀行先生の研究室に入れていただいて、文化人類学専攻で輪廻転生に関する修士論文を書きました。これはその後『輪廻転生 〈私〉をつなぐ生まれ変わりの物語』(講談社現代新書)という本になっています。もうこれで学問はいいかなと思ったんですが、先生が「博士に行けば?」と誘ってくださったこともあって。土偶に出会ったのは東工大の博士課程にいるときでした。

 土偶の研究は博士課程を満期退学してからも続けました。私は独立研究者で、しかも研究内容や方法論もオリジナルなので、研究助成金などもらえない。全部自腹でやるしかないので、引き続き数学講師などをしながら、この本に至る研究を進めました。ちなみに、この本はこれから東工大に博士論文として提出する予定です。

「考古学」のために土偶は作られていない

――提唱されているのは非常に斬新な仮説ですが、竹倉さんは自説がどう受け入れられてほしいと思っていますか? 学術的に刷新されることが目標ですか? それとも世間に受け入れられればいいと?

竹倉 今回出した仮説には説得力があると思っているので、その検証が社会的になされていけばいいなと。土偶は小学生が見たって「人間じゃないでしょ」と思う形をしているのに、「人間の形をデフォルメしている」などの説が通説になっていて、これまでほとんどの人がそれについて疑ってこなかったという実状があります。そこに風穴が空けばいいかなと。

 今回の本は、学会で発表し、査読付きの学術論文を出し、偉い先生たちの指導を受けて初めて書籍にする……というアカデミアの通常のプロセスをすっ飛ばして、一般向けの書籍として、しかものっけから「解明した!」と宣言する大風呂敷を広げるスタイルでの発表となったので、「考古学の専門家でもない人間が何を言うのか」と考古学ファン、縄文ファンからは厳しいコメントが投げかけられています。一方で、専門家である研究者の方からは、それほど否定的なコメントは出されていない印象です。とはいえ正直、これほど反響があるのかと驚きでしたが、もう少し落ち着いた後で、私の新説の妥当性について、さまざまな専門的な見地から精査され、そこに矛盾がないか検証がなされていくのかなと。独立研究者が自説を発表し、注目してもらえることのメリットがそこにあると思います。

 仮説というのは、ひとつの考えでどれだけの事象が説明できるかという一般化能力が重要ですが、もっとも多くの人が納得する合理的な説明がその時代と定説となるべきです。本書で展開されている仮説に異論がある方がいるとしたら、ぜひ公開討論で討議したいところです。多くの人の納得、という点からいくと、公開討論に参加してくれた方にジャッジしてもらってもよいかもしれません。今SNSなどで出ている批判やコメントはほぼ反例であったり、論証過程の瑕疵についての「指摘」がほとんどで、後でも述べますが学説史を踏まえて「では土偶の正体とは何か」について真っ向から答えるという「反論」を、誰も述べてくれていません。研究を前に進めるという観点からすると、少し寂しいところでもあります。

――ただ、学者からすると「学会や学会誌こそが討論に値するリングだろう」という話になるとも思うのですが。

竹倉 確かに、異種格闘技戦もどちらのルールを採用するかで揉めますからね。そもそも私は、土偶に関する議論が専門家による専門家のためのものになっている点にも問題があると思っています。今回の本を論文ではなく商業出版の一般書として出したことの意図もそこにあります。縄文人は「考古学」という研究ジャンルのために土偶を作ってるわけじゃないですからね。専門家だけで議論するのではなくて、一般の人も含めてどれがが一番腑に落ちる学説なのかを世に問いたいと考えています。

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