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北川景子×永山瑛太『リコカツ』最終回に込められた夫婦・家族への温かなエール

『リコカツ』公式サイトより

 「夫婦の形は、夫婦の数だけある」。6月18日に最終回を迎えた『リコカツ』(TBS系)を通じ、北川景子永山瑛太らが令和の時代の夫婦の在り方を届けてくれた。

 夫婦共働きが当たり前になった今、夫婦や家族の形に“こうあるべき”という決まりごとはなく、正解もない。育った環境も価値観もまったく違う他人同士が、紙切れ一枚で簡単に夫婦になる。だが、それは夫婦の始まりに過ぎず、2人だけの夫婦の形を一緒に探りながら、時にぶつかり合いながら作り上げ、夫婦になっていく。

 運命的な出会いで恋に落ち、“交際0日婚”を果たした咲(北川)と紘一(永山)。初めは自分の考えを相手に押し付けるばかりの2人だった。特に紘一は“男は女を守るもの、女は男を支えるもの”という昭和的な考えの持ち主で、咲もそんな紘一に反発し、自分の考えや価値観を曲げようとはしなかった。当然、うまくいくはずもなく、一度は離婚してしまった2人。夫婦が他人に戻るのも、紙切れ一枚だ。

 結局、咲と紘一にとっての離婚活動=リコカツとは、離婚を通じぶつかり合いながら互いを知り、互いを想い合い、自分の気持ちに向き合った末に想いを相手に伝える、2人の関係の再構築に他ならなかった。その過程のなかで2人は徐々に変化し、最終回では2人の道を見つけ出した。仕事と家庭の両立に悩む人は多いだろう。3年間のパリ研修にも行きたい、紘一とも一緒にいたい、子どもも欲しい、30代の咲の悩みに共感する女性視聴者も多かった。
 
 紘一が仕事を辞めてパリについていく、咲がパリに行かずに日本で仕事を続ける、別れて別々の道を歩く、どの道も間違いではない。2人は話し合い、どれも諦めることなく3年間パリと日本、遠距離での暮らしを選んだ。以前の2人には決定的に足りていなかった、問題に対して話し合うこと、がようやくできたのだった。

 夫婦にとって話し合うことがいかに大切か、繰り返し『リコカツ』は示してきた。紘一の母も夫に「言葉にしないと分からない、伝わらない」と言うシーンも印象的だった。ただ話すのではなく、とことん話し合うこと、だ。ともすれば人は思いを伝えているつもりが、つい取り繕ってしまうもの。咲もパリ行きを諦めるところだったが、紘一に本当の気持ちを知りたいと言われようやく本音が出た。本当の気持ちを隠して我慢していたら、いつか後悔する日が来たかもしれない。離れている3年の間にも、2人はビデオ通話でたくさん話をし、さまざまな2人のルールが出来上がっていた。壁に貼られた数々の付箋には「自分の気持ちは声に出して伝える」や「喧嘩した時は古い話を持ち込まない」ということから「洋服の畳み方に文句を言わない」「お互いのファッションに口を出さない」といった細かなことまで。交際ゼロ日婚だった2人にとって、大切な積み重ねの時間となっていた。

 さらに、夫婦だけでなく、家族の形もまたそれぞれだ。最終回の咲の母親が咲に、身勝手なママでごめんと謝るシーン。自由に楽しく生きたいと思うのと同時に、いい母親ではない罪悪感を抱えてきた胸の内を明かした。多様な生き方が選べるようになるなかで、それは多くの母親が抱えている葛藤かもしれない。咲は完璧な母親なんていない、そのままでいい、とそんな母親を受け入れる。

 変わりゆく時代に、変わりゆく夫婦と家族の形。離婚は特別なものでなく、不幸でもなく新たな可能性へのスタートだ。ただ変わらないのは、互いを思いやり、話し合い、受け入れ、認め合うこと、その積み重ねが人と人を結ぶ絆となっていくのだということ。熟年離婚した咲と紘一それぞれの両親たちも、新しい関係をもう一度作り直すことを決めた。視聴者の嫌われ役だった“筑前煮女”こと一ノ瀬(田辺桃子)も、性懲りもなく筑前煮を大量に作りすぎたと同僚たちに振る舞うシーンもあり、登場人物に込められた制作陣の愛が感じられた。そんなたくさんのほっこりが詰まった、『リコカツ』らしい希望に満ちた大団円であった。

■番組情報
金曜ドラマ『リコカツ』
TBS系・金曜午後10時~
出演:北川景子、永山瑛太、高橋光臣、白洲 迅、宮崎美子、酒向 芳、三石琴乃、平田満 ほか脚本:泉澤陽子
演出:坪井敏雄、鈴木早苗、韓 哲、小牧 桜
プロデューサー:植田博樹、吉藤芽衣
音楽:米津玄師
製作:TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/rikokatsu_tbs/

南沢けい子(ライター)

愛知県名古屋市生まれの食いしん坊ライター。休日はNetflixやAmazonプライムを駆使して邦画や洋画、海外ドラマを観まくるインドア派だが、Netflixオリジナルドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』に影響されて20インチのミニベロを購入。主人公の男の子たちになった気分でサイクリングロードを走るのが最近の楽しみ。

みなみさわけいこ

最終更新:2021/06/19 21:41
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