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アンジェリーナ・ジョリーが暗殺者と山火事から子どもを守る映画『モンタナの目撃者』が圧倒的に面白い

原題の「Those Who Wish Me Dead」の意味とは?

アンジェリーナ・ジョリーが暗殺者と山火事から子どもを守る映画『モンタナの目撃者』が圧倒的に面白いの画像2
© 2021Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

  本作の原題および原作小説のタイトルは「Those Who Wish Me Dead(私の死を願う者たち)」だ。その刺激的なタイトルは「人間性についての挑戦的なテーマ」と、その背景にある「燃え盛る炎という自然現象」、この2つの世界が衝突し合って生まれたのだという。前述したように、劇中ではアンジー演じる主人公の「トラウマと罪悪感」が描かれており、その「贖罪」を求める人間としてのあり方、そして何としてでも生きようとする人間の気高さが、このタイトルに逆説的に込められているのだろう。

 また、タイトルの「Those」は、ストレートに暗殺者コンビを示しているようにも思う。本作の脚本も手がけたテイラー・シェリダン監督自身、本作の悪役はあくまで暗殺者コンビであり、一方で炎は「ただ存在しているだけ」 「初めこそ悪意をもって使われるが、その後は必然的に、誰の手にも負えなくなってしまう」と語っている。殺意を持つ者(死を願う者)はあくまで人間であり、炎は「制御できない自然現象」にすぎないのだろう。

 その上でテイラー・シェリダン監督は「法の支配が自然の法則に道を譲る境界線に惹き付けられた」と、本作のサスペンスの面白さについても語っている。法の正義など届かない山中で、暗殺者コンビの暴力による支配が描かれるが、その後は山火事という自然現象がその人間の支配をも凌駕して襲ってくる。そこにこそ物語のダイナミズムもある内容だったのだ。

 そして、本作を観た方は、そのテイラー・シェリダンという名前をぜひ覚えて帰ってほしい。『ボーダーライン』(2015)の脚本として参加した他、Netflix映画『最後の追跡』(2016)はアカデミー脚本賞にノミネートされ、監督と脚本を手がけた2017年の『ウインド・リバー』も各方面から絶賛を浴びた。どれを観ても、シンプルにハラハラドキドキできる内容でありながら、全く予定調和にならない大胆な構成のアイデアも効いている、サスペンスの名手であることがきっとわかるはず。今回の『モンタナの目撃者』も「テイラー・シェリダンに外れなし」であることを改めて思い知らされた。

アンジェリーナ・ジョリーが暗殺者と山火事から子どもを守る映画『モンタナの目撃者』が圧倒的に面白いの画像3『モンタナの目撃者』
9月3日(金)全国ロードショー ■配給:ワーナー・ブラザース映画
■監督・脚本:テイラー・シェリダン(『最後の追跡』『ウインド・リバー』)
■脚本:チャールズ・リービット ■出演:アンジェリーナ・ジョリー、ニコラス・ホルト、フィン・リトル、エイダン・ギレン、メディナ・センゴア、ジョン・バーンサル

© 2021Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

ヒナタカ(映画ライター)

「ねとらぼ」「cinemas PLUS」「女子SPA!」「All About」などで執筆中の雑食系映画ライター。オールタイムベスト映画は『アイの歌声を聴かせて』。

Twitter:@HinatakaJeF

ひなたか

最終更新:2021/09/17 13:23
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