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ANARCHYが示した“俺”イズム

邪魔なノイズは抑止する ANARCHYが歩む新たな物語

独立心が生んだ1%からの離脱劇

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「ANARCHYはここからもう1回始まる。イチからスタートする気持ちで」と決意を新たにした表情に、不安や迷いは感じられなかった。 (写真/cherry chill will.)

――去る4月上旬、自身のインスタグラムで所属レーベル/事務所である〈1% | ONEPERCENT〉(以下、1%)との決別をにおわせるストーリーズを公開していましたが、実際何が起きたのでしょうか?

ANARCHY 長年担当してくれていたパートナーとのすれ違いと価値観の相違っすね。僕の中にずっと「自分で挑戦したい気持ち」というのがあったけど、曲が完成したら全部任せっきりにしてた。極端に言ってしまうと、曲やアルバムのタイトルすら自分で決めたことがなかったくらい。それは信頼と同時に甘えでもあるなって。なので、今回はアルバムタイトルから曲タイトル、ミュージックビデオの構成、ミックススタジオからマスタリングまで、すべて自分で決めました。ただ、R-RATED RECORDS【編註:05年に設立されたレーベル。ANARCHYをはじめ、SMITH-CNやDJ 8MANらが所属】や1%の力がなかったら、今の自分にはたどり着けてなかったので、感謝しかない。

――長年を共にしたパートナーの元を離れてみて感じたことは?

ANARCHY 正直ひとりになって「あれ、どうしよう。オファーきたけど、何もできへん」ってなりましたけど、ジャッジするのは自分なんで。気持ちだけでは何もできないし、周囲の意見に助けてもらいつつ、一つひとつを後悔なくこなしていかなきゃいけない。とにかく、誰かに文句を垂れるんじゃなく、自分でジャッジしたことで自分を責める環境を作らないと、何も進まない。「自分のケツは自分で拭く」って言ったらカッコがつく言い方だけど、単純に言えば僕のわがままでもある。誰にもケチつけられず、自分の好きなようにやる。実際、ヒップホップの文化にはレーベルありきで聴く楽しさもあるけど、僕が1%で曲を出そうが、どこからリリースしようが、聴く側としてはレーベルよりその人の音楽が聴きたいはずなんで。

――ほぼ離脱と同時に新たに〈THE NEVER SURRENDERS〉という名称のチームが始動しましたが、これはどのような組織になるんですか?

ANARCHY もともと存在するバンドの名前なんだけど、いま一番好きな言葉なんですよ。組織ってよりか、クリエイト集団みたいなもんす。誰かと契約するとかはまだ考えてないけど、面白い若手の曲を単発でリリースしてもいいし、それこそ映画も作りたいと思ってます。それをやる場所、って感じですね。

――そういうマインドも踏まえ、今現在のANARCHYくん自身が理想とするアーティスト像というのは?

ANARCHY 最近、ヒップホップのカルチャーを意識するようになったんですよ。僕がヒップホップというカルチャーのスパイラルに存在していて、「若い子からオモロいことを吸収しよう。先輩から教えてもらうことなんかないんちゃうか」とか思ってたんですよ、30代前半の頃は。そのスパイラルは螺旋階段になっていて、僕の上にはカルチャーを教えてくれた先輩たちがいて、さらにその上には先輩たちに教えた人たちがいる。僕が若い世代から教えてもらうものもあるけど、自分は次の世代の連中――それこそWILYWNKAやBAD HOPとか――に何かを教えて、それを彼らが下の世代に伝えてくれるポジションにいるんじゃないか、って自覚するようになったんですよ。なので、文句の言われない音楽を作って、発する言葉にも力を持ってこそ理想、と言えるかもしれないですね。かっこいい若手はいっぱいいると思うんですけど、そのカルチャーを僕が伝えていかないと、ヒップホップはまた死ぬんで。

――誤解を恐れずに言うと、正直そうした考えは持たない人間だと思ってました。

ANARCHY もともとあったかどうかはわからないんですよ。だから、芽生えてきた、って言うのが正解なんかな。上の教えがあったからANARCHYは存在するんだなとも思えてきて。今の若いラッパーたちを見て強く感じたんですよ。「あ、めっちゃいい時代がきてる」と感じるのと同時に、「おまえらが壊すなよ」って思った。

――スパイラルの中に存在するANARCHYは、これまで下の世代へは言葉にせず背中で語ってきたが、背中だけでは伝わらない不安があった、ということですよね。

ANARCHY 1%を離れて自分を客観視できるようになったのと同じで、カルチャーに対してもそう思えるようになったのかもしれないですね。昔はヒップホップ好きがヒップホップを聴いていたけど、今はそうじゃない。フリースタイルとか違う角度からヒップホップに興味を持つ人が増えてきてる時代。リスナーに「カルチャーを掘り下げろ!」とは強要はしないですよ。それだとうっさいおっさんになるだけなんで。ただ、アーティストとしても曲単体としても表面的な評価だけじゃ記憶に残らない。僕も昔は「ヒップホップヒップホップうるさいねん!」って思ってましたよ。でも、先輩や大人が言ってくれてた言葉って、僕のことを思って言ってくれてたんだなって感じるようになったのが大きい。

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