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『ハコヅメ』ほどドラマ化に最適だった漫画はない!? 演劇作品の“王道”を押さえて有終の美

文=東海林かな(しょうじ・かな)

『ハコヅメ』ほどドラマ化に最適だった漫画はない!? 演劇作品の“王道”を押さえて有終の美の画像
『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』公式サイトより

 『ハコヅメ』はドラマ化することで、優れた“喜劇作品”に昇華されたのかもしれない。

 大人気となった日本テレビ系水曜ドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』が視聴者に惜しまれつつ最終回を迎えた。世帯平均視聴率は12.6%(関東地区・ ビデオリサーチ調べ)と番組最高記録を更新している。

 冒頭から『ハコヅメ』らしいコメディシーンを飛ばしながら、主人公のひとり・藤(戸田恵梨香)が3年に渡り追ってきたひき逃げ事件の犯人を無事逮捕。被害者となった藤の同期・桜(徳永えり)は後遺症から一度は警察官を辞めようと決めたものの、川合(永野芽郁)の機転によって撤回し、警察官を続ける意欲を取り戻す……という涙なしには見られないハッピーエンドとなった。

 一方で、ドラマの大筋となったひき逃げ事件の結末は後味の悪いものだった。犯人の男は小心者で、借金を残し家族から逃げたという過去があるものの、娘に似た女性警察官を目で追うことをやめられなかったという親としての心情を持っていた。さらに事故を起こしたのは、ほぼ徹夜という長時間勤務による過失だと判明する。死んで償うと言う犯人を伊賀崎(ムロツヨシ)が強く責め立てたように、罪は生きて償うべきだ。だが、犯人にとって不幸が連鎖した末の事故だったのも事実だ。

「どうせ来るならクソ野郎」

これは第1話で藤が、そして最終話のラストシーンで藤と川合がこっそり交通違反の運転手に対して吐くセリフだが、ひき逃げ犯もとことん悪くて嫌な奴だったらどんなに気持ちがラクだったか。

 こうした勧善懲悪でない現実的な部分は、原作者が10年間県警に勤めていた元警察官であることに基づく。ドラマは構成の巧みさこそあれ、ストーリー自体は原作漫画ありきだ。読者にとっては結末が知れているにもかかわらず、ドラマ版『ハコヅメ』がこれほど評価されたのはなぜだったのだろうか。

 演劇には「喜劇」と「悲劇」という二大ジャンルがある。辞書を引くと、悲劇が「人生の不幸・悲惨なことを題材とした演劇。破滅、敗北、苦悩など悲しい結末で終わる劇」であるのに対して、喜劇は「滑稽、機知、風刺などをまじえ、観客を笑わせながら、人生の真実面を表わそうとする演劇」とされている。ピリッと苦い警察官の日常を笑いで描く、まさに『ハコヅメ』は喜劇そのものだ。

 舞台の上ではないが、ドラマは役者が脚本をもとに演じる近代の演劇だ。漫画『ハコヅメ』はドラマ化されたことで、古くから演劇の王道ジャンルであった喜劇作品に昇華された。そういう意味で、単にストーリーをなぞっただけのドラマ化とは一線を画していたといえる。

 シリアスなストーリーを含んでいたにもかかわらず、終始笑いを交え、最後は藤と川合の「クソ野郎」という痛快な口の悪さで物語を締めてくれたドラマ版『ハコヅメ』。原作は続いており、アニメ化も控えている人気作だが、ぜひドラマ版も続編として帰ってきてほしいものだ。

■番組情報
水曜ドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』
日本テレビ系毎週水曜22時~
出演:戸田恵梨香、永野芽郁、三浦翔平、山田裕貴、西野七瀬、平山祐介、千原せいじ、渕野右登、ムロツヨシ ほか
主題歌:milet「Ordinary days」(Sony Music Labels)
音楽:井筒昭雄
脚本:根本ノンジ
チーフプロデューサー:加藤正俊
プロデューサー:藤森真実、田上リサ(AX-ON)
協力プロデューサー:大平太
演出:南雲聖一、丸谷俊平、伊藤彰記
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/hakozume/

東海林かな(しょうじ・かな)

東海林かな(しょうじ・かな)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

最終更新:2021/09/16 17:00

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