土方歳三の謎に包まれた死…事故死だった可能性や国外逃亡説も?

文=堀江宏樹(ほりえ・ひろき)

日野の土方家にも伝わらなかった遺骸の行方

土方歳三の謎に包まれた死…事故死だった可能性や国外逃亡説も?の画像2
町田啓太演じる土方歳三(『青天を衝け』公式Twitterより)

 もうひとり、土方の比較的近くにいたとされる立川主税(たちかわ・ちから)という新選組隊士の証言『立川主悦戦争日記』も注目すべき史料です。こちらも島田の日記と同様、原文に句読点などを加えてご紹介します。

 立川によると、「土方、額兵隊(などを)曳(ひきい)て後殿す(=しんがりを勤めた)。故に異国橋まで敵(は)退く」。土方たちの奮戦によって、一本木関門に接近しつつあった政府軍は異国橋まで約2キロ、一度は後退したという内容が立川の記述にはあり、土方がいかに味方の士気を高め、新政府軍を威圧する存在であったかがうかがい知れます。

 しかし、土方の死を綴った部分の文章は、島田の文と同様になぜか難解です。「七重浜へ敵、後(うしろ)より攻(め)来(た)る故に土方、是を差図す」。ここは、敵が後方の七重浜側からも攻めてきたから、土方はその対策を指示したというような意味でしょう。

 原文は次のように続きます。「(しかし)、亦(また)一本木(関門)を(七重浜側からの敵が)襲(ってきた最中)、敵(の銃弾が土方の)丸腰(の)間を貫き、遂に(土方は)戦死したもう」。ここは「土方は、七重浜から攻め込んできていた新政府軍による狙撃で腰のあたりを撃たれ、それが致命傷でお亡くなりになった」と意訳できると思います。

 実際はどこから銃弾が飛んできたのかもわからないほどの混戦状態だったが、傷痕が腰のあたりだったので、後方の七重浜側から撃たれたと判断するしかなかったのかもしれません。

 なお、ドラマでは、最終決戦の前に土方が成一郎を逃したことになっていましたが、史実では違ったようです。渋沢成一郎は彰義隊の隊長です。彰義隊はこのとき、「(七重浜から攻めてくる新政府軍を食い止めようと)砂浜側」で戦っていた……という証言が『立川主悦戦争日記』には出てきます。史実の土方と成一郎は、最後までさほど遠くはない位置にいたと思われます。

 しかし、やはり解せないのが、伝聞で書かれた『島田魁日記』は仕方ないにせよ、『立川主悦戦争日記』など土方の傍にいたという人物の書いた複数の資料でも、土方の死の瞬間についての記述が妙に似通っており、しかも素っ気ない点です。共通して、土方の「丸腰(の)間を(銃弾が)貫き」と表現され、それで生命を落とした、と書いているだけなのです。

 さらにその後、土方の遺骸をどこに、そしてどういう形で埋葬したかという情報が完全に欠けてしまっていることも不可思議です。土方の遺族がもっとも知りたいであろう情報がなぜか抜け落ちているのでした。

 ドラマでは、土方の小姓の鉄之助が土方に写真と髪束を託され、陣中から日野の土方家を目指して旅立つシーンが出てきましたが、史実では、立川主悦と沢忠助(さわ・ちゅうすけ)の両名も日野の土方家に使者として向かいました。出発は「箱館戦争」終結前でしたが、新政府軍に捕らえられ、身柄を拘束されていたので、日野への到着は戦争終結後、しばらくたってからになってしまいました。しかし、彼らの報告を聞いた土方家が残したメモは簡素なものでした。つまり、この二人は、手記として文字化された以上の情報を土方家に伝えなかったことが推察されます。

 このように謎めいた経緯からは、「何か大事なことを隠そうとしている」と感じる人がいてもおかしくはありません。「味方の裏切りで、背後から銃撃されて土方は暗殺されてしまった。関係者の証言がやけにそっけないのは、それを隠そうとしてのことだったのでは」「そういう報告を土方家も聞かされたが、“味方の恥”を歴史に残さないため、文字に残さなかったのでは」という推論さえできてしまうのです。

 土方は慕われていたので、暗殺の線は薄いように思います。しかし敵が目前に迫る中で、焦った隊士がライフル銃を暴発させ、土方の腹部を弾が直撃という“不幸な事故”であれば、実際に起きた可能性を否定はできないようにも思われますね。

 では、土方の遺体はその後、どうなってしまったのでしょうか? これも実はよくわからないのです。

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