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NetflixもNewsPicksも大炎上!「24時間戦えますか?」サラリーマン煽り広告史

NetflixもNewsPicksも大炎上!「24時間戦えますか?」サラリーマン煽り広告史の画像1
写真/GettyImagesより

「今日の仕事は、楽しみですか。」

 緊急事態宣言が明けた東京。月曜日の朝から品川駅のコンコースに並んだメッセージ広告は、批判が殺到しわずか一日で取り下げざるを得なくなった。企業が多く立ち並び、通勤経路として多くのサラリーマンが目をするこのコンコースに、さまざまな理由でコロナ禍のさなか出社せざるを得ない労働者相手に、配慮のない表現には否定的な意見が相次いだ。

 堀江貴文氏や落合陽一氏らが多く出演し、経済系メディアとして知られる「NewsPicks」の子会社であり、同社の広告やデザインを手掛ける株式会社アルファドライブの企業メッセージであるという広告。

「今日から、品川駅コンコースを全面ジャックして僕らのメッセージを発信していきます。今日の仕事は、楽しみですか。ビジネスに衝動を。ビジネスに鼓動を。AlphaDrive/NewsPicksが吹き込んでいきます。」(CEOである麻生要一氏のTwitterより)

 同社の設立者である麻生氏は自身を持って掲出したようだが、「不快になる」、「ディストピア感がすごい」などの声が寄せられ炎上、結果的に掲出は取り下げられた。同社では以前も『さよならおじさん』というコピーでサラリーマンに対し、価値観のアップデートを強要する広告を出稿するなど、「意識高い系メディア」として市場観測を見誤っているように見受けられる。

 そして今回、このような「サラリーマン煽り広告」が話題になったことで、平成最初期にテレビを賑わせたCMが話題となっていた。

 その商品名は「リゲイン」。当時のサラリーマンを取り巻く環境を如実に表現にした「24時間戦えますか」というコピーは、1989年の流行語大賞にも選ばれるなど品川駅の件とは一転、当時はある種の自虐、あるいは哀愁とともに好意的に受け取られていた。

「コンプライアンスや企業ガバナンス、ハラスメントという言葉が一般的になってきたのは00年代中期以降。それまではとにかく『頑張る』という感覚が日本的なサラリーマンの美徳であったため、市場にすんなりと受け入れられました。近年若者を中心に多く飲まれている栄養ドリンクのレッドブルのメインコピーが『翼をさずける』であることと比較すると、サラリーマンが常日頃からプレッシャーをかけ続けられていた時代であることは想像に難くないでしょう」(広告プランナー)

 このように世の中の感覚が大きく転換しつつある中、オリンピックで湧いた今年7月、ネット上で炎上したのはNetflixのキャンペーンだった。そのコピーは「#退屈は犯罪です」。Twitter上での拡散を狙ったハッシュタグ付きのコピーは、「気持ちが悪い」「強い言葉で注目されようとすんのやめれ…」など、想定していた層に真っ先に嫌われる本末転倒なプロモーションになってしまった。(参考:https://togetter.com/li/1751380

 労働者の権利がことさらに主張される海外企業の広告がなぜ、このような表現になってしまったのだろうか。

「海外企業との企画は、日本語→英語→日本語というように何度も翻訳しながら担当者とやりとりするので、直接的な表現になりやすいと言われています。例えばナイキの有名なコピーである『JUST DO IT』は日本語だと『とにかくやれ』といった言葉になり、やはりどうしても強い言葉になりますよね」(広告会社クリエイティブ・ディレクター)

 リゲイン、Netflix、品川のサイネージ……。広告プランナーは常に印象に残る言葉を追い求めるが、時代の潮流を見誤らないことが大切なようだ。

加藤マサキヨ(CMディレクター)

1988年生まれ。広告、IT業界に精通。週末はアイドル鑑賞で目を労り、サウナで汗を流す。

かとうまさきよ

最終更新:2021/10/11 08:00
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