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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.659

不気味すぎる実写映画『ほんとうのピノッキオ』 大人たちに搾取される社会的弱者を描いた寓話

文=長野辰次(ながの・たつじ)

不気味すぎる実写映画『ほんとうのピノッキオ』 大人たちに搾取される社会的弱者を描いた寓話の画像1
ダークファンタジーとして現代に蘇った『ほんとうのピノッキオ』

 嘘をつくと鼻がぐんぐん伸びる木彫り人形を主人公にした児童文学『ピノッキオの冒険』は、誰もが子どもの頃に絵本やアニメーションなどで親しんだ作品だろう。とりわけディズニーアニメ『ピノキオ』(40)は有名だが、ストーリーもキャラクターもディズニー作品らしくソフィスティケイトされたものとなっていた。19世紀のイタリアで書かれた原作のピノッキオはもっと欲望の赴くままに動く悪童であり、残酷描写も少なくない。そんなピノッキオの物語を、原作に忠実な形で実写映画化したのが『ほんとうのピノッキオ』(原題『Pinocchio』)だ。イタリア本国では2019年に公開され、大ヒットを記録している。

 主人公であるピノッキオの造形がまず不気味だ。木目の肌をしたピノッキオは、目だけはつぶらな少年の瞳となっており、まるで大映の特撮時代劇『大魔神』(66)のよう。ジェペットじいさんが作ったあやつり人形のはずのピノッキオが突然しゃべり、動き出し、「不気味の谷」を渡ってこちらへと近づいてくる。ホラー映画の始まりを思わせる。

 本作を撮ったのは、イタリア映画界の鬼才マッテオ・ガローネ監督。ナポリを拠点にする犯罪組織の内情を生々しく描いた『ゴモラ』(08)、イタリアに伝わる不条理系お伽話を映像化した『五日物語 3つの王国と3人の女』(15)などで知られる監督は、主題歌「星に願いを」が印象的だったディズニーアニメ『ピノキオ』のイメージを完全に払拭させる、ダークファンタジー映画に仕立ててみせた。

 ピノッキオを溺愛するジェペットじいさんに、アカデミー賞外国語映画賞&主演男優賞などを受賞した『ライフ・イズ・ビューティフル』(98)のロベルト・ベニーニ。ピノッキオの窮地を救うターコイズブルーの髪をした美しい妖精に、フランソワ・オゾン監督の『17歳』(13)や『2重螺旋の恋人』(17)に主演したフランスの人気女優マリーヌ・ヴァクト。ピノッキオが紛れ込む人形劇団やサーカス一座には個性的な俳優たちが配役されており、ビジュアルを追っているだけでも飽きない124分間となっている。

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