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【澤田晃宏/外国人まかせ】技能実習生の「変形労働制」を認可――過酷でも稼げる牡蠣とホタテの養殖

文=澤田晃宏(さわだ・あきひろ)

失踪した元実習生でも欲しいホタテ養殖業者

【澤田晃宏/外国人まかせ】技能実習生の「変形労働制」を認可――過酷でも稼げる牡蠣とホタテの養殖の画像4
北海道南西部の噴火湾。出航は3時半。ホタテ養殖の漁船には3人のベトナム人技能実習生。小さな稚貝を間引いて、網の大きなカゴに入れ替え、また沖に沈める。

 牡蠣同様に養殖業で実習生の受け入れが認められているのがホタテだ。最大の生産地は北海道で、天然も一部あるが、水揚げされるホタテの約9割は養殖だ(19年)。こちらも牡蠣同様、生産現場は実習生なしには成り立たない。

 ホタテは牡蠣同様に幼生の採取から始まり、採取した稚貝をカゴに入れて沖合に吊るし、生育の悪い稚貝を間引きしながら、大きなカゴに入れ替える作業を繰り返して育成する。収穫までに約2年かかるが、もっとも大変なのが例年3月から5月頃に行われる「耳吊り作業」だ。

 約1年かけて6センチ程度に育った稚貝のカゴを引き揚げるだけでも重労働だが、それを洗浄し、ひとつずつ穴を開ける。それを糸でつないで沖合にカーテン状に吊るし、収穫まで育てるのだ。耳吊りの時期は作業が多く、仕事は深夜から夕方まで続くことも珍しくない。

〈写真05入る〉

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耳吊りしたホタテが沈み過ぎないようにブイを足したり、ロープに付いた泥を落としたりする。作業は多岐にわたる。

 耳吊り作業を控えた今年2月、北海道南部のある人材会社では、立て続けに電話が鳴り響いていた。同社社員は、 「コロナの影響で新しい実習生が入ってこず、失踪した元実習生でもいいから、 とにかく人が欲しいと道内のホタテ養殖業者からの問い合わせが殺到しました」

 本連載でも解説してきたが、政府はコロナ下で在留資格の扱いを緩和し、すでに実習を終え、帰国困難な実習生などだけではなく、失踪した元実習生も週28時間という制限付きだが、就労を認める在留資格を交付している。外国人の入国に制限がかかる中、国内に残る外国人の争奪戦が起きている実態も本連載で書いてきたが、養殖業も同様だ。

 手元に、道内のある監理団体から提供を受けた実習生の賃金台帳がある。ホタテも牡蠣同様、変形労働制を取る事業者が多いが、ある実習生の4月の時間外労働は152時間を超える。深夜労働は100時間近く、総支給額は40万円を超える。道内のあるホタテ業者は、

「昔は休みもなく、とにかく稼ぎたいといった日本人もいたが、それが今は外国人に入れ替わった。労働時間も外国人を無理に働かせない限り、労基署からもうるさく言われることはない」

 二重帳簿を作り、労働時間をごまかす事業者も珍しくないが、あくまで「出稼ぎ」に来ている外国人にとっては、法令順守より稼げることが重要だ。

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特定技能で再来日したレさん。寮にお邪魔すると、元実習生の奥さんと子どもの写真が。 水産加工工場で働いていた奥さんとは近所のスーパーで知り合ったという。

 外国人の扱い方は、事業者により大きく異なる。ベトナム出身のファン・ツ・レさん(34歳)は基本、残業をしない。牡蠣養殖も同じだが、ホタテも海上の作業だけではなく、カゴを編む作業など、陸上での作業も多い。長い時間働けばそれだけ稼げるが、雇用者の理解もあり、体に無理のない範囲で働いている。それでも、寮費などを引いた手取り給与は18万円を超える。

 レさんは高校卒業後、マレーシアに出稼ぎに行き、鶏の解体処理の仕事に就いた。そこで稼いだお金を元に、母国で携帯電話の修理会社を開いた。毎月3万5000円程度を稼いでいたが、友人から「3年で250万円は稼げる」と聞き、実習生として日本に行くことを決めた。

 しかし、送り出し機関で4回面接を受け、すべて不合格。「どんな仕事でもいい」と送り出し機関に頼み、紹介されたのが ホタテの養殖だった。ベトナムの送り出し機関幹部はこう話す。

「すでにたくさんの実習生が日本に行き、情報は出回っている。仙台より北は寒く、最低賃金も安く、人気がない」

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ホタテの稚貝の入ったカゴを引き揚げる実習生。耳吊り前の状態になると、カゴも60 キロ程度になり、引き揚げるのも大変である

 レさんは、そんなベトナムでも「不人気職」のホタテ養殖の実習生として17年6月に来日。3年間の実習期間中に、道内の水産加工会社で働くベトナム人実習生との間に子どもができた。

「彼女も入国が同時期で、ちょうど3年間の実習期間が終わる頃を見計らって、計画的に子どもをつくりました」

 レさんは3年の実習を終え、20年10月に帰国。彼女との結婚式を済ませ、21年2月に特定技能外国人として再び来日し、ホタテの養殖作業に就く。

「3年間の技能実習で貯(た)めた約270万円で、(母国で)奥さんと住む家と土地を買いました。まだまだお金を稼ぎたい」

 結婚したばかりの奥さんと離ればなれで寂しくないのかと尋ねると、 「すごく寂しい。毎日、電話しています。特定技能でも家族帯同を認めてほしいです」

 レさんの枕元には、夫婦で生まれたばかりの赤ちゃんを囲む写真が置かれていた。

<連載リンク>
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澤田晃宏(さわだ・あきひろ)

1981年、兵庫県神戸市出身。ジャーナリスト。進路多様校向け進路情報誌「高卒進路」(ハリアー研究所)編集長。高校中退後、建設現場作業員、アダルト誌編集者、「週刊SPA!」(扶桑社)編集者、「AERA」(朝日新聞出版)記者などを経てフリー。著書に『ルポ技能実習生』(ちくま新書)、『東京を捨てる コロナ移住のリアル』(中公新書ラクレ)がある。

最終更新:2021/10/31 19:00
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