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今注目される仏教大論争「最澄vs.徳一」議論が成立しない現代人が学ぶべき“マナー”とは?

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展覧会「最澄と天台宗のすべて」のサイトより

『最澄と徳一 仏教史上最大の対決』(岩波新書)という本が発売前から話題を呼んでいた。天台宗を開いた最澄は、真言宗の開祖・空海とともに平安仏教を代表する存在として教科書にも登場するが、法相宗の徳一は一般的な知名度はあまりない。

 なかなかマニアックなトピックにも思えるこの2人の論争について、なぜ今、注目が集まっているのか。思想的に相容れない最澄と徳一が5年の歳月をかけて大量の応答を行ったこの論争には、今日の民主主義、多宗教時代に顧みるべき現代的な意義があるというが、果たしてそれはどんなことなのか。本書を著した仏教研究者の師茂樹氏(花園大学文学部教授)に訊いた。

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師茂樹著『最澄と徳一 仏教史上最大の対決』(岩波新書)

徳一が主流派で、最澄は新興勢力だった

──一般的には最澄のほうが有名で徳一は知られていないけれども、当時は徳一の所属する法相宗のほうがメジャーで、天台宗を認めてもらったばかりの最澄のほうがチャレンジャー的な立場だったそうですね。

師 はい。法相宗は日本の仏教を中世あたりまでリードしていた宗派で、藤原氏の氏寺・興福寺などが有名ですね。最澄が開いた比叡山は、その後に登場してきて宗教勢力、大学として栄え、鎌倉時代には親鸞や道元などを輩出しますが、平安時代初めにできたときは新興勢力でした。最澄は比較的早くに桓武天皇に抜擢された存在ですが、徳一と論争していた頃は勢力としては脆弱でした。

──論争の発端は?

師 どうやって始まったのかは詳しくわかっていないのですが、北関東にいた道忠(どうちゅう)教団という鑑真(がんじん)の弟子筋の人たちの中で天台の教えがまとめられて紹介されていたのを、会津(福島県)のあたりにいた法相宗の徳一が見て「これはおかしいんじゃないのか」と質問状を出した。その質問状を、道忠教団にお世話になっていた最澄が引き受けたのだろうとされています。

 当時は徳一のように質問状を出す「未決」というスタイルが学問のあり方のひとつで、実は徳一は空海に対しても「真言宗未決文」という質問状を送っています。ただ、空海はほとんどスルーしている。一方、最澄は自分に襲いかかってきたわけでもない質問状を引き受けて、巻物で何十巻にもなる膨大な文書のやり取りをたった5年で行った。最澄はこの論争と並行して、仏教界全体を巻き込んで大乗戒(だいじょうかい)の独立──天台宗のお坊さんを自前で出家させることを認めてもらう──に向けての運動も展開していましたから、ものすごい活動量であったといえます。

──なぜ、最澄と徳一はそこまで血道をあげて論を戦わせたのでしょうか?

師 ひとつは、最澄・徳一論争は、この頃、東アジア全域の仏教界でなされていた論争の一部なんですね。語るべき論点が無数にあったし、今で言う論壇のような、論争のしやすい環境もあった。2人が書いているものを読むと、仏教を学んでいる学生(がくしょう)など第三者に呼びかけている部分もあって、2人の間で議論が閉じていない。オーディエンスを前提にして「この話は、あそこで盛り上がっていることについてだが」という、ホットトピックについて語っている感があったのかもしれない。

 もうひとつは、「これはお釈迦様が預言したことじゃないか」という雰囲気もあった。お釈迦さんの言葉とされるお経には「私が亡くなってから1000年後に、理解の不足によって仏性があるかないかをめぐって菩薩たちが論争するだろう」といったことが書かれている。ですから、「それがまさに、これじゃないか」と。最澄は「私は今、預言されていたことをやっているのだ」というふうにストーリーを作っている節があるんですね。例えば、インドには天台の教えのようなことを言ったお坊さんと徳一のような考えのお坊さんがいて、後者は地獄に堕ちたという内容の経典があるのですが、最澄はそういうことを踏まえて徳一に語っています。

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