日刊サイゾー トップ > エンタメ  > 「最澄vs.徳一」から現代人が学ぶべき“マナー”

今注目される仏教大論争「最澄vs.徳一」議論が成立しない現代人が学ぶべき“マナー”とは?

思想が真逆の人間同士が話し合う方法

──なぜ今、この論争に注目が集まっているのでしょう?

師 名前は聞いたことがあるけど、内容がわからない論争、というので興味を引いたのかもしれません。あと大きいのは、おかざき真里さんが最澄と空海を描いたマンガ『阿・吽』(小学館)がちょうどこの夏に連載終了したのと、今年は最澄の1200年大遠忌(だいおんき)で東京で大きな展覧会「最澄と天台宗のすべて」があり、九州や京都にも巡回するというタイミングが重なったことでしょうね。

──この論争の現代的な意義は?

師 今回の本では、最澄と徳一という思想的な立場が真逆の人たちが一体どうやって議論したのかに注目して書いています。

 例えば先日、衆議院議員選挙がありましたけれども、みなさんそれぞれに「自民党が嫌い」「立憲民主党や共産党は嫌だ」とか言っているわけですよね。ところが、哲学者のオルテガが『大衆の反逆』(1929年)で言ったように、民主主義とは「敵とともに生き、対立者とともに統治する」ものです。つまり、思想が違う人同士が話し合いをして、なんらかの結論を導こうとするものだろう、と。最澄と徳一の論争は、お互い好きなことを言い合って水掛け論に終わったように思われているんだけれども、実はちゃんと話し合いをしようとしていた。私たちの社会は、嫌だなと思う相手と議論しながら暮らさないといけないわけです。そこを考え直すきっかけになればなと思っていました。

 もうひとつは宗教間対立ですね。この本を校正しているときに米軍撤退に伴ってアフガニスタンでタリバーン政権が復活しましたが、まったく異なる宗教・文化の人たちが対話・共存していくことが、これまで以上に重要な課題となるのではないかと。そこで、仏教界で議論のプロトコルとなってきた「因明(いんみょう)」という古代の論理学を大きく取り上げて最澄・徳一論争を説明したわけです。

──最澄は天台宗の開祖ですが、当時の仏教界の中心である三輪宗(さんろんしゅう)や法相宗など、ほかの宗派と補完し合うことが国土の守護のために必要と考えていたそうですね。法相宗の徳一とバチバチに論争していたにもかかわらず。

師 これは研究上、議論のあるところで、最澄が自分でその立場を導いたというより、当時の桓武天皇の政策が、諸宗の並立を前提としており、それを実現するスタッフとして最澄が見いだされて採用されていったのではないかという見方もあります。ただ、いずれにしても、最澄は論争の中では自分の信じている天台宗が完璧であると主張するけれども、現実社会においてはいろいろな考えを認めるし、必要であるというスタンスだった。

 これは、キリスト教における第2バチカン公会議(1962~65)の論点にも重なります。キリスト教は長い間、自分たちの考えが正しく、「教会の外に救いなし」などと言ってきた。でも、20世紀後半になって世界の現実を見渡したときに、さすがにこのスタンス一本槍ではムリだろうと。そのとき、「カトリック以外も認めます。神の真理はいろいろな宗教に現れている。ただし、神の真理を完全に備えているのはキリスト教です」という「包括主義」の立場を取ったわけです。これの反対が、ほかの宗教は認めない「排他主義」ですね。天台宗の最澄の立場も包括主義的だといえます。包括主義が便利なのは、お互いに「ウチの宗派が完璧なんだけど、人によるところもあるから、よそを信じてもいいんじゃないの」と考えることで共存が可能になる。

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