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石黒浩が開拓する「ロボットと人間」の尖端──アバターで働き方を変える“仮想化実世界”とは?

自動運転EVにアンドロイドアナウンサーの技術を応用

──コロナ禍といえば、ペットを飼う人は増えましたが、家庭用ロボットは意外と普及しなかった感があります。

石黒 もうじきだと思います。アバターとはまた別にそれもやっています。家庭用ロボットで大事なことのひとつは、歩くときに音がしないことなんですね。生物は基本的に音もなく歩くわけです。音を出しまくっていたら「ここにいますよ」と捕食者に知らせているようなものだから、基本的には生きものは今のペット用ロボットみたいにガーガーいいながら移動しない。ペット用ロボットに接した人は、そこに違和感を抱いてしまう。じゃあ、どうやってノイズをなくすのか。ひとつは、アクチュエータ(電気・空気圧・油圧などのエネルギーを機械的な動きに変換し、機器を正確に動かす駆動装置)にダイレクトドライブというギアのないモーターを使ったり、音のしない減速比の少ないギアを使ったモータを使うことです。そういうロボットを今作っています。とはいえ、モーター技術が頭打ちになっているとか、もうちょっとがんばらないといけないポイントもあるんだけれども、いずれ良いペット用ロボットは出てくると思います。高性能なモーターも量産すれば安くなりますからね。

 ただ量産といっても、工場まるごと作るくらいでないと価格が下がらないのが難しいところですね。ドローンではDJIをはじめとする中国メーカーがおそらく大きな投資をして、それを成功させたと思うのだけど、そうしたドローンメーカーがダイレクトドライブのモーターを家庭用ロボットにも使えるようになる可能性はあります。ただ、そこで生産技術的に引き離されると、日本勢はキャッチアップが難しくなる──中国のモーターなしにロボットが作れなくなってしまわないかは少し危惧しています。

──もうひとつ、アバターとは違う自律ロボット関係の技術の話を聞きたいのですが、意図と欲求をプログラミングによって実装している対話可能な自律アンドロイド・エリカの技術を応用して、自動運転のEVに高度な対話機能を持たせることが重要だという話が本にありました。「ロボット」「アンドロイド」と言って想像されるイメージから離れますが、クルマに対話エージェントの技術が応用できるというのは面白いですね。

石黒 自動車はコントロールがデザインできるミニマルな環境なんですね。電気自動車だとエンジン音もしないし、座る位置も決まっているから、マイクの場所も決められる。家の中よりもはるかに音声認識もしやすいんです。家屋の中は実はいろいろノイズが発生しているし、会話の内容もコンテクストが雑多、しかも移動が頻繁に生じるから、音声をマイクで拾いづらい。クルマは対話エージェントを入れやすい空間なんです。

 加えて言えば、誰が自動運転のクルマをもっとも必要としているか。例えば、地方に住むおじいちゃん、おばあちゃんですよね。操作パネルを用意しても使うのが難しいと感じる人であっても、口でしゃべることはできます。技術が導入しやすいだけでなく、クルマに搭載することの社会的な有用性が大きいわけです。

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