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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】Vol.668

変わりゆく「マッチョ像」描くイーストウッド主演&監督作『クライ・マッチョ』

文=長野辰次(映画ライター)

変わりゆく「マッチョ像」描くイーストウッド主演&監督作『クライ・マッチョ』の画像1
イーストウッド監督らしいロードムービー。相棒役は14歳のエドゥアルド・ミネット

 スポーツジムに通ってボディビルダーばりのマッチョ体型を目指す人たちがいる一方で、マッチョという言葉が連想させるマチスモ(男性優位主義)を嫌悪する人たちもいる。91歳になるクリント・イーストウッドが主演&監督を務めた新作映画『クライ・マッチョ』(原題『Cry Macho』)は、そんな現代社会に「本当のマッチョ(男らしさ)とは何か?」を問いかける、上映時間104分のシンプルなドラマとなっている。

 ミステリー映画『恐怖のメロディ』(71)で監督デビューを果たしたクリント・イーストウッドにとって、『クライ・マッチョ』は監督デビュー50周年、40本目の監督作となる。ハリウッドの生きたレジェンドであるイーストウッドが新作に選んだ『クライ・マッチョ』は、「親ガチャ」がテーマだ。

 物語の始まりとなるのは、1970年代のテキサス。かつてロデオ界でスターだったマイク(クリント・イーストウッド)だが、落馬事故に遭ってからは落ち目となり、頑固な性格のために馬の調教師の仕事も失ってしまう。孤独なひとり暮らしを送っていたマイクは、生活のために犯罪スレスレの厄介な仕事を請け負うことになる。

 依頼人は、マイクの元雇い主のハワード(ドワイト・ヨーカム)。メキシコで暮らす別れた妻のところから、ひとり息子のラフォを連れ戻してほしいという頼みだった。息子を手もとに置けば、別れた妻に余計な財産を分け与えずに済むからだ。「5万ドルを支払う」というハワードの言葉に釣られ、マイクはメキシコシティへと車で向かう。だが、ハワードの元妻・レタ(フェルナンダ・ウレホラ)の家には、ラフォはいなかった。男遊びに夢中な母親をまだ10代のラフォは見限り、スラム街で路上生活を送っていたのだ。

 非合法の闘鶏場でようやく見つけたラフォ(エドゥアルド・ミネット)は、生きていくためには盗みもする悪童だった。闘鶏用のニワトリに「マッチョ」と名付け、かわいがっている。親も家庭も必要としないタフガイを気取っていたラフォを、「父親が会いたがっている」「いい暮らしができるぞ」と甘い言葉で丸め込み、車に同乗させるマイクだった。

 家族の温かさを知らずに育ったラフォは、代わりにニワトリの「マッチョ」に愛情を注いでいた。マイクも馬の扱いには慣れているが、人間に対しては心を開くことができない。そんな人間嫌いな2人の男と1匹のニワトリが、警察と母親が放った追手から逃げながらの旅を続けることになる。トラブルに見舞われながら、少しずつお互いを理解し合うようになっていく。

 親に恵まれなかったラフォは、旅を通して自分が進むべき道を自分で選択できるまでに成長していく。いかにもイーストウッド作品らしい、男くさいロードムービーだ。

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