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『家つい』錦鯉渡辺と空気階段もぐらのビフォア・アフターと「売れるということ」

この5年間で次々と夢を叶えた鈴木もぐら

 2016年10月、高円寺駅前でスタッフが声をかけたのは、空気階段の鈴木もぐらだった。また優勝者だ。持っているぞ、この番組は。

 今よりちょっと若くて、今より少し痩せていて、今より可愛くて肌がつやつやなもぐら。コアなお笑いファンにしか知られていない頃で、家と携帯と保険証がなかった頃で、素人童貞だった頃の彼である。当時、もぐらは先輩芸人の家に居候していた。スタッフを家に招くには、先輩の了承が必要。Wi-Fiスポットを探し、先輩から譲り受けたタブレットでLINE通話して自宅に連絡するもぐら。どうやら、OKが出たようだ。

「じゃあ、坂井さんも一緒に……」(もぐら)

 近くにいたのは、鬼越トマホークの坂井良多である。今、この面子が揃うとほとんど絵的にYouTube「高円寺チャンネル」だ。しかし当時、かろうじて鬼越は『ざっくりハイタッチ』(テレビ東京系)の喧嘩ネタでプチブレイクしていたが、もぐらはまだまだだった。高円寺は売れっ子予備軍の宝庫であり、巣窟である。

 自宅に到着すると、家主である先輩芸人・かわの傘いらない。がスタッフを出迎えた。傘ないは2018年に芸人を廃業、現在は京成小岩でミャンマー居酒屋を営んでいるという。そんな傘ない宅のロフトで居候していたもぐら。当然、2人の先輩からいじられまくる立場だ。

傘ない 「もぐらさんは女遊びしないですよね?」
もぐら 「あ、そうそう。女は本当、クリーンですから」
坂井  「素人童貞だもんな」
もぐら 「まあ、『素人童貞』って言葉がまあ……」
傘ない 「『大切な体を素人に触らせるわけにはいかない』と。体を触るプロにしか触ってもらいたくないから、プロのところに行ってるだけだって」

 この頃から「素人童貞」を否定していたもぐら。今と変わっていなくて微笑ましい。でも今は結婚しているのだから、その角度でも成り上がった。

 もう周知の事実だが、もぐらには借金がある。曰く、借金額は500万円だそうだ。

「(原因は)競馬とパチンコと風俗ですかね。街金融というか消費者金融さん。10万円を最初に借りたんですけど、それを1万ずつ返してたら2カ月後には50万円ずつ借りれるようになって、増額増額で」(もぐら)

 淡々とクズなのが怖い。自覚はあるのに悪びれない。当時の鈴木もぐらからは本物の匂いがする。こんなクズでも売れれば一発逆転可能なのが芸人の世界だ。枕元を見るとチョコレートが置いてあった。ファンからのプレゼントだそうだ。

――ファンの方、いらっしゃるんですね。
もぐら 「1人か2人くらいは」

 当時のファンは今頃、大喜びしているはずだ。ただ、取材ディレクターは空気階段のことを知らなかったらしい。

――もぐらさんはどっちなんですか? ツッコミなんですか? ボケなんですか?
もぐら 「だいたい、クズ役です」

 意表を突く回答である。ボケツッコミではなく、クズ。ただ、空気階段はどちらもネタが作れるし、どちらもボケツッコミできる50:50のコンビだ。その事実を知らずにもぐらの話を聞くディレクター。「こんなの売れねえだろ」と思いながらインタビューしているのが丸わかりなのだ。「芸人を辞めようと思ったことはないんですか?」「芸能仕事の景気はどうですか?」「何かネタできませんか?」と、常にもぐらを下に見ながらのクエスチョン。今、この映像を見ると感慨深い。

――お笑い芸人としてのこれからの目標はありますか?
もぐら 「ラジオでレギュラーを持ちたいですね。電化製品が家に一切なかったんで。ラジオしかなかったんですよ、5~6年間。ラジオばっかり聴いてたんで」

 実は当時、空気階段はちょっと売れかけていた。芸人発掘番組『マイナビ Laughter Night』(TBSラジオ)でチャンピオンになり、『空気階段の踊り場』(TBSラジオ)の前身番組はすでにスタート。事実、『家つい』に取材を受けた話をもぐらはラジオで話している。今や、『踊り場』はTBSラジオが誇る人気番組である。つくづく、このときの取材ディレクターに対して溜飲が下がる。でも、当時はまだそんなことは知る由もない。5年前のもぐらから際立つのは、若さと自信なさげな表情だった。

 2022年に『家つい』はもぐらに追加取材を行った。高円寺の四文屋で酒を飲む、もぐらと坂井。パッと見はあまり変わっていないようで、見た目に明らかに余裕がある。オーラがあるし、顔つきが変わった。そしてリッチになった。芸人が売れるとはこういうことだ。

 もぐらには妻と2人の子どもができた。素人童貞だったのに、家族写真からは幸せオーラが出まくり! 最近まで別居していて離婚寸前だったそうだが、それはもう言うまい。息子ちゃんたちがまた、もぐらにそっくりで可愛いのだ。もぐらは長男くんをアメリカンスクールに通わせたいらしい。子煩悩だ。

 この5年の間にラジオのレギュラーを持つ夢を叶え、彼女ができて結婚し、2人の子どもを授かり、単独ライブが爆売れし、『KOC』優勝を果たしたもぐら。ドラマみたいな人生である。そんな彼の2022年の目標は、「珍出鬼没」。太りすぎて腹が出て、自分の性器が見えなくなっていた昨年のもぐら。だから、腹をへっこませるぞと彼は意気込んでいるのだ。

もぐら 「2022年のうちには、絶対に見てやるぞと!」
坂井  「お前、金持ったな。目標ダイエットってセレブと一緒だからな」

「借金はまだ返済できていない」という設定の、まさにクズセレブだ。

寺西ジャジューカ(芸能・テレビウォッチャー)

1978年生まれ。得意分野は、芸能、音楽、格闘技、(昔の)プロレス系。『証言UWF』(宝島社)に執筆。

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最終更新:2022/01/12 22:00
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