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日刊サイゾー トップ  > 『鎌倉殿』は政子による頼朝“略奪愛”描くか

略奪愛だった? 『鎌倉殿』の“原作”で描かれなかった源頼朝と北条政子の馴れ初め

──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

略奪愛だった? 『鎌倉殿』の“原作”で描かれなかった源頼朝と北条政子の馴れ初めの画像1
大泉洋演じる源頼朝(ドラマ公式サイトより)

 『鎌倉殿の13人』の放送が始まりました。登場人物のなかには人柄を想像させる史料が残っていない者も大勢いますが、歴史の空白ともいうべき部分に「首チョンパ」(by 北条時政)といった昭和の俗語を散りばめるなど、想定外の手で登場人物をイキイキと魅せる演出にはワクワクさせられてしまいました。

 第一回、冒頭のシーンの北条義時(小栗旬さん)は八重(新垣結衣さん)を馬の後ろに乗せて逃げているのかと思いきや、実はそれは女装した源頼朝(大泉洋さん)だったという衝撃的なオチがクライマックスで披露されました。そこにナレーションの長澤まさみさんが「時代の変わり目が近づこうとしている」とウィスパーボイスで囁き、さらにドヴォルザークの「新世界から」のメロディまでが被さってくるのです。カオス以外の何者でもない(笑)。

 エバン・コール氏の音楽は、オープニングのテーマ曲を耳にした時点では、『平清盛』を担当した吉松隆さんの緻密で耽美的ともいえる楽曲群と比べ、「フーム……この時代を表現するのにこういうメロディ?」と思う部分もありました。しかし、気負ったところが少ない音楽になったことは、少なくとも今回の大河には合っているのかもしれません。

 知り合いに第一回の感想を聞いたなかでは、北条時政(坂東彌十郎さん)、宗時(片岡愛之助さん)目的で視聴していた歌舞伎好きの人が「ケレン味がすごい」と大喜びで、印象的でした。また、アニメ好きの人はBGMのドヴォルザークで『銀河英雄伝説』を思い出した、などとうれしそうに語っていました。

 Twitterでは、『新選組!』『真田丸』以来の“三谷(幸喜)クラスタ”が早速ポジティブな反応を見せていました。また、大泉さんの出世番組である『水曜どうでしょう』(北海道テレビ)にかけた「#鎌倉殿どうでしょう」というハッシュタグも盛り上がっていたようで、昨年の大河『青天を衝け』で見かけなかった種類の反応が目立ったように思います。完全にお祭り状態でしたね。

 歴史的事実の扱いについては、かなり優等生的だった『青天を衝け』を見慣れた目には「驚いた」と評するしかない部分も目立ちますが、クライマックスでの「姫」に女装した薄化粧の頼朝の逃亡劇については、単なる創作ではなかったといえるかもしれません。『平家物語』『平治物語』などの史料には、「平治の乱」の際に幽閉先から二条天皇が女装して逃亡したという“史実”が語られているからです。頼朝は「平治の乱」をきっかけに流刑の身になったわけですが、脚本の三谷さんはこの二条天皇の逸話を意識してあえて取り入れたのかもしれませんね。

 史料によると、二条天皇は高貴な女性に扮装し、牛車で逃亡したようです。地位の高い女性はいかなる時も見知らぬ人に顔を晒すことはないので、牛車を覗き込まれたところでバレなかったのですが、ドラマのように、お尋ね者が潜伏しているという情報のある屋敷の中から、突如「姫」と呼ばれる不審な“女性”が馬に乗せられ走り出てきたら、怪しいことこの上ありません。

 しかしドラマとはいえ、至近距離から弓矢で射掛けられても、絶対に馬上の義時や頼朝に当たらないあたり、「どんだけ~」とツッコみたくなるところです。「弓馬(きゅうば)の道」、つまり馬に乗りながら弓矢を駆使して戦う技術こそ当時の武士の“基本”ですから、本来なら追手の人たちは全員、武士失格となってしまいそうですが……。今後も『鎌倉殿』は突っ走った内容になること間違いないでしょう。

  さて、今回は史実の頼朝と政子の出会いについて語ろうと思います。

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