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北京五輪スキージャンプ、金メダルは取ったけど…日本のお家芸が直面する”消滅の危機”

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Getty Images

連日のようにメダル獲得の祝報が届き、冬季五輪のメダル獲得記録を更新した日本チーム。中でもいろいろな意味で強烈な印象を残したのがスキージャンプだ。小林陵侑選手が男子ノーマルヒルで金メダルを獲得。混合団体でもメダルが期待されたが、高梨沙羅選手がスーツの規定違反で失格となり、大騒ぎになったのは記憶に新しい。

 札幌五輪(1972年)の“日の丸飛行隊”の表彰台独占、船木和喜や原田雅彦らを擁した長野五輪(1998年)でのメダルラッシュ、安定してメダル争いに絡むノルディック複合などの印象が強く、スキージャンプは日本のお家芸だと思われているが、置かれた状況は非常に厳しい。

「常にメダル獲得が期待されるスキージャンプですが、裾野が狭い問題は深刻です。選手になるには、かなり早いうちから競技に取り組む必要がありますが、練習ができるのは北海道、長野、東北地方の一部くらい。競技人口は子供まで含めても1000人に届きません。

 ジャンプ台を新設するには莫大な費用が掛かりますし、指導者も少ないので、練習できる場所が増える可能性はほぼゼロ。維持費だけでも相当なお金がかかるので、維持するだけで精一杯の状況です。ジャンプ台があるのはもれなく山間地域で、少子化と過疎化が同時進行している場所ばかり。スキージャンプの火を消さぬように関係者が必死に奮闘していますが、競技人口増加にはつながっていません」(スポーツライター)

 北京五輪の日本選手のプロフィールを見ると、寒冷地に生まれ育ったか、親が大のウィンタースポーツ好きだったかのどちらか。ウィンタースポーツに触れ合うかどうかは環境に左右される部分が大きいが、とりわけスキージャンプはそれが顕著だ。さらに“ある事件”も、普及が進まない一因になっている可能性がある。

 ベテランスポーツ記者が、日本スポーツ史に残る屈辱の事件を振り返る。

「多くの日本人の脳裏に刻まれているのは、1990年代の複合競技での“妨害”です。日本チームは複合団体で、アルベールビル(1992年)、リレハンメル(1994年)と、2大会連続で金メダルに輝きました。日本は前半のジャンプで大量リードを奪い、後半のクロスカントリーをそのまま逃げ切るのが勝ちパターンでした。

 するとジャンプの比重が軽くなる、日本にとって不利なルール改正が何回も行われ、日本はメダルから遠ざかりました。ノルディック複合のチャンピオンは、ヨーロッパで『キング・オブ・スキー』と呼ばれる人気競技。ところがヨーロッパの選手が勝てなくなり、人気に陰りが見えたため、露骨な日本潰しが行われたのだとも言われています。これには選手だけでなく、多くの日本人が虚しさを感じました」(ベテランスポーツ記者)

 ただ、暗い話題ばかりでもない。努力をすればしっかり“うまみ”はある。

「スポーツ選手の年収というと、野球やサッカーばかりが話題になりますが、スキージャンプでもトップクラスとなると年収は相当なもの。賞金は微々たるものですが、所属企業からの給与に用具メーカーとの契約、スポンサー企業からの支援を合わせれば、年収は数千万円に達します。例えば高梨沙羅の場合、セブン&アイ、資生堂、Visa、ナイキ、クラレなどがスポンサー。数年前には2000万円以上する高級車に乗っていることが話題になったこともありました。

 もちろんトップに立つには大変な努力とセンスが求められますが、これまでの歴史を振り返れば、日本人選手は立派に世界と戦える。競技人口が少ないのは、それだけチャンスが大きいということです」(前出・スポーツライター)

 トライしてみる価値はあるかもしれない。

石井洋男(スポーツライター)

1974年生まれ、東京都出身。10年近いサラリーマン生活を経て、ライターに転身。野球、サッカー、ラグビー、相撲、陸上、水泳、ボクシング、自転車ロードレース、競馬・競輪・ボートレースなど、幅広くスポーツを愛する。趣味は登山、将棋、麻雀。

いしいひろお

最終更新:2022/02/19 06:00
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