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『ミスなか』改変による弊害がいよいよ深刻に…風呂光の“マスコット化”という矛盾

『ミスなか』改変による弊害がいよいよ深刻に…風呂光の“マスコット化”という矛盾の画像
ドラマ公式サイトより

 原作とドラマは別物。そう割り切っていても、耐えがたい改変ではないだろうか。2月28日に放送されたフジテレビ系月曜ドラマ『ミステリと言う勿(なか)れ』第8話を見て、暗澹たる思いを抱えた人は多かったようだ。

 「わたしの存在意義ってなんですか。いじられ役とかマスコットとか雑用係とか数合わせとか目の保養とか、他に何があるんですか」というのは、原作中で風呂光聖子が問いかけるセリフだ。風呂光は大隣警察署の巡査で、菅田将暉演じる主人公・久能整(くのう・ととのう)とたびたび関わる人物であり、ドラマでは伊藤沙莉が演じている。

 整に大きな影響を与えた人物・美吉喜和(水川あさみ)が登場し、ワケありな整の過去が垣間見えるかと思ったドラマ第8話。大学の恩師である天達春生(鈴木浩介)の誘いで、天達が友人と開くというミステリー会の手伝いをすることになった整だが、約束の日に待ち合わせ場所へ行くと、そこにはなぜか風呂光がいた。天達が、自分の講演会を聞きにきた風呂光を誘ったというのだ。原作では、整と同じ男子学生の相良レンに誘いがかかるが、ドラマでは風呂光がレンのポジションになったわけだ。

 かねてからドラマ版の風呂光には「整のことがなぜか気になってしまう」という原作にない恋愛要素が加えられており、ミステリー会への参加もその流れを汲むものだが、その弊害が第8話では顕著になった。

 まずは、男性のみが集うミステリー会と言う名の“お泊まり会”に女性ひとりだけを誘うという「天達の非常識さ」が生まれてしまった点だ。ネット上では「初対面の人と1泊するって同性でも抵抗ある人おるやろ」「普通に考えてこんな男しかいない場所に女性ひとりで参加するとかリアリティがなさすぎないか」など、ドン引きする声が。天達は整が師事する心理学専門の准教授であり、思慮深く、繊細な配慮のできる人物だったはずなのだが、台無しである。

 もうひとつは、風呂光があたりまえに「雑用係」をしている点だ。天達をはじめ他の男性客がくつろぐなか、整と一緒に給仕をするのは女性の風呂光。原作では整とレンはバイト代をもらって給仕を担当していたが、警察官は副業ができないため、風呂光がバイト代をもらうわけにもいかない。ドラマではその点を補足するように「タダで泊まらせてもらってるんで」と風呂光に言い訳をさせていたが、他の男性が動かず、風呂光だけが働く理由にはならない。SNS上に上がった「男性がくつろぎ女性が常に台所に立つという構図を平気でつくる形になってしまう」という非難の声はもっともだ。

 そもそも風呂光は、冒頭で紹介したセリフのように、男社会のなかで女性である自分の存在意義とは何かと悩んでいた。ドラマでも第1話でほぼ同じセリフが登場し、男ばかりの大隣署で働くことに悩む風呂光に、整は「おじさんたち」に混ざる必要はない、「違う生き物でいてください」とアドバイスをし、風呂光の心を解きほぐしたのだった。にもかかわらず、ドラマ版・風呂光に課せられるのは恋愛キャラとしての「マスコット」、パーティで給仕をする「雑用係」……。活躍の場を強引に増やしたことで、ドラマ版の風呂光は、原作の風呂光が望んでいない姿に変化していくという矛盾を生み、しかもその状況について整も口を挟まないという、さらなる矛盾が発生する悪循環が起こってしまっているでのはないだろうか。

 改変するならば、原作をリスペクトしたものであってほしい。月9『ミスなか』が掲げる「令和版、新感覚ミステリードラマ」の謳い文句が泣きそうだ。

■番組情報
月曜ドラマ『ミステリと言う勿れ』
フジテレビ系毎週月曜21時~
出演:菅田将暉、伊藤沙莉、尾上松也、門脇麦、白石麻衣、鈴木浩介、筒井道隆、遠藤憲一 ほか
音楽:Ken Arai
脚本:相沢友子
プロデュース:草ヶ谷大輔、熊谷理恵(大映テレビ)
演出:松山博昭、品田俊介、相沢秀幸
主題歌:King Gnu 「カメレオン」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作・著作:フジテレビ 第一制作部
公式サイト:fujitv.co.jp/mystery

東海林かな(ドラマライター)

福岡生まれ、福岡育ちのライター。純文学小説から少年マンガまで、とにかく二次元の物語が好き。趣味は、休日にドラマを一気見して原作と実写化を比べること。感情移入がひどく、ドラマ鑑賞中は登場人物以上に怒ったり泣いたりする。

しょうじかな

最終更新:2022/03/07 12:00
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